田中 新吾

「三角形」に意識的になってみると、その面白さが見えてくる。

タナカ シンゴ

少し前にXを眺めていたら、ドラゴン桜などで知られる名編集者佐渡島さんの投稿が私の目に入ってきた。

リンクされていたnoteに目を通すと「組織の生産性を高めるためには、三角形の関係性が大事」といった主張が書かれていた。

以下で少しだけ引用してみたい。

マネージャーであるAさんに、BさんとCさんという2名の部下がいて、 Aさんがそれぞれとコミュニケーションをとる一方で、BさんとCさんが話をする仲でなければ、「V字型の関係」だ。逆に、BさんとCさんがコミュニケーションをとっていれば「三角形の関係」となる。

仕事の現場においては、指示や報告などの用件を伝えるコミュニケーションが中心になりがちで、それを個別に行う「V字型の関係」になりがちだ。

(中略)

「V字型の関係」だけではなく、同僚との横や斜めのつながりを含めた「三角形の関係」がないと、前向きでウェルビーイングな組織にはならないということが判明したそうだ。

何を隠そう、私自身これまで「三角形の関係性は大事」と長らく思ってきたところがあったからこそ、この主張には遥かに大きく共感することができた。

そんな私に三角形の関係の重要性を教えてくれたのは幼少期から触れてきた「サッカー」だろう。

誰にも分かりやすいように一つ名場面をお届けしたい。

2019年UEFAチャンピオンズリーグのユベントス対アヤックスの試合の1シーンである。

いかがだろうか??

ハイプレスが主流の現代サッカーにおいて、GKからのビルドアップがここまで綺麗に炸裂することはそうはないのだが、次々と作られていく「三角形の関係性」がこの攻撃の肝になっているのはもうお分かりのことだろう。

このように問題解決をしたり状況を変えていくために三角形の関係性は非常に役立つのだ。

少なくとも私はそういう認識でいる。

本記事には、そんな「三角形の関係性」が大好きな私が「三角形」に対して持っている幾つかの視点をまとめておきたいと思う。

読んでいただけると読む以前と比べて、多少なりとも三角形に対して意識的になり、三角形の面白さを感じていただけるかもしれない。

三角形における神秘性・優美性

まず、三角形の魅力はその「神秘性」と「優美性」にあるという話。

平面に描かれた三角形を見ると特別な印象を私は受ける。

丸や四角形とは異なり何か不思議な匂いを漂わせている。

なぜ、三角形に特別な雰囲気を感じ取ってしまうのだろうか?

思うに、視覚で感じるその印象は、大抵の場合、その人の記憶のデータベースから引っ張りだされ、過去に類似した形の物からその形に対するイメージを決定する。

そういう意味では、実物は見たことはないけれど「ピラミッド」や「フリーメイソンのロゴ」「遊戯王の三角型のペンダント」なんかが私の中で三角形のイメージを決定付けしているかもしれない。

これらは宗教的な意味合いを強く持ちそのせいもあって「神秘性」を感じる。

そして、もう一つ受けるのが「優美性」だ。

これを大きく印象付けているのはたぶん「富士山」。

日本人と富士山は切っても切り離せないものの一つだろう。

富士山が日本に与えた影響は計り知れない。

伝説的な浮世絵師、葛飾北斎など数多くの芸術家や詩人の創作意欲をかきたててきている。

なぜ人は富士山に魅了されるのか?

シンプルな結論だが、それは恐らく「美しいから」だろう。

ではなぜ人は富士山を見て美しいと感じるのか?

日本一美しい山容を誇るといわれている富士山が、他の山と何が違うのかというならばそれは「形」にある。

きれいな円錐形、横から見るときれいな二等辺三角形。

三角形は絵画において安定した構図とされており、人はその形に美しさを感じる。

「神秘性」と「優美性」。

この二つは三角形が持つ魅力という認識で私はいる。

矢印の意味合いを持つ三角形

次は、三角形は「矢印の意味合いを持つ」ということについて。

矢印というのは「道標」であり、人の行き先を決定する概念だ。

それは人の生きる行程を表すものでもある。

三角形は面白いことに「頂点」を上ではなく右または左とすると、今まで持っていた「神秘性」や「優美性」を失い、矢印として機能する度合いが高まる。

なぜ上にすると神秘性や優美性が高まるのだろうか?

それは個人的に思うにその頂点が天を指し示すから。

昔から、天には神が住まうところ、その天は人が死ねば召される場所であると信じられてきたところがある。

天(宇宙)は人智を超えた場所、だから上向きの三角形からは神秘性や優美性を感じるということだ。

マズローの欲求五段階説やヒエラルキー構造などが「▲」で描かれるのも、こうしたことが影響していると考えると私は合点がいく。

「三角形+向き」がもたらす印象は概ね以下のようにまとめることができるだろう。

▲:上向きの三角形

上移動 送信 アップロード 想像 ピンポイント 神秘性 優美性

 

▼:下向きの三角形

下移動 受信 吸収 ダウンロード 実現 ピンポイント 危険性 

これは「ダウンロード」ボタンや地図の位置を示す「ピン」でとても馴染みがあると思う。

▶︎:右向きの三角形

右移動 送信 再生 進む 未来 結果 ゴール地点 ワープ

「Youtube」や「Spotify」「Amazon music」の再生ボタンとして日常的に触れているもの。

「Messenger」のコメント送信ボタンも右向き三角だ。

◀︎:左向きの三角形

左移動 戻る 逆再生 過去 原因 スタート地点 ワープ

こちらは右向き矢印とセットでよく使われている。

美術館や博物館にいくと必ず矢印付きのサインがある。

このように上下左右、向きによって与える印象は異なり、横向きになると機能性がグッと高まることが分かるのではないだろうか。

それもあって、日常的に良く目で捉えているのは「▶︎」か「◀︎」の方だと思う。

上下:左右の割合でいくと2:8くらいだろうか。

「▲」は神秘性や優美性を放つことから企業やブランドのロゴを表すこともある印象だ。

人は、上向きの三角形よりも下向きの三角形を見つけやすい

しれっと「▼」のところに「危険性」と入れてあるのですが気付かれただろうか? 

以前、インターネットで調べものをしていたらこんな記事に出会した。

本能は「逆三角形」に反応しやすい?見つけやすいパッケージの心理学

ここでは無意識的な感覚を想起する図形の一つとして「逆三角形」があると説明しており、記事によれば人は「上向きの三角形よりも、下向きの三角形を見つけやすい」という。

これはdownward-pointing triangle superiority(DPTS)効果と呼ばれているもので、逆三角形が、鋭く尖ったナイフや人の怒った顔など、危険なものと結びつくことが理由だと考えられています。

人の注意は、危険なものに敏感な性質を持っています。

嬉しいことは忘れてしまっても、悲しいことはずっと覚えているのも、そうした性質のためです。

言われてみれば、確かに人の怒った顔は「逆三角」で描かれることが出来る。

そういう「危険」な印象との結びつきによって描かれていることをここで知った。

一方で、尖った下向きの三角形は目につきやすいかもしれないが、ブランドへの印象形成の面では、必ずしも吉と出るとは限らないという実験結果も出ているらしい、

下向きよりも丸みのあるデザインの方が良いのだとか。

こういうことを知っているだけでも普段の生活の質は上がっていくだろうし、普段の仕事にも活きてくるのではないだろうか。

この世界にはまだまだ「三角形」にまつわる面白いことが潜んでいる

最後にビジネスシーンと三角形について。

私の観測範囲にはなるがビジネスフレームワークなど三角形を確認する場面は結構ある。

例えば、Takramの田川さんの「BTC」モデル。

Stuidio-L 山崎亮さんのコミュニティデザインにおけるプロセス。

発酵デザイナー 小倉ヒラクさんの「読モ」理論

効率を考えるならば、A地点からB地点まで直線で結ぶことが最も早いし合理的。

しかしながら、いずれも「急がば回れ」のように、必ず「C地点」を作ってそこを通ることや、C地点も組み合わせてグルっと一周させていることが分かる。

どれもなるほどと思わせるものが多い。

そして、これらを眺めていると「時代」を映し出しているようにも思えてくる。

右肩上がりの時代は「A→B」のように直線思考で、よく塾考する必要はなかったが、様々なテクノロジーやデータが勃興している現代においては、ビジネスもそうは問屋が卸さないということ。

いかに間に「C地点」を挟み込めるかどうかが、事業やアイデア、さらには地域の持続可能性や発展していくかどうかの鍵になるのではないだろうか。

デザイナーの方からすれば、当然と思うようなことばかりだったかもしれない。

思うに、今回ここに書き連ねたこと以上に、この世界にはまだまだ「三角形」にまつわる面白いことが潜んでいる。

例えば、三角形の大事な定理に「三角形の2辺の和は第三辺の和よりは長い」というものがあるが、犬もこの定理を知っているらしい。

だから、餌や獲物を取りにいく時に回り道をせずに走っていくとかもとても不思議なこと。

あのナポレオンもデカルトも「三角形」にずっと魅了されていたのだとか。

また何か三角形について書きたいことが出てきたらここに追記していきたい。

UnsplashVinicius “amnx” Amanoが撮影した写真

【著者プロフィールと一言】

著者:田中 新吾

プロジェクトデザイナー|プロジェクト推進支援のハグルマニ代表(https://hagurumani.jp)|タスクシュート(タスク管理術)の認定トレーナー|WebメディアRANGERの管理人(https://ranger.blog)|「お客様のプロジェクトを推進する歯車になる。」が人生のミッション|座右の銘は積極的歯車

三角形関係って(恋愛など)厄介なイメージを持っている人もいるのかもしれませんが、個人的には非常に役立つ関係性だと思ってます。

●X(旧Twitter)田中新吾

●note 田中新吾

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