タナカシンゴ

あなたのプロジェクトに足りないのは「i」と「e」、2つのコンプリメントかもしれません。

タナカ シンゴ

私には幾つかの肩書きがあるのですが、「ハグルマニ」という事業における自分の肩書きを最近になってリニューアルしました。

これまでは「プロジェクトデザイナー」と名乗っていたのですが、これからは「プロジェクトコンプリメンター」と名乗ることにしたのです。

※略して、プロコン

「デザイナー」から「コンプリメンター」へ。

一見すると、ただの横文字の言い換えのように思えるかもしれません。

しかし、この変更(新たな命名)は私にとって、単なる言葉の変更以上の、もっと本質的な「スタンスの表明」であり、これからの時代の働き方に対する一つの「」でもあります。

実は、「ハグルマニ」という屋号については当初から非常にしっくりきていたのですが、対照的に「プロジェクトデザイナー」という肩書きについては、名乗りながらもどこか拭いきれない違和感を持っていたのです。

なぜ、私は「デザイナー」という言葉を手放したのか。

そして、耳慣れない「コンプリメンター」という言葉に何を込めたのか。

今回の記事では、この「iとe」にまつわる気づきについて、少しお話ししたいと思います。

「デザイナー」という言葉への違和感

まず、これまでの私の肩書きであった「プロジェクトデザイナー」について振り返ります。

私はこれまでプロジェクトデザイナーという肩書きに以下のような意味を持たせて用いてきました。

プロジェクトデザイナーとは、プロジェクトを設計し、プロジェクトを進行しながら、場合によってはプロジェクトを途中で再設計したりもしながら、プロジェクトを完成させる人のこと、プロジェクトの成功をもたらすことに責任を持つ人のこと。

この定義自体は、今でも間違っていないと思っています。

しかし、実際に数多くのプロジェクトに関わり、泥臭い現場で試行錯誤を繰り返す中で、「デザイナー」という言葉が持つ響きと、私の実態との間にズレを感じるようになっていきました。

私の実際の関わり方は、実に多様です。

プロジェクトデザイナーとして全体像を描くこともあれば、プロジェクトマネージャー(PM)として進行管理に徹することもあります。

時には、いち作業メンバーとして手を動かし、タスクを処理する「歯車」になることもあります。

「デザイナー」と名乗ると、どうしても「設計図を描く人」「上流工程の人」というイメージが先行しがちです。

このような役割でプロジェクトに関われることはもちろん本望なのですが、実際のプロジェクト現場はもっと流動的です。

予期せぬトラブルが起きたり、メンバーの状況が変わったり、当初の設計図通りに進むことなんて、まずありません。

そんな中で私が実践してきたのは、「その時々の状況に合わせて、自分を変化させること」でした。

このスタンスは、以前書いた「人に肩書きを決めてもらうのが楽しい。」という記事の考え方とも通底しています。

自分が「何者であるか」を固めるのではなく、相手やプロジェクトが求める形に合わせて、自分の役割(肩書き)を柔軟に変えていく。

「ハグルマニ」という屋号がしっくりきていたのは、まさに「歯車」として、どんなプロジェクトにも噛み合い、動力を伝える存在でありたい、という想いが込められていたからです。

それに対し、「プロジェクトデザイナー」という肩書きは、少し自分を固定しすぎていたのだと思います。

ハグルマニとしての活動の実態は、もっとポリバレント(多価)で、もっとカメレオン的なはずなのに、と。

「歯車」を再定義する「Complement」との出会い

そんな悶々とした思いを抱えていたある日、私は改めて「ハグルマニ(歯車)」について考えていました。

ハグルマニという名前には、「プロジェクトという大きな機構の中で、一つの歯車になりたい」という想いを込めています。

主役でなくていい。

でも、私がいることで全体がスムーズに動く。

そんな「歯車」でありたい。

この「歯車として機能する」というニュアンスを、表すことが可能な表現は他にないだろうか?と思い、あらためて辞書を引いたり、AIと壁打ちをしたりしていました。

そこで出会ったのが、「Complement」という単語です。

意味は、「完全にする、補完する、補足する、引き立たせる」。

率直に「これだ」と思いました。

プロジェクトに不足している歯車になり、プロジェクトを補って完成させる(完全にする)。

PMが足りなければPMになり、作業者が足りなければ作業者になる。

不足しているピースとしてカチリとハマることで、プロジェクトを完全なものにする。

これこそが、私が日々現場でやっていることであり、「ハグルマニ」の活動そのものです。

ところが、発見はそれだけではありませんでした。

さらに調べていくと、同じ発音(コンプリメント)で、もう一つの単語が載っていました。

それが、「Compliment」です。

スペルの違いは、たった一文字。

真ん中が「e」か「i」か。

「i」の方の Compliment の意味は、「褒める、誉める、讃える」。

この瞬間、私の中でバラバラだったパズルのピースが、すべて繋がりました。

「e」のコンプリメント(補完して、完成させる)と、「i」のコンプリメント(称賛する)。

プロジェクトを成功させるために必要なのは、この2つのコンプリメントなんじゃないか?

プロジェクトにおける「不足」を埋める機能的な働き(e)と、プロジェクトに関わる「人」の心を前向きにする情緒的な働き(i)。

この両方を兼ね備えた存在こそが、私が目指すべき姿であり、「ハグルマニ」の実態であると。

そう確信し、私は「プロジェクトコンプリメンター」という肩書きに行き着きました。

これなら、ハグルマニという屋号とも完全にシンクロします。

定義としてはこうなります。

プロジェクトコンプリメンター = プロジェクトを補完し、完全にし (Complement)、人を輝かせる (Compliment)人

「e」と「i」、2つのコンプリメントの役割

では、具体的に「プロジェクトコンプリメンター」とは何をする人なのか。

大きく分けて2つの役割があります。

一つ目は、「e(Complement)」の役割。

これは、「カメレオンのように変化しながら、プロジェクトの不足を補完し、完成させること」です。

プロジェクトにおいて、「誰がやるか決まっていないボール」が落ちることは日常茶飯事です。

・急ぎで方針を相談したいけど、気軽に壁打ちできる相手がいない

・複雑に絡んだタスクや役割分担を「一度整理しよう」とまとめてくれる人がいない

・仕様が曖昧なまま放置されている論点を明確にする人がいない

・「この会議、誰かが進行しないとグダグダになる」と感じているけど手を挙げる人がいない

そんな時、プロジェクトコンプリメンターは、「それは私の仕事ではありません」とは言いません。

「あ、今ここが足りてないな」と察知したら、カメレオンのように色を変え、その役割になりきって埋めに行きます。

自分という「形」や「肩書き」にこだわらず、プロジェクトという「全体」が完成するために必要なピースに変化する。

これが「e」の働きであり、「人に肩書きを決めてもらう」というスタンスの実践です。

実際のところでは、プロジェクトの上流設計を行う形で加わっているプロジェクトもありますし、逆に上流から流れてくるタスクをどんどん実行していくメンバーとして関わっているプロジェクトもあります。

そして二つ目は、「i(Compliment)」の役割。

これは、「人の可能性を照らすこと」です。

ハグルマニのビジョンは「プロジェクトの力で、日本中あらゆる場の喜びを増やす」と掲げているのですが、このためには関わる人の心が健全でなければなりません。

どんなに素晴らしいシステムやツールがあっても、結局のところプロジェクトを動かしているのは「」です。

人の心が折れれば、プロジェクトは止まります。

逆に、人の心が燃えれば、困難な状況も突破できます。

だからこそ、関わる人たちをよく観察し、

「その視点、すごくいいですね」

「◯◯さんのあの時の対応のおかげで助かりました」

「ここは◯◯さんの強みが活きる場面だと思います」

と、言葉にしてちゃんと伝える。

単なるお世辞ではなく、相手の貢献や能力を正当に評価し、称賛する。

そうすることで、チーム全体の士気を高め、一人ひとりのパフォーマンスを最大化させる。

これが「i」の働きです。

機能としての「補完(e)」だけだと、ただの「便利な何でも屋」で終わってしまうかもしれません。

しかし、そこに「称賛(i)」という人間的な温かみが加わることで、プロジェクトチームにとって代えがたい、唯一無二のパートナーになれると考えています。

これまでに意識的に実践してきた「コミュニケーションデザイン」の役割が見事に内蔵された手応えを今、得ています。

「隙間を埋める」が最強のスペシャリティになる

そして、この「プロジェクトコンプリメンター」という考え方は、これからの時代のキャリアにおいても、一つのヒントになるのではないかと考えています。

最近、「自分にはこれといったスペシャリティがない」と悩む方とお話しする機会がありました。

「エンジニアのようにコードが書けるわけでもない」

「デザイナーのように絵が描けるわけでもない」

自分は器用貧乏で、何者にもなれないのではないか、と。

でも、私は思うのです。

「補完して、完全にする力」こそが、最強のスペシャリティになり得るのではないか、と。

突出した専門スキルを持ったスペシャリストたちは、得てしてその専門領域に集中したいものです。

そんな彼ら彼女らの間にある「隙間」を埋め、彼ら彼女らが気持ちよく働けるように潤滑油となり、プロジェクト全体を前に進めることができる人。

そんな人材は、どの現場でも喉から手が出るほど求められているのではないでしょうか。

「何でもできる」は、裏を返せば「何にでもなれる」ということ。

状況に合わせて自分の役割をデザインし、不足を埋め、人を輝かせることができるなら、それはもう立派な「プロジェクトコンプリメンター」という専門職なのだと思っています。

不足しているからこそ、人は支え合える

ハグルマニという屋号にしっくりきていながら、肩書きに悩んでいた私ですが、ようやく「コンプリメンター」という言葉に出会え、すべてが腑に落ちました。

人生やプロジェクトにおいて、すべてが完璧に揃っている状態なんてありえません。

常に何か欠けていて、常に何かが足りない。

だからこそ、「i」と「e」が必要なのです。

あなたのプロジェクトには今、何が足りていないでしょうか?

もし、機能的なリソースが足りないのなら「e」のコンプリメントを。

もし、チームの元気が足りないのなら「i」のコンプリメントを。

私はこれからも、ご縁があったプロジェクトの「歯車」として、不足を補完し、チームを称え続けたいと思います。

「プロジェクトを補完し、完全にし (Complement)、人を輝かせる (Compliment)」

この新しい肩書きと共に、また新しい景色をみなさんと一緒に見ていけたら嬉しいです。

今回の内容が、みなさんの働き方や、プロジェクトとの向き合い方に、少しでも新しい風を吹き込むきっかけになれば幸いです。

UnsplashAnderson Schmigが撮影した写真

【著者プロフィール】

著者:タナカ シンゴ

ハグルマニにおける肩書きは「これしかない」と思うに至っています。

◼︎ ハグルマニ(プロジェクトコンプリメンター)
◼︎ 命名創研(命名家)
◼︎ 栢の木まつり 実行委員会(委員長)
◼︎ タスクシュート 認定トレーナー
◼︎ 8020BooX(準備中)

●X(旧Twitter)タナカシンゴ
●note タナカシンゴ

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