田中 新吾

「呪い」ではなく「祝い」や「祈り」の言葉をかけていきたいという話。

タナカ シンゴ

最近、独立研究家の山口周さんが有料noteをはじめられた。

以前からその考え方には学びが多いと感じていたため今課金購読をしている。

ハイクオリティで新しい視点を与えてくれる記事が毎日投稿されてくるのに月額1,000円。

自己投資として考えれば俄然安い。

多くの方にオススメしたい有料noteだ。

そんな山口さんが4月末頃に以下のような記事を書かれていた。

なぜインターネットは「呪い」に満ちてしまうのか?

これまでに投稿された記事で個人的なランキングを作るとすれば、確実に5位以内に入ってくる。そんなお気に入りの記事である。

無料で読める部分に限るがポイントを幾つか抽出してみたい。

・これほどまでに社会が「呪い」に満ち、多くの人が呪いにかかって人生に閉塞感を覚えている時代はかつてなかった。

・呪いとは「人から選択肢を奪う言葉」のこと。ある種の言葉を人からかけられる、あるいは自分でかけることによって、その人から選択肢を奪ってしまう、身動きが封じられてしまう。そのような言葉のこと。

・言葉とはすなわち情報であるから呪いは情報でできている。

・呪いにかかっている人の脳は常にバグっている状態にあり、人生のさまざまな判断の局面で自分にとって最も適切なオプションを選ぶことができない。

・現代の社会はかつてないほどの大量の情報が行き交う社会になっている。呪いに満ちていると感じるのは必然。

いかが思われるだろうか?

呪いとは言葉、情報であり、人の選択肢を奪う言葉。

情報化社会である現代はそんな呪いで満ちている、といった話はストンと腹に落ちた。

そして、有料部分であるため詳しく書くことは控えるが、呪いの反対は「祝い」または「祈り」で「人の可能性や選択肢を拡げる言葉」とも述べている。

これも遥かに納得感の高い話だった。

リアルやデジタルで誰かにかけるその言葉は「呪い」なのか。

はたまた「祝い」や「祈り」の言葉なのか。

情報化社会をよりよく生きる上で、この問いかけはめちゃくちゃに重要なことなのではないだろうか?

「至急」というビジネスシーンで見かける呪い

この記事を書こうと思った時、真っ先に浮かんだのがビジネスシーンで時々見かける「至急」という言葉である。

もしかすると経験がある人も多いのかもしれないが、メールの件名につけられる「至急〜〜」は思うに「呪い」の代表格だ。

前職マーケティング会社にいた頃、クライアントにやたらとメールの件名に「至急」を付ける方がいた。

仮にもTさんと呼びたい。

印象が強かったので今でもTさんの顔と名前はよく覚えている。

業務を発注してもらっている側であることから、違和感を感じながら最初はなるべく応えるようにしていたが、あまりの「至急」の数の多さに途中から至急対応することをやめた。

が、即時の対応をやめたからといって特別何か業務に支障が出るわけでもなかった。

今思うにこの時Tさんが私に連発していた「至急」は間違いなく「呪い」である。

至急という言葉は、かけられた相手が取ることのできる選択肢をその瞬間全て奪い、そのメールに対応することだけを要求するからだ。

Twitterで検索してみても「至急」という「呪い」にかけられたことがある人は私の他にも結構見受けられた。

いきなり「大至急」という件名のメールがきた。

このメールを見て、この人は自分の努力不足による時間の都合を他者に押し付ける自己中人間だとすぐ分かったから、もう取引しないと決めた。

星野一徳 l Bowers代表

なんでもかんでもメールの件名に【至急】【重要】ってつける人いますね。

オオカミ少年と同じです。本当に大至急対応してもらいたい超重要案件も「いつものことだろう」と相手にしてもらえなくなるので、本当に【至急】なのか【重要】なのか正しく判断することが大切ですね。

星 祐貴@北のベンチャー社長|one net

【大至急】とかのメールのタイトルは自業自得、自意識過剰、自分本位とあなたの心象をダダ下げるだけだから、急ぎの内容でも使わないほうが賢明。

たかゆー

「至急」という言葉を用いる人は自分の努力不足による時間の都合を他者に押し付けているだけ。

自業自得、自意識過剰、自分本位とあなたの心象を下げるだけ。

Tさんのような至急ユーザーには耳の痛い話かもしれないが本当にこの通りだ。

「至急」を例に挙げたが、思うに以前書いた「違う」も呪いに分類される言葉なのだろう。

参照:「それは間違っている」と思った時、ストレートに言わない方がいい理由とその時の対処法について。

呪いが情報でできている以上その数はこんなものではすまない。

繰り返すが人から選択肢を奪う言葉」の全てが呪いだ。

そして呪いはインターネット・SNSとも相性がよく、考えれば考えるほど山口さんのいう「現代は呪いに満ちている」が腹落ちしてくる。

「祝い」や「祈り」の言葉をかけていきたい

そしてこの呪いに対するのが「祝い」や「祈り」。

山口さんの言葉を借りれば「人の可能性や選択肢を拡げる言葉」である。

この話を聞いた時にすぐさま頭を過ったのが愛読しているジャンプ漫画「逃げ上手の若君」に出てくる一つのシーンだった。

知らない人のために少し説明を挟むと、

逃げ上手の若君」とは、日本の南北朝時代を舞台に歴史上の人物である北条時行の成長と活躍を描いた「松井優征(暗室教室で知っている人も多いかもしれない)」による作品だ。

多くの文献や専門家の意見を元に、当時の文化や風俗、歴史的な背景が詳細に描かれる一方、少年漫画らしい外連味に溢れた演出や物語が好評を博しており、TVアニメ化も決まっている。

1333年、重臣である足利尊氏の裏切りと新田貞義の挙兵により鎌倉幕府が滅亡。

北条家の遺児である時行は、諏訪頼重によって救い出され、長野へと逃げ落ちる。

その地で仲間を集め、力を蓄えつつ時行は北条家の再興のための戦いを始める。

ざっくりとこんなあらすじだ。

そんな「逃げ上手の若君」の第90話。

読んでいない方には一部ネタバレになってしまうが、第90話は、今川範満に「吹雪」がとどめを刺し、戦を勝利に導いた話だった。

そんな殊勲の吹雪に対して時行がかけた言葉はまさに「祈り」や「祝い」の部類の言葉で、吹雪の可能性を拡げるものになっている。

「君への信頼はこれからもずっと変わらない」

「君は私が初めて自分で見出した郎党だから」

この言葉をかけられた吹雪は時行への忠誠をより誓うわけだが、実際の仕事の場合も「祈り」や「祝い」の言葉はメンバーに力を授け、参加意識を強く育む。

最近見かけた以下のツイートもまさに「祝い」や「祈り」と言えるだろう。

プロジェクトがうまくいく魔法の言葉。

それは「最高ですね!」「これはみんな喜びますね!」「世界変えちゃいましょう!」「革命ですね!」……つまり、自分の言葉で、感情を乗せたひとことを贈りあうこと。

これだけでプロジェクトの温度が3度くらい上がって、みんなやる気になってうまくいくはず。

竹村俊助 | 株式会社WORDS代表

思うに、現代に「呪い」が増えたのはインターネット・SNSの普及が大きく影響している。

呪いは言葉、情報であるからそれらと大変相性がいい。

でも祝いや祈りも等しく相性がいい。

様々に用意されているコミュニケーションの場を、呪いの伝達に使うのか、祝いの伝達に使うのか。

これは本当に個人次第のことだが、時間が経過すればするほどその積み重なりが人生を分つ気がしてならない。

まとめとしては、私は「呪い」ではなく「祝い」や「祈り」の言葉をかけていきたいという話。

今回書きたかったことはこんなところである。

UnsplashDollar Gillが撮影した写真

【著者プロフィールと一言】

著者:田中 新吾

プロジェクトデザイナー|プロジェクト推進支援のハグルマニ代表(https://hagurumani.jp)|タスクシュート(タスク管理術)の認定トレーナー|WebメディアRANGERの管理人(https://ranger.blog)|「お客様のプロジェクトを推進する歯車になる。」が人生のミッション|座右の銘は積極的歯車

この後の戦で「吹雪」と「時行」の間に大きな変化があるのですが、第90話のシーンがあるからこそ余計に響く内容になっているなと個人的には思います。

●X(旧Twitter)田中新吾

●note 田中新吾

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