田中 新吾

ネーミングやコピーのような言葉を出力する際に、遊び心、ユーモア、ダジャレにはこだわりたい。でも、一番にこだわりたいのはそこではない。

タナカ シンゴ

先日、遥かに大きく心が動く体験をしました。

Xにもポストしたので貼り付けておきます。

こちらの会社、皆さんはご存知だったでしょうか?

私ははじめて知った会社だったのですが、この出会いは誇張なしに今年一番の感動体験になりそうです。

参照:もっともレバレッジが効く投資は「自分が感動すること」への投資。

一体何にそんなに感動したのか?

今回はそんな話を備忘路的に書きつつ、強化された信念について書いておこうと思いました。

結論から言うと、Xのポストにも書いた通り「しっかり名は体を表す」をしていたからです。

暗素研

この名称は「暗黒素材研究所」の略称。

「暗黒素材」とは馴染みのない言葉だと思うのですが、実際「暗素研」さんは暗黒素材をめちゃくちゃ研究して、追求していています。

具体的には、

無反射黒色素材の開発、販売、施工を通じて、「光の反射による問題の解決」と「美しい黒色表現の提供」を行なっている。

これを表す名前としての「暗素研」です。

どうですか?

名は体を表すしていると思いませんか?

さらに、この「暗素研」という名前を周辺で支えるコピーも素晴らしい。

世界一のブラック企業

世界をもっと、面黒く

世界一のブラック企業なんて名刺やHPに書いているものだから、時々印刷会社さんに断られることもあるそうです。

現世でよく使われるブラック企業とは異なる意味でのブラック企業なので、結局相手が勘違いだったと気づくようですが…笑

「言葉」に対してその中身のことを「言幹(ことみき)」と整理したりすることもありますが、「言葉」と「言幹」の関係性に間違いもないし、違和感もない。

それでいて「ブラック企業」や「面黒く」など「遊び心」「ユーモア」「ダジャレ」が上乗せされているといった具合です。

私が感動したのは以上のような「コンセプト」と「コンセプトを凝縮した言葉(ネーミングやコピー)」のデザイン力の高さでした。

これまでにも何度か発信をしてきているのですが、私はネーミングやコピーといった言葉を作る際に「遊び心」「ユーモア」「ダジャレ」で出力することをとても大事にしています。

参照:出力する先としての「ユーモア」を大事にしたい、という話。

この理由はシンプルに言うと、

人は教えてくれる人よりも楽しませてくれる人を好む。

ゆえに、遊び心やユーモアやダジャレは人を魅了し、人を惹きつける。

ゆえに、問題を解決の方向に進ませる力がある。

といった経験則があるからです。

ただし、遊び心もユーモアもダジャレも、ふざけすぎない、ほど良い感じがとても大事。

無理して変わった名前にするぐらいなら、ありきたりな普通の名前のほうが何倍も良いと思います。

このあたりの抜け感のバランスは結構難しい部分なのですが、 ここぞセンスの発揮場所だと思っていますし、以上のような理由から、遊び心、ユーモア、ダジャレにはこだわりたいという考えです。

加えて、ここでしっかりと主張しておきたいことは、それ以前に強くこだわるべきは「コンセプト」や「言幹」の方であるということ。

というのも、この部分が抜け落ちてしまうとインパクトのある言葉大会にどうしてもなってしまうからです。

例えば、2019年頃にブームになった「高級食パン」のネーミングは、いずれも非常に強いインパクトがありました。

「考えた人すごいわ」

「すでに富士山超えてます」

「どんだけ自己中」

「乃木坂な妻たち」

and more…

しかし、今となってはこのブームもずいぶん落ち着き、むしろ「閉店が相次いでいる」という状況です。

私が時々訪れる荻窪の「どんだけ自己中」も昨年12月で閉店していました。

参照:【杉並区】残念…荻窪にある高級食パン専門店「どんだけ自己中荻窪店」が12/31をもって閉店しました

閉店が進んでいる理由として「小麦粉価格の高騰」、「高級食パンを購入しても1日で食べ切れないと味が落ちてしまう、それなら普通の食パンで良い」などが挙げられていますが、個人的にはそれも当然ありつつ、インパクトのあるネーミング・言葉を支える「コンセプト」や「言幹」が明確になかったからなのではないか、と思っています。

言い方を変えれば「名は体を表す」になっていなかった。

こういうものは遅かれ早かれ廃れていく運命にあるのかなと。

私が「遊び心やユーモアやダジャレで出力する」ことにこだわりたいという以前に、「コンセプト」や「言幹」の方にしっかりとこだわりたいと考えているのはこのような考え方があるためです。

「コンセプト」や「言幹」を納得いくまで考えきれていないままに、「遊び心」や「ユーモア」や「ダジャレ」で出力をすることはしたくない。

ここの順番は絶対に間違えたくありません。

最後に私がネーミングやコピーなどの言語化を行う際のおおまかなフローを記載すると以下のようになります。

1.まず思い入れのある商品やサービスがある

2.それをギュッギュッと凝縮した「私たちが誰のためにどういう想いでやっているか」のようなものがコンセプトになる

3.2を更に固めて昇華したものがネーミングやコピーになる

4.この段階にきて初めて、人の足を止める驚きやいい違和感、いいリズム、遊び心、ダジャレ、ユーモアが必要だよね、となる

思うに、今回偶然出会った「暗素研」さんは、こういう順番を丁寧にじっくり踏んでいるはず。

インパクトのあるネーミングやコピーだけが先行して、そこにコンセプトや言幹との整合性を捉えることができなかったら、このような発信は絶対にしていません。

「暗素研」さんの素晴らしい言葉のデザイン力に遥かに大きく感動したと同時に、ここまで書いたような信念を強化してくれる大変ありがたい機会になりました。

同県なのでまたどこかでお会いできる気がしています。

Xの投稿も面黒いので、よかったらフォローしてみてください…!

UnsplashSasha Freemindが撮影した写真

【著者プロフィール】

著者:田中 新吾

割と近くにあって今はお客さんが絶えないと言われている「キング&クイーン」というサウナ施設も、インパクトのある言葉大会になってしまっているのでは、とちょっと懸念しています。

ハグルマニ代表。お客様のビジネスやプロジェクトを推進する良き「歯車」になる。がミッション。命名士(命名総研)、タスクシュート認定トレーナー、栢の木まつり実行委員会事務局長(https://kayanokimatsuri.com) 、RANGER管理人(https://ranger.blog)としても活動中。

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