生前のアントニ・ガウディが共に働く仲間たちに、毎日のように語りかけていた言葉に感銘を受けた。
少し前に、NHKオンデマンドで「NHKスペシャル サグラダ・ファミリア2023~ガウディ 100年の謎に迫る~」を視聴した。
最初に言ってしまうと、今年観たNHKオンデマンドのコンテンツの中で個人的にはぶっちぎりによかった。
このタイミングで観ることができて本当に良かったと今振り返っても思える。
ガウディとサグラダ・ファミリア。
大人でこの名を知らない人はほとんどいないと思う。
何を隠そう「サグラダ・ファミリア」は、天才建築家「アントニ・ガウディ」が設計し、スペインバルセロナで、140年以上も建設が続く未完の世界遺産である。
そんなガウディとサグラダ・ファミリアに焦点を当てた当番組では、以下のような話が取り上げられていた。
●2026年までに全ての塔を完成させる計画だったが2020年の新型コロナの感染爆発の影響を大きく受けた
●この影響で14ヶ月間にわたってサグラダ・ファミリアは閉鎖、入場料と寄付金で賄っていた建築資金は途絶え、工事がストップ
●そのような状況の中でも、意思決定を行い残された資金を使ってコロナ禍に45年ぶりとなる新たな塔「マリアの塔」を完成させた
●そして、2022年年12月に新たに二つの塔(ルカとマルコの塔、福音史家の塔)が完成
●サグラダ・ファミリアの建設に生涯をかけたガウディの願いは「格差や分断のない世界」
●サグラダファミリアの美を通して、今こそ必要な「他者と平和に暮らす」という永遠のメッセージを届けようとしている
●ガウディが路面電車に轢かれて命を落としまったのは、あまりにサグラダ・ファミリアに没頭しすぎて住み込んで働いていたので、貧しい身で誰もガウディと気づかず手当が遅れてしまったから
●ガウディの後を継いだ弟子たちが、ガウディの言葉や壊れた模型のわずかなわずかな破片などを手掛かりに、少しづつ建設を続け、ついに今世界一高い「イエスの塔」の着工を迎えている
●ガウディ没後100年の2026年を目指して建設が進んでいる「イエスの塔」が完成すれば、サグラダファミリアは世界一高い教会(高さ172M)になる
超ダイジェストで書くとこんな具合だ。
ガウディのサグラダ・ファミリアは、言い換えれば「未完の教会建築プロジェクト」である。
私は会社経営以外に、140年以上続き、今も現在進行形で動いているこのような大型プロジェクトは他に知らない。
この超長期なプロジェクトに、多くの期待を集め続け、多くのリソースが集まってきた裏にはどんな力が働いてきているのか?
私が立てた一つの仮説は、ガウディの「ビジョン(映像としての輪郭がはっきり見えるもの)」が後世のプロジェクトメンバーにも共有されているからではないかというもの。
関わるメンバー全員に、映像としての輪郭がはっきり共有されているからこそ、各々がビジョンに向かうための行動を自分で考えはじめることができている。
大人気漫画「チ。―地球の運動について―」を読み終えた時にも「はっきり見えるビジョンの重要性」を強く感じたわけだが、この番組を観てあらためて「チ。」のことを思い返したりもした。
参照:「先人たちの素晴らしい知恵や技術や考え方を社会や後世につなげていく流れの中にいる」という確信を得た話。
そして、私にとっての最大の驚きと発見は番組の最後に待ち構えていた。
サグラダ・ファミリアは、超長期で超大型のプロジェクトなのだから、それはもう綿密な計画が立てられ、納期や目標を逐一確認をするように仲間たちにきっと語りかけていたのだろうと思っていた。
ところが、この想定はいい意味で大きく外れることになる。
番組によれば、ガウディは1日の終わりに共に働く仲間たちに、毎日のように以下の言葉を語りかけていたという。
神は完成を急がない。
諸君明日はもっといい仕事をしよう。
これを聞いた瞬間、私の心は大きく震えた。
というのは、今の私がプロジェクト推進において「重視している考え方」に大きく通じるものを感じたからである。
例えば、
・焦って進めてもいいプロジェクトにはならない。焦りは禁物。だからこそ、一つ一つにフォーカスして着実に積み上げていく
・プロジェクト推進においては、定期的に、欠かさず、少しずつ進める以上に効率の良い方法はない
・1日にフォーカスして、計画からの逆算ではなく、1つ1つ積み上げる順算でプロジェクトを進めた方が結果的に上手くいきやすい
といったものだ。
最近の私はハグルマニという「プロジェクト推進支援」を専門とする事業に注力をしているのだが、ガウディとサグラダファミリアを題材にしたこの番組を今このタイミングで観ることができたのは何か不思議なご縁を感じてならない。
ガウディの言葉を胸にしっかり刻み、明日はもっといい仕事ができるように今後も努めていきたい。
今はそんな思いが頭の中を占めている。
UnsplashのAshim D’Silvaが撮影した写真
【著者プロフィールと一言】
著者:田中 新吾
プロジェクトデザイナー|プロジェクト推進支援のハグルマニ代表(https://hagurumani.jp)|タスクシュート(タスク管理術)の認定トレーナー|WebメディアRANGERの管理人(https://ranger.blog)|「お客様のプロジェクトを推進する歯車になる。」が人生のミッション|座右の銘は積極的歯車
生きている間に一度でいいからリアルなサグラダファミリアが見たいです。
●X(旧Twitter)田中新吾
●note 田中新吾
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