田中 新吾

私が仕事の現場から学んだ「クッション言葉」の二つの必要性についての話。

前職マーケティング会社に勤務していた頃「クッション言葉を上手く使えば、言いにくいことを言えて、聞きにくいことを聞けて、お願いしたいことをお願いできる」ということを学んだ。

今でもこの学びはかなり役立っている。

クッション言葉というのは例えば下記のようなものだ。

「申し訳ございませんが」

「お手数ですが」

「ご足労おかけしますが」

「恐縮ですが」

「差し支えなければ」

ビジネスの経験が少しでもあれば思い当たるところがあるはずだ。

「ビジネス枕詞」として言われる場合もある。

このような言葉遣いの「必要性」について、先輩や上司から、あるいはビジネス研修の中でしっかりと教わった人もいるかもしれない。

しかし、私に関して言えば、新入社員研修の中で「コミュニケーションのマナーだから」と簡単に教わり、その後、先輩や上司、顧客との人間関係の現場の中からその「必要性」を学んでいった。

私が学んだクッション言葉の必要性とは何だったのか?

大きく言うと二つあるのでそれぞれ紹介していきたい。

私が学んだクッション言葉の必要性①

仕事をしていると、言いにくいことを言わなければいけない時、聞きにくいことを聞かなければいけない時、お願いしにくいことをお願いしなければいけない時、こういうシーンが有象無象に現れる。

こういうことは実際に社会人になってみるまで分からなかった。

そして、こうした状況の時に、言わない、聞かない、お願いしない、という選択を取ることはもちろんできる。

しかし、この選択をとった場合には、仕事は進まず、成果も上がらず、成果が上がらないから当然評価もされない。

一方で、言いにくいことをストレートに言う、聞きにくいことをストレートに聞く、お願いしにくいことをストレートにお願いする、という選択もあり得る。

前者と比べればこの方がまだマシだと思う人もいるかもしれない。

だがこれはこれで問題が起こる。

相手側に不快感を与えてしまうなどで思うような関係性を築けない場合が多いのだ。

そして、クッション言葉の必要性はこの点にあった。

つまり、相手に不快感を与えないように、言いたいことを言うために、聞きたいことを聞くために、お願いしたいことをお願いするために、その結果としてビジネスを円滑に進めるために、クッション言葉は必要だったのだ。

これが実際の仕事の現場の中から私が学んだクッション言葉の必要性①である。

現場で学んだ様々なクッション

冒頭のようなクッション言葉の他にも私が利用価値を感じていたものがある。

例えば、

理解が間違っていたら申し訳ないのですが・・・

解釈が間違っていたら申し訳ないのですが・・・

これは私がまだ若手だった頃、上司の顧客訪問に同行していた中から学んだものだ。

上司は顧客との打ち合わせの中で、

私の理解が間違っていたら申し訳ないのですが、今までのお話をふまえるとご要望は◎◎◎◎◎◎ということでよろしいでしょうか?

という具合に、相手の話の中身の確認をよく行っていた。

最初上司からこの言葉を聞いた時、それに対してまどろっこしさを感じ「ご要望は◎◎◎◎◎◎ということでよろしいでしょうか?でもいいのでは?」と正直思った。

しかし、このようなクッションを付けながら、丁寧に顧客の要望を把握していた上司を見て「これはメリットがありそうだ」と思い、以降私も真似して使うようになった。

「デプスインタビュー」と呼ばれる相手と1対1で行う定性調査の現場もよく観察させてもらった。

そこでリサーチャーの方が使っていたクッション言葉に、

とても興味がありまして・・・

というものがあった。

そのリサーチャーは「今のお話、とても興味がありまして、もう少し詳しくお聴きしてもよろしいでしょうか」という具合にそのクッションを使っていたのだ。

あまり考えなければ、

今のお話、もう少しお聴きしてもよろしいでしょうか

でもいい気がする。

しかし、そのリサーチャーは「とても興味がありまして・・・」という枕を置いていたのだ。

後でリサーチャーの方に聞くと、

「デプスインタビューは限られた時間の中で、相手から鋭い仮説を生むための情報を引き出さなければいけない。だから、ポイントとなりそうなところを見つけたら突っ込んで聞かないといけない。こういう時に相手の言葉に対して「とても興味がある」とつけて聞くのは効果的だよ。悪い気分にはならないでしょ。」

若干うろ覚えだが、確かこのような話が返ってきた。

ここでも私の中に「なるほど」という納得感が生まれ、自身の商談やインタビューの中でこのクッションを使うようになった。

また、「とても興味がありまして・・・」と似たようなものの中に、

真剣に検討したいので・・・」というクッション言葉を学ぶ機会もあった。

これを学んだのは大手不動産会社の従業員意識変革プロジェクトだった。

概していうと、定期的なグループセッションの実施とアクションプランの構築実行の伴走支援を行うものだった。

このセッションの中で、参加者Dさんの発言に対してセッションの進行を担当していたコーチが下のようなことを発した。

「今、◎◎さんから出た意見なのですが、みんなで真剣に検討したいと思うので、もう少し詳しく話していただいてもよろしいでしょうか?」

こう言われたDさんは、最初は自信なさげに発言をしていたが急に自信を得たように話しはじめたシーンが印象に残っている。

自分自身も「真剣に検討したいので・・・」と言われたら自分が認められているような気がするし、悪い気分にはならない。

そう思いこのクッションも私の引き出しの中にストックされていった。

よく使われるクッション言葉だけに囚われることは全くない

ビジネスの現場で、よく使われるクッション言葉は下のツイートにわかりやすくまとまっている。

クッション言葉の基礎として抑えておくと間違いなく役に立つ場面は多いだろう。

しかし私に関して言えば、実際の仕事の現場からここにはないクッション言葉をいくつもストックしてきた。

前述の、

「理解が間違っていたら申し訳ないのですが・・・」

「とても興味がありまして・・・」

「真剣に検討したいので・・・」

の他にも、

「今から失礼なことを言ってしまうかもしれないのですが・・・・」

「皆さんのご予定を度外視して言うことになるのですが・・・・」

「バカみたいな質問で恐縮なのですが・・・」

「あんまり上手く表現できないのですが・・・」

「生意気な発言で恐縮なのですが・・・」

「だいぶ的外れな意見かもしれないのですが・・・」

「素人が素朴に思ったことなのですが・・・」

などなど。

このいずれもが、相手に不快感を与えないように、言いたいことを言うために、聞きたいことを聞くために、お願いしたいことをお願いするために、有効打として働いてきた実感がある。

であるから、よく使われるクッション言葉だけに囚われることは全くない、というのが持論だ。

思うに、コミュニケーションの中から「このクッションは使える!」と思ったものはストックしていき、自分の引き出しに仕舞っていく姿勢こそが大事。

私が学んだクッション言葉の必要性その②

よく言われる話として、仕事の生産性は「人間関係の摩擦が大きくなればなるほど落ちていく」というものがある。

これは実感としてよく分かる。

人と人とが接するのだから摩擦ゼロはあり得ないが、その摩擦を大きくしてしまうタイプの人を私も幾度となく経験してきた。

こうした経験もふまえて思うに、色々なタイプの摩擦がある中で、そのうちの一つに「言いたかったのに言えなかった、聞きたかったのに聞けなかった、お願いしたかったのにお願いできなかったことによる後悔の念」がある。

後悔の念は頭の中に悶々と残り、それに意識が取られ、目の前の取り組みに集中できなくなってしまうといった具合だ。

思い当たるところもあるのではないだろうか?

そして、この後悔の念が私の生産性を落とした。

私が学んだクッション言葉の必要性の二つ目はここだった。

すなわち、後悔の念が残ることによる仕事の生産性の低下を、クッション言葉を使いながら、言いたいことを言うこと、聞きたいことを聞くこと、お願いしたいことをお願いすることで防ぐことができる、ということである。

以上を最後にまとめると、

<クッション言葉の必要性①>

仕事は、言いたいことを言わなければならない、聞きたいことを聞かなければならない、お願いしたいことをお願いしなければならない場面が多い。

そのような時に、相手に大きな不快感を与えないように、言いたいことを言うために、聞きたいことを聞くために、お願いしたいことをお願いするために必要。

<クッション言葉の必要性②>

言いたいことを言わない、聞きたいことを聞かない、お願いしたいことをお願いしないと、頭の中に後悔の念が残ってしまう。

この後悔の念は仕事の生産性を低下させるため、後悔の念を生まないようにするためにクッション言葉が必要。

といった形になる。

実はこの記事を書こうと思った数週間前、相手からのストレートな物言いにちょっとした不快感を覚えることがあった。

ここで自分の意見として書き留めておこうと思ったのは些細だがそれがきっかけだ。

昔「伝え方が9割」という本が随分と売れていたが、この主張には個人的にも完全に同意できる。

言い方、伝え方は本当に大事。

UnsplashChristina @ wocintechchat.comが撮影した写真

【著者プロフィール】

田中 新吾

「クッション言葉」というネーミングを考えた人は本当に天才なんじゃないかと思っています。

中小企業、中小自治体、個人のプロジェクトサクセスを支援しています。人生のミッションは「プロジェクトという挑戦」を応援すること。座右の銘はLife is Projects。自称ネーミングマニア。

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