RYO SASAKI

トラウマに立ち向かう。「満たされないことの反動」を活かして生きる。

タナカ シンゴ

その性格が繊細ではないのは自他ともに認める私なのだが、時にどうでもいいような細かいことが引っ掛かることがある。

引っ掛かったことは一瞬にして忘れてしまうのだが、気になっているからなのかどうやら記憶に残っているようで・・・。

最近、自分が気になっていた些細なことをまたひとつ思い出した。

会話中に相手の言葉の後に「いや」と頭につけてその言葉を引き取る人。

これが意外に多い。

相手が言った内容を訂正しようとして「いや」から始まる。

似たような言葉で「~と(て)言うか」という始まりもよーく使われている。

これらを「否定癖」というらしい。

「いや」が口癖な人の心理とは?なぜしゃべる時に否定から入るのか

あまり「いや」ばっかりが使われると決して気分がいいものではないのだが、私が気になっているのは、このことではない。

相手が言ったことの意味合いが間違っていないにもかかわらず、「いや」を頭に付けて話を始める人だ。

例えば、

A「そんなことがあったんですねえ。

       それは、かなりビックリしたんじゃないですか!?」

B「いや、相当驚いたんだよ!」

あるいは、

A「じゃあ、スイーツ食べたんですか?」

B「いや、そうなんですよ、プリンが絶品だったんですよ。」

「ビックリした」と「相当驚いた」の意味はだいたい同じだ。

「スイーツ」ではないのか?

「スイーツ」なのか?一体どっちなんだよ?笑。

なぜ人は「いや」を頭に持ってくるのだろうか?

なぜ、「そうそう」という言葉から始められないのか?笑。

意味が合っていようが、なかろうがこの件は経験した私という主役を観てー!、という自己主張なのか?

この件に限らず、私の存在自体を奪われたくないという恐怖感を持つところまで行ってしまったというのか?

微妙なニュアンスは私しか正しく語れんだろう!という真実に迫りたい欲求からなのか?

いやから始める」という無意識による反射の理由はハッキリすることはないんだろう、と思いつつも、どういうわけか私に「自己肯定感」という言葉が浮かんできてしまった。

なぜ浮かんだのか?今は説明できないのだが、追っかけてみたいと思う。

今回はどこにたどりつくんだろうか?

自己肯定感とは

自己肯定感とは、その言葉の通り「ありのままの自分を肯定する感覚」のことである。

「自信がある」と言い換えることもできるだろうか。

「自信がある」とはこれも言葉どおり「自分を信じている」ということになる。

「自己肯定感」は最近よく聞く言葉になった。

いろいろな本やサイトでの解説が多く見られる。

自己肯定感とは?低い人の特徴と高めていく方法

自己肯定感が低いと、自分に自信がなくて新しいことへの取り組みに消極的になる、

とか、

自己肯定感の低い人が日本人に多いとか、

を聞いたことがある。

自己肯定感という言葉が思い浮かんだのは、最近聴いた講演の中にあったからだ。

講師:株式会社ワンピースの代表の久本和明氏

印象に残った言葉が、

「自己肯定感の高い人が集まるチームは仕事ができる」

というものだった。

この言葉に私は、どこかここまでにない新鮮さを感じた。

その新鮮さは「満たされないことの反動」とでも言ったらいいのか・・・。

久本氏がこう語った意味には、自己肯定感がある人は失敗を恐れない、だからそのような人が多いチームでは、斬新かつベターな結論を導くことができる、という面がまずある。

それ以外には、自分の意見を否定されることに恐怖がないから、意固地にならずに適切な合意形成がされる、という意味合いがあるようだ。

だから、意固地にならない人ばかりならば、押し付けではなくて議論によるベターな選択がされるから、いさかいにもならないし、結果自体が最高のものになる。

自己肯定感が低い人の場合はその反動としてそれを克服しようとする力が働き、周りから認められようと頑張るのだが、自己肯定感が高い人は、ひとつのことでことさら認められる必要がない。

人から認められなくても既に自分が自分を認めているのだから。

認められようとして頑張ることは素晴らしいことでもあるが、その頑張りが方向を違えて意固地に進んでしまう場合がある。

どうやら私は、冒頭の「いや、から始める」人の中に、この自己肯定感の低さを感じてしまったようだ。

自分が中心で話さないと気が済まない。

自分が正しくないと気が済まない。

この頑張り、余裕のなさ、そして、もっと認められたいという無意識の思いが、「いや」をチョイスさせている面もあるのではないかと。

そして、これを「満たされないことの反動」と呼んでみたのだ。

自己肯定感が低いのはなぜか?

自己肯定感が低くなる理由の多くが、幼少期のトラウマ(心的外傷)であるという。

親や学校から、何か苦痛を強要されたり、ダメ出しされたことがトラウマとなって、自信を喪失していくのだ。

トラウマを受けると、怖さ、悔しさ、そして、怒り、更には情けなさ、などが心に生まれて苦しむ。

以前に、ご自身の信じられないくらいの酷い虐待経験を話してくれた人たちがいた。

彼らは大人になっても未だに苦しんで、克服のためにもがいていた。

トラウマは、深くなるとその苦しみや怒りを暴力によって発散しようとしたりする場合もある。

幼少期に虐待を受けている子供が、大人になってから犯罪率が高いと聞いたこともある。

そこまでにはならないにしても、このような怖さや怒りを感じた経験は自分にもある。

誰にでも多かれ少なかれトラウマがあって、自己肯定感が下がる要素を持っていると言っていいのだろう。

私も、いい大人になってまでどなり散らす人にも会ったことがある。

今思うとこの人は、自分が幼少期に怒鳴り散らされたことで発生する悔しさからの反動によって、そして、萎縮して自己肯定感が低い自分の解消のために、虚勢を張っている可能性が高いと思える。

とにかく組織を、会社を、大きく見せよう、あるいは、大きくしようと頑張る人にも会ってきた。

大きくしようとするのは素晴らしいことだし、そうしないと会社では評価されないから仕方ない。

だから、これらすべてをトラウマ理由とするのは間違いだろうけど、私はそれにどこか行き過ぎのような違和感を感じたことがあった。

私の場合、等身大でいいじゃないか、とどこかモッサリした人間だった。

このモッサリもどうかとは思うのだが、汗

後から聞いたのだが、その人が以前に同期から会社や組織の小ささを揶揄されたことがあったらしい。

その悔しさが原動力になって頑張れていた面があったのだ。

そのおかげで、確かに組織はだんだんと大きくなった。

身長が小さい人が、会社、年収など身長以外の別のことをとにかく大きくしようと頑張っているのを感じたことを思い出した。

その人も、自分の目的をどんどん実現していっていた。

トラウマによる「満たされないことの反動」は良きにつけ悪しきにつけ影響を及ぼすんだ、という思いに至るのだった。

トラウマや自己肯定感の低さに立ち向かう

さて、自分のトラウマ、自己肯定感をどのように見つければいいものだろうか?

まずは、記憶をたどってみよう。

私の父は、子供の頃に「(私の)息子だから大したことはない、このくらいでしようがない。」と口癖のように言っていた。

今から思うとこれは、父親が自分を安心させるために父自身に言い聞かせていたように感じる。

その理由はともかくとして、その言葉がボディーブローのように効いて、私の自己肯定感の低さにつながった面がないとは言えないだろう。

でも父親は私に暴力を振るうことはなかった。

たった一回だけ、父親が私に手を上げたことがある。

それは、反抗期の私のとんでもない言動に対するもので、過剰であったとは全く思えないものだ。

私の場合は幸運にもこの程度で、かわいいものだったのだろう。

大人になってからのトラウマの方はどうだろうか?

うーん、たくさんあって難しそうなので一旦自分のことは途中にして、多かれ少なかれ存在するトラウマ、自己肯定感の低さに向き合う方法を考えてみることにしたい。

選択肢は以下の3つになるだろうか。

①トラウマのない教育を施す。

②トラウマの影響、自己肯定感の低さを克服する。

③トラウマの影響、自己肯定感の低さを活用する。

この3つはどれもが必要な要素だと思うのだが・・・。

①については、もう私にとっても遅きに失しているからまずここでは除外!。汗。

この動きは、これからの子供たちに対して、オルタナティブ教育などを中心として非常にゆっくりだが拡大しているように見える。

②については最近は専門家がいろいろな方法を提示しているので、ここでは触れないことにする。

ただし、克服には時間がかかるし、完全克服は非常に難しいものだ、となんとなくだが感じている自分がいる。

そんな感覚もあってか、今回注目したいのは、

③トラウマの影響、自己肯定感の低さを活用する。

観てきたようにトラウマは「満たされないことの反動」として悪く作用する面があることは確かなのだが、一方ではその反動がエネルギーとなって、自分の目的を実現することもある。

貧乏な家庭に生まれたことでハングリー精神が育ち、裕福の実現に近づくことができたりもする。

何らかの世の中の理不尽さに苦しんだことで正義感が強くなり、改善を目指して社会貢献を続けている人もいるのだろう。

ここからは、お笑い芸人の例になってしまうのだが、キレ芸、鋭いツッコミ、狂気性などに面白さを感じる芸人がいる。

プロのテクニックが当然あるんだろうけど、それだけではなくてそこにはその人からにじみ出るものがある。

そのリアリティーに私は面白さを感じる。

その芸人さんの幼少期や青年期の経歴を聞き知って、社会に対する、大人に対する恐怖や怒りが多分にその芸に影響しているであろうと想像できたりする。

また別の芸人のこんな例もある。

和牛の水田さんはネチネチキャラで有名だ。

パスタを頼む時も、店員さんに“あと何分でできますか?”と聞いて、“あと10分くらいですかね”と答えたら、ほんまにストップウォッチで時間を計りだすんです。

参照:和牛・水田信二「レストランでストップウォッチを使う」リアルネチネチ男だった

途中からこの素のネチネチとした性格をそのままネタにしてみたところ、無茶苦茶ウケだした、という。

M1で優勝した時に初めて知ったブラックマヨネーズ吉田さんの細かさや心配性具合も最高。

(3時間番組が急遽半分に短縮になった時)

ギャラの方はどうなるんですか?でも思いは3時間分、込めたんですけど。

参照:ブラマヨ吉田 「バイキング」短縮放送でギャラを心配「思いは3時間分、込めたんですけど」

この細かさは、彼ならでは、のものだ。

このようなキャラクターが、果たしてトラウマによるものなのかはわからないのだが、何らかの経験による恐怖や怒りと言ったものが影響しているのだろうと思う。

人と違う、湧き上がる思い、エネルギーこそが、その人の個性だ。

この「満たされないことの反動」は厄介なもので克服しないと本人が苦しいものではあるのだが、これらの例から、一方ではこれを活かさない手はない、とも感じる。

自分にある「満たされないことの反動」をうまくコントロールして世の中と調和させている人が活躍もしているし、どこか清々して幸せそうだ。

「満たされないことの反動」は良くも悪くも作用する紙一重のものだろうから、コントロールはかなり難しいものかもしれないのだが、これができれば、自分らしく強く生きていくことができるように感じる。

そのためにしてはいけないことは、

「自分にはトラウマはない、自己肯定感は高い。」

として、あるものをないとしてしまうこと。

これは折角の自分の個性というものを覆い隠してしまっているということなのではないか?とすら思う。

トラウマを探ることは個性を探ることである。

ここでもう一度自分のトラウマに戻ってみよう。

今度は自分から湧き起こるエネルギーの方に注目して私のトラウマを探ってみたい。

子供の頃から社会人に至る長い期間において、周りから時々にいろいろな説教をされたことに対して、今になってもどこか憤りを感じているみたいなところが私にはある。

そして、その時に説教されたその正論の揚げ足をとってやろうとやる気満々な自分がいる。笑。

ここが、自分のトラウマ探索の一つの切り口になるんだろう。

今更、正論の揚げ足とりなんか、いいおっさんなんだからいい加減にしないと・・・と自制する自分もいるのだが、抑えるだけではどうも違うように感じる。

傷はしっかりと認識して、その恐怖や怒り、「満たされないことの反動」のエネルギーで自分を動かしていこうと思うのだ。

そうすれば、万人受けはないが(そもそもはじめっからないけど。笑)、自分の味が出て無茶苦茶に好いてくれるマニアのような数名が出てきてくれるんではないだろうか?笑。

いくら歳をとっても好いてくれる人がいることは、嬉しいものだ。

まあ、好いてもらえるかどうかはともかくとしても、自己肯定感の低さを活用できた時に、知らぬ間に自己肯定感の低さはそのままながら、別の自己肯定感が立ち現れているんではないか?

その時にトラウマはある意味で解消しているんではないだろうか?

そう感じるのだった。

UnsplashPaulina Milde-Jachowskaが撮影した写真

【著者プロフィール】

RYO SASAKI

極端に、怖い、不快に感じる、イラっとする、一生懸命になる、などなどの原因を探ることが自分のトラウマにたどり着く一つの方法なんだと思います。

引き続き自分を観察して、トラウマをハッキリさせるところから始めていきたいと思っております。

工学部を卒業後、広告関連企業(2社)に29年在籍。 法人顧客を対象にした事業にて、新規事業の立ち上げから事業の撤退を多数経験する。

現在は自営業の他、NPO法人の運営サポートなどを行っている。

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