「直し続ける力」が仕事の質を決める。

私はアラフォーですが、「一発で決めるのがプロだ」と思い込んでいた時期が、正直、長かったと思います。
けれど、創作や仕事の現場に身を置くほど、その固定観念は静かに崩れていきました。
手塚治虫氏のような漫画家はネームを何度も直し、ピカソは上塗りに上塗りを重ねて想像もしなかった絵に至ったそうです。
世界的メイクアップアーティストでさえ、制止されるまで最後の数ミリを整えているのだとか。
プロの条件は「一発命中」ではなく、違和感に粘り強く向き合い続ける姿勢そのもの。
最近はそう強く確信しています。
だからこそ、この間Xで見かけた山田ズーニーさんの投稿には強く共感してしまいました。
何度も何度も直す、どれだけ粘り強く直し続けられるか、それがプロではないか、という視点を持ち始めて、ずいぶん楽しくなった。
— 山田ズーニー (@zoonieyamada) August 10, 2025
一発で完成し決して直さない、それがプロ、みたいな固定観念がずっとあった。…
実務で得た確信
この自分の確信は、日々の実務が運んできてくれたものだと思います。
たとえば私が仕事の一つとしている命名。
最近の企画では、検討の末に「地球議」という言葉に辿り着きました。
意味領域、音の印象、記憶性、拡張性——
一つずつの要素を仮説→検証→修正で回し、AIや第三者との対話のたびに浮かぶ違和感を炙り出して磨く。
初案で決めていたら得られなかった「語感×意図×スケール」のバランスが、反復の末にようやく骨格を持ちました。
文章やXの投稿は、直しの効果がさらに見えやすいと思います。
導入の一段落を作っては、比喩と言い切りのバランスを調整する。
いったん寝かせ、翌日に音読して引っかかる語を削り、名詞と動詞を研ぐ。
Googleアナリティクスからの読者の滞在時間や反応の強度が、主観をあっさり裏切ることも珍しくありません。
どこまで直すのか?
では、どこまで直すのか?
私の答えは「締切を守る前提で、直しの時間を最初から設計する」です。
正式締切の2日前〜3日前に「検証締切」を置いてます。
ひとまず出す、反応をもらう、そこから直す。
二段ロケットのようにスケジュールを組むと、品質と納期の両立が現実的になるという経験則です。
直しの時間をあとから捻出するのではないと思っています。
最初からバッファとして時間を確保し、それを死守することで納期にもハイクオリティで間に合う。
直し続けることの意味
結局のところ、「直す」とは自分の思考やセンスを疑い続ける行為だと思っています。
少しでも違和感を検知したらメモ化し、範囲を捉えて修正を試みる。
そうして、完璧でなくてもいいから修正案を第三者に当てる。
言葉の選択肢の天井は語彙の量に比例するため、命名であれば、とにかくたくさんの同義語や類義語を強制的に出し、修正を行います。(ここはAIが大活躍)
最後は「目的適合・一貫性・余白」という条件などで、「Go」または「No-Go」を決める。
この運用を実践すると、仕上がりは一段上がります。
直しは恥ではない
思うに、直しは恥ではありません。
むしろ、仕事の質を高める超重要な行為であり、プロとして持つべきスキルです。
何度も何度も粘り強く直していい。
直し続ける勇気と、締切を守る仕組み。
この二つが揃ったとき、仕事は「これしかない!」という納得感のある地点に、ようやく辿り着くのだと思います。
関連記事:「人生は成功するためじゃなく、納得するためにやるのよ」という台詞を受けて。
UnsplashのAngelina Litvinが撮影した写真
【著者プロフィール】
著者:田中 新吾
◼︎ハグルマニ / 命名創研 代表 大企業様
中小企業様、ベンチャー企業様、NPO法人様のプロジェクト推進に必要とされる「歯車に」なったり、「#名前座」の構築によるブランディング支援をしたりしています。
◼︎#栢の木まつり 実行委員会 委員長(地域づくり事業@入間市宮寺)
◼︎タスクシュート認定トレーナー
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