田中 新吾

なぜ私は「シン・エヴァンゲリオン」というネーミングに惹かれたのかを考えてみた。

タナカ シンゴ

10月頭に下のようなニュースリリースを目にした。

「シン・エヴァンゲリオン劇場版」Blu-ray / DVD、公開から2年後の来年3月8日に発売

2021年3月8日に公開された「シン・エヴァンゲリオン劇場版」のBlu-ray / DVDの発売が、公開から2年後の2023年3月8日に決まった、というお知らせである。

一般的に、Blu-ray / DVDの発売というのは公開から概ね約半年くらいが一つの目安ではないだろうか。

ちなみに、大ヒットした「劇場版「鬼滅の刃」無限列車編」は2020年10月16日公開に対して、Blu-ray / DVDの販売開始となったのは2021年6月16日だった。

これと比較してもやはり「2年」というのは長すぎる。

私の知る限りではこの他にはない。

これはHUNTER×HUNTERなどと同じく「待たされてもなお支持されている作品」として知られるエヴァンゲリオンがまた私たちに待つことを求めてきたということである。

作品を楽しむ時間よりも、作品を待つ時間の方が圧倒的に長い。

そんなエヴァンゲリオンシリーズは「待つ時間も作品の一部になっている」と自分に思わせて納得させざるを得ない作品だ。

私も一人のエヴァファンで「シン・エヴァンゲリオン劇場版」は当然ながら観た。

ということで、当時のことを思い返しつつ、本稿では、なぜ私は「シン・エヴァンゲリオン」というネーミングに惹かれたのかを考えてみた、ということで書いていきたい。

なぜ「ネーミング」なのか?

その理由は、自称「ネーミングマニア」である私にとって「シン・エヴァンゲリオン劇場版」が「ネーミング」の切り口でも楽しめるものだったからである。

「ありがとう」と言うに足りる作品だった

私が庵野監督のシン・エヴァンゲリオン劇場版を観たのは公開から2週間が過ぎたあたりのことだった。

「エヴァがマジで完結した!」と多くの人がネット上で興奮を顕にし、賑わいをみせていた中「観るまでは誰の感想もレビューも目に入れるものか」という気持ちでエヴァ断ちしていたのが懐かしい。

この期間、SNSを観る時間を意識的に減らし、仮にこの目に留まってしまったものがあった時には全力で「あとで読む」ためにはてなにブックマークをしていた。

鑑賞後の感想としては、とにかく「ありがとう」と言うに足りる作品だった、というのは偉そうに聞こえるかもしれないが偽りのない本心だ。

思うに、ごちゃごちゃになってしまった仕事を最後までやり切るのは本当に本当に大変。

だからこそ、しっかりと畳み切った庵野監督には「大変お疲れ様でした」「今までありがとうございます」と心から申し上げたかったのだ。

そして、最後までやり切る大切さを改めて教えてくれた監督およびスタッフの方々へ大きな畏敬の念が生まれていた。

前置きはこの辺りにして本題の方にそろそろ移りたい。

なぜ私は「シン・エヴァンゲリオン」というネーミングに惹かれたのかを考えてみた、という話である。

ここで結論を先にまとめてしまう。

私が「シン・エヴァンゲリオン」というネーミングに惹かれた理由を考えていくと、

①「濁音」が、男性を気持ち良くさせ、興奮させる「発音構造」になっていて、男性にとって濁音は「快楽」そのものだったから

②形容詞的に付く「シン」というのは、その音そのものが滞っていた世情に吹き込む一陣の風だったから

このあたりが個人的には納得のいく理由となった。

以降はここに至った話として書いていきたい。

「濁音」というのは、とにもかくにも「オトナ子ども」が好き好む音

私は「シン・エヴァンゲリオン」というネーミングについて、一度見聞きしたら死ぬまで頭から離れない「ダースベイダー」と並ぶ非常に優れたネーミングだと思っているところがある。

「良いネーミングとは一体何か?」

この問いに対しての私の回答は常に「覚えやすく/思い出しやすい」だ。

つまり「覚えやすく/思い出しやすい」が良いネーミングのマイ定義ということである。

なぜかと言えば「覚えやすく/思い出しやすい」ということは、人であれば人生の、商品やサービスであれば事業の、「チャンスの拡張」につながるからだ。

ずいぶん前に「隅田川さん」という女性に一度だけ会ったことがある。

隅田川という苗字を持つ人は全国でおよそ「40人」しかいないそうだ。

それもあって今でもその名前、容姿を忘れていない。

そして、隅田川さんのことを覚えていて思い出せるから、彼女が働いている飲食店にまた行こうかな?などという考えが生じる。

これは隅田川さん側からしてみればチャンスに他ならない。

逆に、覚えにくく忘れ去られてしまったネーミングにはこういう「チャンス」は全く訪れない。

ネーミングの「覚えやすく/思い出しやすい」はこれほどの違いを生むのだ。

そして漏れなく「シン・エヴァンゲリオン」は私にとって「覚えやすく/思い出しやすい」ネーミングとなっている。

一体なぜか?

色々と調べている中で、この理由として納得できるものを「怪獣の名はなぜガギグゲゴなのか」という本の中で発見した。

この本によれば、

「濁音」というのは、とにもかくにも「オトナ子ども」が好き好む音なのだという。

詳しくは、

・「濁音四音」と呼ばれる「B、G、D、Z」というのは「膨張+放出+振動」の「発音構造」になっている

・この発音構造が、男性の生殖行為における意識の質を刺激しつつ、力強さ、膨張感、飛び散る賑やかさがエンターテイメントの興奮を引き起こす

ということ。

端的に言えば、「濁音」というのは「その発音構造で男性が好きになるようにできている」と言えるのだろう。

たしかに、男子が好む「特撮モノ」や「アニメ」は「濁音」だらけだ。

ゴジラ、ガメラ、ガンダム、デビルマン、ギャラドス、ドランゴンボール、キングダム。

進撃の巨人、呪術廻戦、仮面ライダーエグゼイド、バガボンド、ワールドトリガー。

ブルーアイズホワイトドラゴン、ジャンゴフェット、アベンジャーズ、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー。

私が大好きだった「チャドウィック・ボーズマン」も濁音で一杯。

イングリッシュプレミアリーグ、チェルシーの黄金期を支えた「ディディエ・ドログバ」は濁音率60%。

「機動戦士ガンダム」に出てくるネームを適当に並べてみる。

ガンダム、ガンタンク、Zガンダム、ZZガンダム、ガンキャノン。

ザク、ドム、ジム、ズゴック、ゲルググ、ビームライフル、ハイパーバズーカ。

ビームジャベリン、ビームサーベル、キュベレイ、ジオン軍。

おそらく、このガンダムワールドでは「濁音なし」の言葉を探す方が難しい。

このように考えると、ガンダムがいつまでも男性たちを釘付けにするのは、その「物語」と「フィギュア」だけではなく「濁音」という説があってもなんら可笑しな話ではない。

そして「シン・エヴァンゲリオン」もまさに「濁音」がいい感じに取り入れられているネームなのだ。

作中でも頻繁に使われ、私たちにも馴染みのある「エヴァンゲリオン」の略称「エヴァ」。

略しても「濁音」。

「エヴァンゲリオン」

「エヴァンゲリオン」

「エヴァンゲリオン」

「エヴァンゲリオン」

「エヴァンゲリオン」

「エヴァンゲリオン」

と唱えているだけでも、気持ち良くなってくるのは「濁音」が持っている「発音構造」の仕業だったのだ。

つまり、男性にとって濁音は「快楽」そのもの。

「気持ちがいい」ことは忘れたくない。

であるから、いつまでたっても忘れずに思い出せる、ということではないだろうか。

こう考えると少なくとも私に関しては納得がいった。

光拡散効果で闇を切り開く正義の光のイメージを持つ「シン」

そして、形容詞的についている「シン」も、覚えやすさと思い出しやすさに一役買っている。

「怪獣の名はなぜガギグゲゴなのか」の中から参考になるところを引用したい。

「新撰組」には、見廻組(みまわりぐみ)というライバルがいたが、見廻組がまったく注目されていなかったのは、名前の響きが悪かったせいではないか、というこれまた鋭い指摘もあった。

風の質の「S」を効果的に使ったシンセングミは、ことばの音そのものが、滞っていた世情に吹き込む一陣の風である。

当時の庶民には、どんなに爽やかに感じられたことだろう。

先頭のSHは光拡散効果もあり、まさに、闇を切り開く正義の光のイメージ。

組のGuでグッと締めて、最後のMiは愛の音。

宝塚のレビューのような、見事な出来映えである。女たちも相当もてたはずである。

実際には、鬱積した下級侍の集団であり、一時期は殺戮集団でもあった。

それなのに、後世にずっとエンターテイメントの素材として愛され続けているのは、新撰組の何によるところが大きいと思う。

これをG音の名前にでもしていたら、当時の男たちには気に入られても、後々悪党イメージに変わっていたのではないだろうか。

これを参考にして、

・風の質の「S」が使われた「シン」というのは、その音そのものが滞っていた世情に吹き込む一陣の風

・上映当時、度々の「緊急事態宣言」の発令で停滞ムードが漂う社会状況だったことに対して、光拡散効果で闇を切り開く正義の光のイメージを持つ「シン」という言葉ほど、爽やかに感じられるものはない

というような思考を行った。

形容詞の「シン」は、その当時の社会状況もあったからこそ余計に私に響く言葉だったのではないだろうか。

何事も「出すタイミング」というのはやはり重要なのだ。

このように考えると更に「シン・エヴァンゲリオン 」というネーミングへの納得感は高まった。

実は「意味」よりも「語感」

エヴァンゲリオンの意味」については以下に詳しくまとめられていた。

福音(Evangelion エウアンゲリオンあるいはユーアンゲリオン)は、ギリシャ語 εὐαγγέλιον, euangelion に由来する言葉で「良い(euエウ- 、”good”)知らせ(-angelion アンゲリオン、”message”.)」を意味する。

これを英語に直訳すると、good news となる。

つまり、マラトンの戦いの勝利の伝令のような戦争の勝利や出産など、喜ばしいことを伝える手紙などを指した。

イエス・キリストの十字架刑と復活(紀元後30年頃)の後、イエスの弟子(使徒)たちは「神の国(支配)が到来した」というイエスのメッセージを世界に広げるために布教を始めたが、これを弟子たちは「良い知らせ」と呼んだのである。

四福音書中最初に書かれたマルコ福音書はその冒頭を「イエス・キリストの良い知らせの初め」で書き出している。

参照:エヴァンゲリオンとか、アクエリオンの”オン”ってどういう意味?(あとシンカリオン)

このように「良いネーミング」にはほとんどの場合「なるほど!」と思わせる「納得感のある意味」が備わっている。

例えば「LOVOT」というロボットは知っている人も多いはずだ。

このLOVOTというネーミングは、LOVE+ROBOTで「愛されるロボット」というコンセプトから来ているという。

これも意味を知ると「なるほど!」となる例ではないだろうか。

思うに、ネーミングとコンセプトの間に導線を設計し、ターゲットに「なるほど!」と思わせ、納得させるネーミングを作れるかどうかは間違いなくプロの腕の見せ所だ。

しかし、ネーミングを「覚えやすく・思い出しやすくする」のは、前述の「濁音」や「シン」の件でわかるように実際には「意味」よりも「語感」の方がその役割を大きく担っているということなのだろう。

これは私たちの脳にとって重要なのは意味よりも「」とも言えそうだ。

以上、エヴァ好きの人はもちろん、そうでない方にとってもネーミングをする際の何かしらの参考になればと思う。

しかしまあ、やっぱり公開から2年は長い。

UnsplashRyan Yaoが撮影した写真

【著者プロフィールと一言】

著者:田中 新吾

プロジェクトデザイナー|プロジェクト推進支援のハグルマニ代表(https://hagurumani.jp)|タスクシュート(タスクと時間を同時に管理するメソッド)の認定トレーナー|WebメディアRANGERの管理人(https://ranger.blog)|座右の銘は積極的歯車。|ProjectSAU(@projectsau)オーナー。

●X(旧Twitter)田中新吾

●note 田中新吾

ハグルマニの週報

シン・エヴァ劇中に出てくる「さよならはまた会うためのおまじない」というセリフも「覚えやすく/思い出しやすい」ものとして刻まれているものです。この理由も考察したいところ・・・

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