あらためて、自分が間違っていると思った場合には、きちんと「ごめんなさい」が言える人でありたいと強く思った話。
この季節になるとSNS(私の観測範囲では特にX)上に「新入社員の方々に向けた投稿」が雨後の筍のように登場する。
このミームのようなものが私は結構好きだ。
2年前のこの時期に書いた以下の記事はそんな流れに乗って書いた。
社会人になったばかりの頃、悪くもないのに「すみません」と言わないこと、と教わった。
知りもしない方々から様々なことを言われて、新入社員の方からすれば「寄ってたかって、うっせーよ」「余計なお世話だよ」なのかもしれないが・・・・
今年私が見かけた投稿の中で強く印象に残ったものがあった。
それがこちらである。
投稿主の方は4月になるとこの内容をいつも思い出すということ。
私には初見の内容だったのだがこれには遥かに大きな共感を覚えた。
「ごめんなさい」がきちんと言える人、もっと言うと立場にかかわらず訂正できる人が一番強い。
本当にその通りだと思う。
*
この内容に触れて思い出したことがある。
新入社員の時ではないのだが、私が入社して2年目の終わり頃の話だ。
私が在籍していた会社は全体でも100名はいない規模感だったこともあったからか、若い年次であっても役員クラスの方々と接点を持つことが結構あった。
この思い出は、大型イベントへの参加を検討しているS社(B2B外資で知らない人の方が多いが社会を裏方で支えている会社)に対して、プロモーションの企画提案を役員のKさんと一緒にすることになった時の話。
Kさんはもう忘れてしまっているかもしれないが、私には重要な記憶として刻まれているものだ。
そしてそれはまさに冒頭のXの投稿のような状況だった。
ある日、私は企画提案の方向性が問題ないか確認するためにKさんに相談をもちかけた。
私「この前の会議の内容をふまえ一旦ここまで企画書を作ってみたのでみてもらえませんか?」
Kさん「OK」
(読んでもらう)
Kさん「この前段の部分だけど、〜とか〜とかあった方がいいんじゃないか?」
私「なるほどです・・・」
私「しかしですね、先方のオリエンとヒアリングからするとこのような整理になってくるのかなと思いまして。」
Kさん「そうかなー。この後予定が詰まっているので後であらためて見てみるよ」
私「はい、宜しくお願いします」
次の日、朝メールを開くとKさんからメールが届いていた。
「昨日説明してくれたことだけど、あらためて見てみて俺が間違ってたみたい。ごめんね。今の方向性で良いと思うのでこのまま準備を進めてみてください」
まだ若い年次だった私はこれを受けて大きな衝撃を受けたのだ。
(役員の人でも、自分が間違っていると思えば、きちんと「ごめんね」と言ってくれるんだ・・・)
Kさんはスタイルもよく、服装もおしゃれだったこともあり、それから若手だった私にとって憧れの対象となった。
そして、仕事をしていく中で、Kさんのように、自分が間違っていると思った場合には、きちんと「ごめんなさい」が言える人になりたいと強く思ったのだ。
*
「なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?」の著者である山口揚平さんが提唱する「信用の方程式」は、思うに、信用の本質を解き明かしている。
この方程式は「信用=(専門性+確実性+親密度)/利己心」という形で数式化され、信用の構築に必要な要素により表現されているのだ。
信用の構築には、専門性、確実性、そして親密度の3つの要素が重要であり、これらの合計を個人の利己心で割ることで計算される。
つまり、専門性(自分のスキルや知識の向上)、確実性(約束を守ること)、親密度(他人との深い関係を築くこと)を高めることによって信用は上がり、利己心を抑えることによってさらに信用を強化できるというわけだ。
専門性については、特定の分野における知識や技術を持つことで、他者からの信頼を得るための基盤となる。
確実性は、約束や期待を守ることで示され、人々が自分に対して持つ信頼の信頼性を高める。
親密度は、他者との感情的な絆を深め、相互理解を促進することで、長期的な関係の構築に寄与していく。
そして、山口さんは利己心を方程式の分母に置くことで、自己中心的な動機が信用に与える負の影響を強調する。
自己の利益を優先する行動は、長期的には他者からの信頼を損なう可能性があり、逆に、利他的な姿勢を保ち、他者の利益や幸福を考慮することで、より強固な信頼関係を築くことができるという話だ。
私がこの信用の方程式を知ったのは実はつい最近のことなのだが、これを見て思ったのは「自分が間違っていると思った場合には、きちんと「ごめんなさい」と言う」、利己心と親密度、そして確実性に影響するもので、間違いなく「信用」を貯めることになるということ。
突き詰めれば、仕事にはスキル以前に、何よりも「信用があること」が大事だ。
どんなに卓越したスキルや知見を持っていても、信用のおけない人に仕事を任せるわけにはいかない。
冒頭の投稿をきっかけに、あらためて、自分が間違っていると思った場合には、きちんと「ごめんなさい」が言える人でありたいと強く思った。
UnsplashのJack Sharpが撮影した写真
【著者プロフィールと一言】
著者:田中 新吾
プロジェクトデザイナー|プロジェクト推進支援のハグルマニ代表(https://hagurumani.jp)|タスクシュート(タスクと時間を同時に管理するメソッド)の認定トレーナー|WebメディアRANGERの管理人(https://ranger.blog)|座右の銘は積極的歯車。|ProjectSAU(@projectsau)オーナー。
●X(旧Twitter)田中新吾
●note 田中新吾
東浩紀さんは「訂正する力」の大事さを訴えていますが、今回の話もまさに訂正する力なのだと思ったりします。
会員登録していただいた方に、毎週金曜日にメールマガジン(無料)をお届けしております。
「今週のコラム」など「メールマガジン限定のコンテンツ」もありますのでぜひご登録ください。
▶︎過去のコラム例
・週に1回の長距離走ではなく、毎日短い距離を走ることにある利点
・昔の時間の使い方を再利用できる場合、時間の質を大きく変えることができる
・医師・中村哲先生の命日に思い返した「座右の銘」について
メールマガジンの登録はコチラから。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
これからもRANGERをどうぞご贔屓に。