人間の知恵に疑問あり!はるかに複雑な自然の中では、謙虚になりその恩恵にあずかるのみ。
テレビで、家事の知恵をいろいろ紹介する番組が流れていた。
大根おろしの辛みをなくすには、レンジでチンする、のがいいらしい。
(令和の時代にまだそんなことをやっているのかあ・・・
大根の辛みをなくしたい、なんていうのは、私が子供のころから人々の持つ願望だったはず・・・。
そんな昔からの願望が、未だ解決されていなかったのか?)
私の勝手な思いがいろいろと巡る。
まあ結果的に、あまり新鮮な情報には感じられず、そのままスルーしようとした時、急に私の中に引っかかりが現れた。
(あれ?辛み成分は体に良かったんではなかったっけ?
体にいいものをなくしてどうする!?
確か、辛み成分はおろすことによって細胞が壊れて出てくるものだったはずだ。
手間をかけて出した折角の辛み成分をなくしてしまうとはなんて無駄なことだろうか・・・。)
今回もまた、私のこのたわいないひっかかりから始まる。
アリルイソチオシアネート
大根おろしの辛さは”アリルイソチオシアネート”’という成分のもので、ワサビやカラシと同じ。
この成分には、以下のような健康効果があるという。
・胃液の分泌を促し、腸の働きを助ける。
・抗酸化酵素などを活性化する作用が見つかっており、ガンや動脈硬化を予防する働きがある。
・大腸菌を死滅させるほどの殺菌作用がある。
江戸時代に”毒消し”として食されてきたという記録があるから、先人の知恵はすごいものだ。
このアリルイソチオシアネートは、やはり熱に弱い。
そんな先人の知恵を現代人は、その辛さが嫌だ、という不快を除くための新な知恵によって無効にしようしてしまっているように見える。
なんとも大袈裟な表現ではあるが・・・。
そう言えばグウタラな私は、日々の苦痛を取り除こうと躍起になっている者のひとりだ。苦笑。
苦痛を取り除こうとする知恵が、裏目に出ることがある。
そのことが、こんな私にどうやら痛く響いた模様だ。
いろいろ調べてみて、私の引っかかりが何だったのかはっきりした。
辛み・苦みが年々好きになる
グウタラの私がラッキーだったのは、何よりもたまたま辛みが好きだった、ということにある。
だから、大根の辛味を取り除こうとすることなしに、そのまま美味しくいただいてきたわけだ。
そして辛み同様に、苦味も好きだ。
どうやら、年と共に辛味も苦味も年々好きになっているように感じる。
子供の頃、辛味や苦味が苦手なのは、分別がまだない内では間違って毒を口にしないように敏感にできている、というのがその理由らしい。
大人になると分別がつくから、大丈夫だと学んで辛味や苦味を食べられるようになるのだとか。
でも、大人が辛みや苦味に鈍感になるのはこれだけではないように私は思う。
別の理由は、役を終える(子供を産めば生物的に一旦終わり)から、ということなのではないか?
つまり、大人は毒を摂取して命を落としたとしても、子供さえ産まれてしまっていれば、大きな問題にはならない、そんな判断が種に備わっているのではないかと。
そんなネガティブでさみしいことをなぜか思いついてしまう自分がいる。
ちなみに、コーヒーの苦味成分として、カフェインが有名だが、最近ではむしろクロロゲン酸の方が、苦味の主成分だと言われたりしている。
このクロロゲン酸はポリフェノールの一種で、抗酸化作用など様々な効果がある。
同様に、ビールのイソフムロン、ワインのフラボノイド、ゴーヤのククルビタシン、ピーマンのクエルシトリン、フキノトウのフキノール酸やフキ酸などなど。
これらもすべてポリフェノールの一種の苦味成分で、抗酸化作用やデトックス作用とその他の様々な健康効果がある。
(食べられるとされている)ほとんどの苦味成分に高齢化社会でもっとも注目の、抗酸化作用とデトックス作用がある、というのは、なんとも面白い。
なぜそんなことになっているんだろうか?
苦味を超えていく勇気があるものが生き残ってきたから、人はそのようにできているのか?
あるいは、そもそも人は苦味や苦痛の刺激で奮い立つようにできているものなのか?
ただただ、先人が自然の辛みや苦味に恩恵をもらって生きてきたからなのか?
妄想は尽きない。
そんなことを考えていると、年と共に辛みや苦味が好きになるまた別の理由が浮かんでくる。
それは、これまで雑に扱われてきた私の体が抗酸化とデトックスを求めているから、という今度はポジティブ?な理由だ。笑。
どこまでいっても、正解にはたどり着けないのだが、それでもああでもない、こうでもない、と考えてしまう。
人間ははるかに複雑な自然の中にいる
この辛味や苦味のことから、今あらためて、なんて自然は凄いんだろうか?と思う。
やっぱり人間は自然が必要で自然とともにあるのだ。
自分の感覚に従うと自然のものは苦味すらも美味しく感じるようになる。
一方で、人工のものはどんどん口に合わなくなる。
これらのことでまた余計に自然のすごさを実感する。
そんな自然に対して、例えば自然の辛味とか、目の前の苦痛を何でもすぐに避けるために知恵を使う人間というものが、どうも疑わしく感じる。
辛みはたまたま違ったが、当然ながら自分も大いに疑わしいひとり。
なぜだか花粉症が増えたことが思い出される。
たくさん植えられた人工林からの花粉が、アスファルトで敷き詰められて行き場がなく舞って、有害物質とともに宙に舞うようになった。
人間が苦痛を取り除けるはずだとして使った知恵が重なって人災が起こった。
人災は他にもたくさんある。
そんなことを思い返すと、食べ物の成分に限らず、自然のしくみなるものがあるとして、人間は未だにそのしくみの0.1%もわかっていない存在なのではないだろうか。
その割には結構知ってるつもりで生きているように思う。
少なくとも私は・・・。
もちろん、この0.1%という数字に何か特別な裏付けがあるわけではない。
人間がわかっているものはそのくらい極々わずかに過ぎない、その程度に捉えて慎重になった方がいい、という意味合いだ。
今回の自然の辛みや苦味にあるポリフェノール類を人が作ることは不可能である、ということに触れて特に感じる。
ちなみに、このポリフェノール以外にもまだまだ解明されてない成分が含まれているはずだ。
きっとそうに違いない。
だから自然のモノから得られている恩恵は実はもっとあるように思う。
たぶん、自然のしくみは複雑で、人の一生に比較した時にその解明のスピードがもっと長いスパンになっている、という構図なのだろう。
人間は待ってられないから、あらゆることを考慮に入れられないまま即断しようとする。
解った気になるが、早とちりが起こる。
だから数十年後間違ってました!となる。
どこまでいっても、このような構図は変わらないだろうと思う。
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さて、ここまでのことから、私は何も人間に知恵がないとしてバカにしているのではない、ということを加えておきたい。
そして、そんな人間(自分)が嫌いで、人間(自分)に絶望しているわけでもない。
そんな単純なところに意見を寄せたところで、そこに出口があるわけはない。
人間には素晴らしい知恵があって、その恩恵で私の生活は苦痛を減らして生きてこれていることもまた間違いない。
ただ、そんな知恵のある人間よりも、自然というものがはるかに上回って複雑にできている、とあらためて感じるのだ。
だから、自然に対して謙虚になった方がいい。
常に自然に照らし合わせること。
可能な限り五感を生かして自然を選択すること。
※人工物だらけの私の生活ではあるのだが・・・。
そうして、自然の恩恵をできるだけ受け取ること。
そして、自然な苦痛を享受すること。
グウタラで苦痛から逃げることばかりを考える自分にそう言い聞かせるのだ。
こんなキッカケがない限り、謙虚にならないのがまた私という者のようだから。汗。
よ~し、言い聞かせたところで早速、自然に照らし合わせてできることをしよう。
晩酌は、ワインとあてのピーマン。
苦味✕苦味で美味しくいただこう!
追記
最近聞いた話。
「無痛分娩(麻酔によって痛みを軽減しながらの出産)の割合は、今80%くらいとかなり高くなってます。(※ある病院の統計より)
病院では業務効率が求められるから、お産の時に痛みを和らげるように妊婦を誘導するといったスキルのある産婆さんが昔よりかなり減ってるようで・・・。
妊婦さんが無痛分娩を選ぶ背景にそんなこともあるんですよ。
でも、無痛分娩で産道を通ってきた赤ん坊は泣き出すのが遅いと聞きます。
あと、日頃ママ友と接していると、無痛分娩で子供を産んだママ友は、自分の利益を一番にする傾向があるような気がするんです。笑」
何でこんな話をしてくれたのか?経緯を覚えてないが、この話を聞いた時にまず私の頭をよぎったのは、
(痛みが軽減すると、子供の有難みが薄れるんではないか?)
というような対岸の火事でも見ているように当事者意識が欠けた感想だった。
(これはこの痛みを知らない男が言っていいものではないように思うし、日々自分の利益を優先にして生きている私がこれに対して何を言えるというのか?・・・汗)
そんな思いが追いかけてきて、
「悩ましい話ですねえ。」
と返すだけに終ってしまった。
このことを自然というものに照らし合わせてみる。
・・・
また自分の中にひっかかるものができてしまったようだ。
UnsplashのVlad Zaytsevが撮影した写真
【著者プロフィール】
RYO SASAKI
工学部を卒業後、広告関連企業(2社)に29年在籍。 法人顧客を対象にした事業にて、新規事業の立ち上げから事業の撤退を多数経験する。
現在は自営業の他、NPO法人の運営サポートなどを行っている。
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