田中 新吾

「最初と最後」そして「間」を考えてクオリティをあげる。

タナカ シンゴ

「だじいな おらしせ」広告の文字を並べ替えたら、老舗店のどら焼きが大ヒット

先日、富山県高岡市にある老舗どら焼き店「中尾清月堂」の広告が話題になっていました。

広告の文字を入れ替えたら、という奇を衒うような内容ですが、それは「タイポグリセミア現象」という根拠に下支えされていたという話です。タイポグリセミア現象というと「?」かもしれませんが、要するに「最初と最後さえ一致させればひとはそこにある文字を認識できる」ということです。人間の脳ってすごいですね。そして、不思議。

今日はこれに関連する話として、少し思うことを書き留めておこうかと。

最初と最後の感覚

実は、このニュースが広まる随分前にこんなツイートをしていました。

このことがタイポグリセミア現象だとは知らなかったのですが、重要な感覚であるとして個人的に理解していたんです。

例えば、旅のはじまりと旅のおわりさえ良ければ、その旅は良かったと感じる。

といった話もあるし、古くから言い伝えられている「最初が肝心」と「終わりよければ全て良し」というものですね。人は不思議と生まれつき、このような感覚を持ち合わせています。多くの人が身に覚えがあるはずです。
それにTakramの田川さんも、デザイン思考における重要なものとしてこの「最初と最後」という感覚の重要性を唱えています。「最低と最高」という感覚も加えて全部で4つです。
エクスペリエンス改善・構築に必須の「4つの体験」
最低の体験、最高の体験、最初の体験、最後の体験 、「最低・最高・最初・最後」と覚えてみてください。

人間はひとつの体験の中で「最低・最高・最初・最後」しか記憶できない。ので「途中で何を言ったかも大事だが、最後に何を言ったか、はその数倍大事」。

「最低と最高」について書き始めると長くなってしまうのでこれはまた別の機会に。

じゃあ、間はどうだっていいのか?

個人的にはそんなことはないと思っています。「間」も重要です。

古くから今もまだ使われ続けている言葉は本質を捉えています。

時の間と書いて「時間」、空の間とかいて書いて「空間」、人の間と書いて「人間」、そして、字にはなっていませんが「最初と最後」にも「間」が存在します。何かを生み出す時には間を意識しないと、途端に「間抜け」なものが生まれてしまうということなんでしょう。これは「間抜け」という言葉の本質的な捉え方だと思っています。

職人の世界でも、魂は「プロセス」に宿ると言いますし、人の成長過程やチームスポーツの勝敗においても、結果よりもその「プロセス」が大切とはよく言われるものです。このように日常的に起こる様々な事例みてみると、「間」に大きな価値がある事が自分ゴトとしてよく分かります。

さいごに

最初と最後、そして間を意識することでクオリティが上がる。という話をしてきましたが、いきなりすべてを充実させることは難しいです。コストもかかります。

なので大切なのはこのことを「意識すること」と「優先順位」だと思っています。

例えば、サービスやプロダクトの提供者目線で考えると、先ずははじめに「最初と最後」を意識すること。そうすると顧客からの「及第点」は得られる。

そして、次に間を充実させること。そうすることで、顧客から「最高点」を得られる確率が上がっていく。といったイメージです。サービスやプロダクトのクオリティを高めるというのはこういうことでもあると思うんです。

この間行ったイベントでも、最後の最後に登壇者から来場者に向けての「ラストメッセージ」をもらいました。そのことで会全体が引き締まり、結果満足度の高いものになったと思っています。

引き続き、仮説と実践を繰り返しながら、思考を深めていきたいと思っています。

それでは今日はこの辺で!

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