RYO SASAKI

常識の変化を捉えて遊び愉しむ~新常識創作のお勧め~

タナカ シンゴ

当たり前のことなのだが、世の中は日々変化している。

大きな事故や天災が急に起こって、それによる変化に驚かされることもある。

ここ最近の大きな変化で言えば、疫病に、紛争に、物価上昇・・・などなど上げれば切がないし、他にも私が気づいていない変化がたくさんあるのだろうと思う。

世の中の変化はどんどん早くなると言われるから、特に老兵は頑張って新しいものについていかないとならない面もあるのだろうとも思うのだけれど、何でもかんでもについていけるかは自信がないところだ。

最近聞いた話に、この世の中の変化について非常に興味深いものがあった。

その変化自体は、特段驚くものではなくて日常にあるようなものなのだが、常識の変化という意味合いでなぜか私の心に引っ掛かることになった。

その話とは、夫の家事に関する話だ。

今回はこの引っ掛かりをキッカケにして変化に対応する方法を妄想してみることにした。

諸行無常、人はいつの時代でも世の中の変化にずーっと対応していかないといけない定めなのだろうから、変化をうまく捉えれば、愉しい生活が送れるのではないだろうか?

そんな期待をもって始めてみたい。

常識の変化①ー家事について

常識の変化は、ある旦那さん(芸能人)とインタビュアーの会話の中にあった。

旦那さん:「私は家で奥さんの家事をよく手伝いますよ。」

インタビュアー:「偉いですねえ。」

このやりとりに視聴者の女性たちが、

「全然偉くないよ。普通でしょ?偉そうに言って・・・。」

などとSNSに不満を投稿し(いわゆる)炎上した。

どうやら、「手伝う」という言葉にそもそも家事が奥さんの仕事である、という前提があるので、「手伝う」という言葉を使うこと自体がNGなのだという。

その旦那さんにとっては、自分が家事をしていることは普通のことで特に偉いと思っていないのだが、訊かれたからやっていることを正直に答えただけ。

それに対して、インタビュアーが一般的な価値観だろうと選んだ言葉が「偉い」だった。

旦那さんがこれも普通に「いや、当たり前のことですよ。」と言うと今度は別の方々から「謙遜だ」「カッコつけてる」などと批判が上がったという。

この旦那さんは、どうやってもこの沼を抜け出せそうにない。汗。笑。

そう言えばこの会話の文章に、「旦那さん」という言葉を使っている。

これもどうなのだろうか?

旦那さんの対義語は「奥さん」で、「主人」という言葉も家父長制の男性がリーダーで上?といったニュアンスを含む。

夫の意味の「旦那さん」「主人」という言葉が使われなくなる日が近いのかもしれない。

いや、もう来ているのかもしれない。

家事の話に戻って、もし私がこの批判する人の中に入っていた場合にどんな対応をするだろうか?

どちらにも合わせる風見鶏のような情けないものになるのが関の山ってとこだろうか。

思うに、

世の中の変化は一様には起こらないから、価値観にグラディエーションができる。

比較的年齢に比例しているだろうか。

家事なんか男がやるもんじゃない、という世代。

家事を男が少しでもやればまだまし、という世代。

家事は夫婦均等にやるものだ、という世代。

これらの世代が、混在している。

だからどちらに向いても何かに突き当たってしまうのかあ。

人をSNSでやたらと攻撃するのはどうかとは思うものの、心の中でそれぞれの価値観から不快に思うこと、これを非難はできないだろうと思う。

家事の役割に限らず、何事においても新しい価値観への変化について、変わり身が早くて先進性のある層から、変わらずに伝統を守る層までに分かれるのが人というものなのか。

「グラデーション構造による不快の発生は永久に不滅です。By ミスター」笑。 

ミスターでどの世代なのかバレてしまう。

その不快の発生を解消しようとして、自分が下手に主張をすると争いが起こって、どう見ても不快が更に増していくように思える。

などなどと、この話が常に起こっている常識の変化にどんな心持ちでいるべきか?についてヒントを与えてくれるようだ。

どこにも行けない時には、面白いねえ、と言って笑って濁して時間が経つのを待つ以外の良い方法が見当たらないのではあるが・・・。

笑いはとりあえずの解決策になるから素晴らしいものだ。

常識の変化②ー科学・数学

次に、かなり飛んで科学と数学から2つの変化をピックアップしてみる。

まずは、地動説の話。

それまで常識となっていた天動説が、コペルニクスの地動説に変えられるまで、何と300年の歳月がかかったらしい。

天文学を知らない人でもわかる天動説から地動説になるまでの出来事まとめ

ちなみに、コペルニクスの後に地動説の有力な証拠を提示したガリレオが有罪になったのは、地動説がローマ・カトリック教会の支配に対しての脅威となったからだ。

このように科学における新しい正しいことが、既得権益を守るために抵抗にあって受け入れが遅れることもある。

ガリレオはなぜ異端審問で有罪となったのか

余談ではあるが同時期に、当時のユリウス暦は1年(365.24219日)に10日ほど足りないということがわかっていたが、その後グレゴリオ暦まで300年放置されたらしい。

次に、数学の虚数の話。

虚数とは、2乗した時にマイナスになる数字のことで、普通の感覚ではその存在はあり得ない。

この虚数は16世紀のイタリアで3次元方程式を解くために示された。

そして、19世紀になってやっと数の仲間入りが認められて、実数と虚数を合わせて複素数という定義となった。

この間もまた、300年かかっている。

科学するブッダ 犀の角たち

ここに上げた例は、どれも変化に300年の歳月を要している。

そこまで時間がかかった理由としていくつか上げることができる。

・生活に関係ないことであること。

・目に見えない(例えば概念である)こと。

・実証が難しいこと。

・旧常識の既得権者(信奉者)の抵抗があること。

地動説を知っても生活は良くならないし、暦が10日足りなくてもほとんど困らない。

日常で3次方程式を解く必要もないから、民衆にとっては専門家の戯れに見えるにすぎない。

そして、人間は見えないものがなかなか信じられないものだ。

見えないもの、例えば重力なんかも理解に時間がかかったのだろうと想像する。

これらの変化に時間がかかる理由は、時代は全く異なるものの、これからの変化を捉えるにおいて、またヒントになると感じられる。

時代ガチャ

世の中にはどんどん変化するものと、長い時間をかけて変化するものがある。

どんどん発表される新製品、そしてまた流行しては廃れていくものが多くある。

そんな中で例にもあった常識(価値観)の変化というものは比較的時間をかけて起こるように思う。

家事の分担は、地動説ほど時間がかからずに変化していくだろうけれど、それでも数十年単位以上の期間を要するのだろう。

現代は情報の行き来がすごいから、当時よりも常識も比較的どんどん変わっていく傾向にあるのかもしれない。

変化を捉えるためにまずは新製品などのスピードの早い変化と時間のかかる常識の変化を分けて捉えたい。

新製品や流行などのスピードの早い変化についてはこれは追随していくのもよしだし、それに羨ましさがないではないのだが、私の場合は溺れない程度にいい加減に力を抜いて行かないと身が持たないように感じる。

例えば携帯電話のバージョンアップは細かくせずに、サポートが切れてしまうのであれば渋々ではあるが、チャンと買い替えして最後の最後に最低限の変化に対応していくといった具合だ。

エネルギーをそこに持っていかれたくない。笑。

興味があるのは、ゆっくり進む常識(価値観)の変化の方。

これを考える上でまず気になるのは、産まれるタイミングと人の寿命だ。

後輩がおどけて言ったこんな言葉を思い出した。

「あなたたちの時代がバブルでやりたい放題したから、その反動で我々は就職氷河期の辛酸をなめているんですよ。笑」

確かにそうだ。

しかし、私は偶然にその時代を生きていた。

数十年ずれるだけで人生は大きく異なる。

家父長制の時代に産まれていたかもしれないし、天動説が当たり前の時代に産まれていたのかもしれない。

何が常識の時代に産まれるかはガチャを回すようなものだ。

そして、変化までの300年の歳月、数十年の単位などの常識の変化に対して、人の一生は余りにも短い。

自分が家父長制の時代に産まれたことを想像してみよう。

その父親絶対が常識の時代に、家事分担しよう運動を起こしてみても家事分担が当たり前になる時代を早められたとはとても思えない。

そもそもその前に、自分から家事分担をしようというシャープな発想が出てくるとはとても思えないのだが。笑。

常識の交代は、最初にその常識ゆえの問題がチラホラと出てくるも、固定観念を持つ者と既得権を持つ者の抵抗もあって長らく放置されるうちに問題が大きくなって、爆発することでやっと反転するようなものだろう。

大きな時代の前に自分一人の力不足を痛感するのだ。

常識の変化を捉える

古い時代と変わらずに、今の時代もこれからの時代も問題がなくなることはなくて、その問題の原因として、常識というものが存在していることだろう。

今はそれに気づかない人が多いだけで。(気づいている人はいつの時代にもわずかにいると思うが。)

これからも起こる常識の変化にうまく向き合う方法をここまでのことから2つほど上げておきたい。

一つ目は、常識についての争いは避けよう!

家事分担の例のように、物事はいつだって変化の過渡期にあって、価値観のグラディエーションが起こっているのだから、そこに抗うことを私ならば諦めたい。

諦めると言うと後ろ向きだとご批判をいただきそうなのだが、労あって益なし。

できないことを無理にやろうとすることは控えた方がいい、と自分に言い聞かせるのだ。

私の意見を広めるなどの努力はもちろんあっていいことなのだが、物事というものは問題が大きくなって反動のエネルギーが高まらないと全体は動かないのだ。

そこまでのエネルギーが高まるタイミングを私がコントロールできるなんて思えない。

超能力者がいるならばその方にお任せしようと思う。笑。

また、この歴史の大きな流れを観ると、間違っても自分の寿命に合わせて、自分の生きている間に決着をつけようなどと都合のいいことは言えない。

身の程を知って自分のできること、例えば自分の意見を伝えること、相談を受けたならば相談に乗ること、同じ意見の人を応援すること、などをしていこうと思う。

一つ目はずいぶん、消極的かつ責任回避的に見える方法だったのだが、二つ目はもう少し積極的なことだ。

二つ目は、自分の新常識で生きよう!

現常識が変わるのを待ってられないから、自分だけやってしまおう!という当たり前と言えば当たり前のことだ。

周りに迷惑をかけよう、というのではない。

天動説の時代に、静かに自分だけ地動説を信じて生きればいいし、家父長制の時代に自分の家事だけは分担してやればいい、ということだ。

周りへの証明も説得できないけど、みんなの常識に染まることなく、自分だけが信じる新常識の説を創って、それにしたがって生きてみる。

そしてそれが100年後を先取したネクストブレイク常識になるのかもしれない。

荒唐無稽に思えるが、数々の常識が覆されてきた歴史を観るつけ、現代の常識も盤石ではないと捉えて問題はない。

自分で説を創らないまでも、新しい価値観を提案している人々は世の中にたくさんいる。

それを新常識という目で捉えて、賛同していく方法もある。

そうは言っておいて、この新常識は親族でもかなり難航する場合もあるのだろう。

新常識が周りの迷惑になる場合もあるし、迷惑でなくてもハブられる時代もあるし、国が検閲する場合なんてことまであるのだろう。

現常識との折り合いは必要になる。

でも、それらのことも変化の過程の1コマなのだと俯瞰して、自分の範囲だけで新常識を愉しむのがいい。

制限がある中でも、現常識と私の創った新常識という意味合いで眺めたら景色は異なって世の中をエンタメとして観ることができるだろう。

実は、私の中にすでに新常識になるのではと思える妄想がいくつかあって、いくつかは今の自分に都合がいいもの、いくつかは自分に悪いものである。

つたないものではあるが、中から自分の都合の悪いものをひとつ紹介して終わることにしたい。

新常識「アルコール摂取は禁止である」

アルコールは健康に悪いものの代表格であり、酔っぱらうと周りの迷惑にもなる。

そんなものを、今後”正しい判断”を徹底する人たちは、禁止にするはずである。

実際に、進化した若者たちにアルコール離れも進んでいる。

なんでここまで禁止にならなかったんだろうか?

これが、酒好きの自分の首を締める都合の悪い新常識である。

世の中において、自分に都合のいいようなことだけが正解ではないから、都合のいい常識だけに変化していくことはない。

今日から禁酒法がスタートしたならば、私はここからもっと健康に長生きできるかもしれない。

例えば、このような一人でも実現可能な新常識を、自分だけで初めていけばいい。

自分の考え方を自分だけの常識にして日々生きていくのがいいのだ。

さあ、私の生活では、今日からアルコールは禁止!

と言い放って、んっ?急に我に返って・・・

今日だけとりあえず禁酒してみることにする。汗。

今回使った、「変化を捉える」という言葉の意味は、必ずしもその変化に素早く乗っていくことや近未来の予想をいち早くするということではなくて、変化を捉えた上でどうしようもないとして放置する、あるいは現常識を無視して自分だけの新常識を創作して実行する、というものだ。

これからも常識は変化していく。

変わる常識は何で、変わらない常識とは何なのだろうか?

こんな風に変化を捉えて、遊び愉しみたいと思うのだった。

UnsplashCampbellが撮影した写真

【著者プロフィール】

RYO SASAKI

自分に都合のいい新常識は、あまりにも楽観的になるので、多少は自分の戒めになるアルコール禁止の方をピックアップしてしまいました。

工学部を卒業後、広告関連企業(2社)に29年在籍。 法人顧客を対象にした事業にて、新規事業の立ち上げから事業の撤退を多数経験する。

現在は自営業の他、NPO法人の運営サポートなどを行っている。

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