人生の豊かさは「どれだけ伏線を回収できるか」で決まる、という話。
思うに、すべての出来事は伏線になり得る。
しかし、伏線は回収されてはじめて伏線になるわけで、回収されなければ伏線にはならない。
このシンプルな真理に気づいてから、自分の人生の見え方が大きく変わりました。
今回の記事では、この「伏線回収」について、私自身の経験を交えながら考えてみたいと思います。
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伏線回収とは、過去の経験や学びが、後になって新しい文脈で意味を持ち、価値を生み出すことです。
小説や映画で伏線が回収される瞬間は、読者や観客に「なるほど!」という快感を与えます。
人生も同じです。
過去に経験したこと、学んだこと、出会った人や言葉が、全く別の場面で突然関連性を持ち、新しい価値を生み出す瞬間があります。
その瞬間を味わえるかどうか。
それが人生の豊かさを決めるのだと思います。
しかし、伏線は自動的に回収されるわけではありません。
出来事が後々、回収されやすいようにしておくための策が必要です。
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では、出来事が後々、回収されやすいようにしておくための策はあるのか?
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私は「ある」と思います。
それは「記録をしておくこと」です。
しかもその時の状態(思考や感情)をなるべく克明に記録しておくことが大事。
記録をしておくと、回収率は間違いなく高まります。
さらに、記録同士をリンクで繋げておくとより回収率は高まります。
つまり、ネットワークにしておくということ。
図や絵にして残しておくのもとても有効です。
もちろん回収率が高まるだけなので、記録しておいたものが回収されないことも当然あります。
でも、記録をしていないものやリンクさせていないものは、極めて回収しにくい状態にあるため、伏線にはとてもなりにくい。
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実際に、私自身の経験で伏線回収を実感した事例をご紹介します。
まず「タスクシュートドライブ」というサービスの企画です。
このサービスは、車でのドライブを通じた1on1でタスクシュートのサポートを行うという、一見突拍子もない企画です。
しかし、実はこのアイデアには長い伏線がありました。
2019年、私はツイッターで「深いコミュニケーションや思考の深掘りをしたいときは、車の運転席・助手席を超オススメしている」と発信していました。
対面ではなく「並列(フラット)関係」であること、かつ「動いている」という身体感覚がコミュニケーションの質を上げる。
最強の1on1だと思います、と。
ツイッターでも今まで何度か言っているんだけど、深いコミュニケーションや思考の深掘りをしたいときは、車の「運転席・助手席」を超オススメしてる。対面ではなく「並列(フラット)関係」であること、かつ「動いている」という身体感覚がコミュニケーションの質を上げる。最強の1on1だと思います。
— タナカシンゴ(ハグルマニ / 命名創研 / 栢の木まつり) (@tanashin115) April 12, 2019
また、2017年には新幹線で2人席に座った時の隣の人との雑談量について言及し、「移動」という要素がコミュニケーションに与える影響について検証を進めていました。
新幹線で2人席に座った時の隣の人との雑談量は「カウンター席」に匹敵するほど多い。これには「移動」という要素が含まれていることも関係していそう。朝五時まで飲んでた関係で1.5h程度の睡眠なんだけど、新大阪から品川までノンストップトーク。引き続き検証を進める。
— タナカシンゴ(ハグルマニ / 命名創研 / 栢の木まつり) (@tanashin115) August 27, 2017
これらは当時、単なる気づきや仮説の段階でした。
しかし、タスクシュート認定トレーナーとして活動し、「講座やコミュニティとは異なるサービスが求められている」という課題に直面した時、これらの過去の気づきが突然意味を持ち、一本の線で繋がりました。
運転席と助手席という並列関係で、ドライブをしながら行う1on1は、Zoomやリアルの会議室、カフェよりも、時に遥かにクリエイティブになることができて非常に強力です。
そして、その特徴は「面と向かわない」「フラットである」「常に動いていて時々止まる」「個室性・密閉性がある」という4つの要素をあわせ持つ唯一無二の体験だからです。
まさに、過去の経験や気づきが、数年後に新しいサービスとして形になった。
これが伏線回収です。
参照:タスクシュート × 車 × 1 on 1 = タスクシュートドライブ【ユタカジン】
※しかしながら、このサービスはまだ実用には載せられていないため早急に整えなければなりません🙏
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もう一つ、最近納品した命名+MVVの仕事でも、同様の伏線回収を実感しました。
この仕事は、会社名の命名と同時に、Mission、Vision、Valueの策定も依頼いただいた案件でした。
命名の仕事は2016年から続けていて、これまで様々な命名の実務に関わってきました。
実務の中から見出した命名メソッドを有しており、現在進行形でそのメソッドに磨きをかけ続けています。
一方、MVV(Mission、Vision、Value)の策定についても、これまでに様々な経験を積んできました。
組織の在り方、価値観の言語化、ブランディングなどに関わる経験が、今回の仕事に活かされました。
特に、命名とMVVを同時に進めることで、名前が組織の価値観を体現し、価値観が名前を支えるという、相互補完的で強い関係を築くことができたと思います。
「これまでの経験はこの時のためにあったのではないか…」と強く感じられる仕事でした。
過去の経験が、今回の仕事で一本の線で繋がり、新しい価値を生み出した。
まさに伏線回収です。
参照:複数の名前が織りなす「名前座」で、あなたのプロジェクトに唯一無二のアイデンティティを。
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私の事例ではないですが、スタジオジブリの鈴木敏夫さんと石井朋彦さんのお話も、伏線回収について考える上で非常に示唆に富んでいると思います。
鈴木さんのお弟子さんの石井さんは、鈴木さんから『千と千尋の神隠し』の絵コンテを全部暗記するように指示されたと言います。(トークイベントでの話)
台詞だけでなく、カット割りや台詞と台詞の間のト書きもすべて。
石井さんはそれをちゃんとやってくれた。鈴木さんにとっては便利で、助かります。あの台詞なんだっけなって思ったとき、石井さんがそばにいて、歩く辞書のように教えてくれる。
宣伝やコピーを考えるときに、それはとても重要です。「あの台詞の前後に、大事な言葉が書いてなかった?」って聞くと、覚えているわけですよ。だから、僕にとってはすごく役に立ったんです。
自分の意見ばっかりの人間よりも、物事を正確に記憶して、整理整頓できる人間のほうが、いい仕事ができるんじゃないかなぁ。
そして、司会者が「いいクリエイターの条件はなんだと考えていますか?」と質問すると、石井さんは「昔のことをよく覚えているクリエイターはいいクリエイターだと思います」と答えました。
そして、昔のことをよく覚えておいて時間差で繰り出すこと。
これもまさに伏線回収です。
過去の記憶を正確に保持し、それを整理整頓しておくことで、新しいアイデアや発想が生まれる瞬間に、過去の記憶が突然意味を持ち、価値を生み出すのです。
参照:昔の時間の使い方を今に活かしているとき、時間的豊かさを感じる
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すべての出来事は伏線になり得る。
しかし、伏線というのは回収されてはじめて伏線になる。
出来事が後々、回収されやすいようにしておくための策は「記録」をしておくこと。
しかもその時の状態(思考や感情)をなるべく克明に記録しておくといい。
記録同士をリンクで繋げておくことや図や絵にして残しておくことも有効。
更に言えばそれらの記録を復習するようにするとよりいい。
このような記録作業を行う上で現在の私が大変重宝しているのが「Obsidian」になります。
人生の豊かさはどれだけ伏線を回収できたかで決まる。
このように言っても過言ではないのかもしれない、と最近強く感じています。
伏線回収とは言い換えると「過去の出来事の再利用」です。
これは私が実践している10X情報処理における「カード」の考え方と同じ。
タスクシュートドライブ、命名+MVVの仕事、そしてスタジオジブリのいいクリエイターのお話。
それぞれから見えてくるのは、過去の経験や記憶が、ある瞬間に突然意味を持ち、新しい価値を生み出す瞬間です。
その瞬間を人生のうちにどれだけ味わうことができるかどうか。
記録を残し、記憶をネットワーク化し、過去と現在を繋げることで、私たちはより豊かな人生を生きることができるのではないでしょうか。
今回の内容が、みなさんの人生の見え方を変えるきっかけに少しでもなれば幸いです。
UnsplashのRon Westerwellが撮影した写真
【著者プロフィール】
著者:田中 新吾
今回書いたようなことを淡々としておけば伏線回収しやすくなるのは間違いないですが、それでも未来に何がどのように伏線回収されるかなんて想像もできません。
ですので、いつかどこかで伏線として回収されるかもしれないという期待感を持ちつつ、とにかく丁寧に記録を残しておくことをしていきたい。
「答え合わせはまだ先」、「成果は遅れてやってくる」です。
◼︎ハグルマニ / 命名創研 代表 大企業様
中小企業様、ベンチャー企業様、NPO法人様のプロジェクト推進に必要とされる「歯車に」なったり、「#名前座」の構築等、命名によるブランディング支援をしています。
◼︎#栢の木まつり 実行委員会 委員長@入間市宮寺
◼︎タスクシュート認定トレーナー
◼︎Obsidian×10X情報処理

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