タナカシンゴ

「スマホ」に、対面コミュニケーションで得られる「気持ちよさ」を奪われてたまるものか、という固い決意ができた。

今話題になってる「スマホ脳」をようやく読んだ。

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この記事を書いている時点で、Amazonのレビューは「1,287」件。

評価は「☆4.5」。

凄まじいスマッシュヒットである。

ここまで売れに売れまくっている本を見たのはいつぶりだろうという感じなのだが、私に関して言うと、読む前から「タイトルでなんとなく内容の想像がついてしまった」ため、手に取るまでに随分時間がかかってしまった。

著者である精神科医のアンデシュ・ハンセン氏は、生物進化の観点と人類の生活環境の「変化のスピード差」に着目し、「スマホ依存の弊害」や「高デジタル化社会での立ち振る舞い方」について、様々な研究結果を交えながら問題提起をしている。

本によれば「スマホ依存」は、以下のような症状を引き起こす。

・集中力と記憶力の低下(マルチタスクの常態化のため)



・ストレスや鬱(新しい情報があるかも知れない状態の継続で、脳が常にオン状態になっているため)

・睡眠障害(上記のような精神状態に加え、ブルーライトの影響のため)

このような症状に思い当たる人の多さが起因してのベストセラーだと言ってほぼ間違いないだろう。

しかし、実際読んでみると他の文献などでこれまでに目にしたことのあるようなものが纏まっている印象を持った。

例えば。

私は、スマホの「集中力を奪う力」が凄まじいという実感が持っているため、仕事をしている最中はスマホを見ない。

基本的に別の部屋に置いておいてスマホを見るのは休憩の時のみ。

スクリーンは白黒設定で、

メッセージ系アプリやSNSは、LINE以外ほとんどスマホから削除している(ただ仕事の都合上などで、Instagramは残している)。

kindleなどの電子書籍系アプリもない(パソコンで読む)。

タブレットも持っていない。

寝る時は、寝室にスマホを持ち込まないようにしている。

著者は、問題提起に対して、私たち人間が本来備えている機能を有効に働かせて、肉体的も精神的に健全に過ごしていくために、

・睡眠を優先すること

・身体をよく動かすこと

・適度なストレスに自分を晒すこと

などの対策行動を推奨している。

が、これらも既に意識して生活に取り入れているものが多かった。

では「スマホ脳」という本は何も私にもたらしてくれなかったのだろうか?

いやいやとんでもない。

「スマホ脳」という本を読んだことで、

「スマホ」に、対面コミュニケーションで得られる「気持ちよさ」を奪われてたまるものか。

という「固い決意」ができたことは私にとって遥かに大きな価値があった。

スマホを持つようになった私たちの「対面コミュニケーションの実態」

本の中で下のような研究結果が紹介されていた。

テーブルを挟んで座り、一部の人はスマホをテーブルの上に置き、それ以外の人は置かない状態で、知らない人と10分間自由に話してもらった。

その後、被験者たちに会話がどのくらい楽しかったかを尋ねてみると、視界に「スマホ」があった人たちはあまり楽しくなかった上に、相手を信用しづらく共感しにくいとも感じていたという。

他にも、ディナーの最中にメールが届くから「スマホ」をテーブルに出しておくよう指示された1500人と「スマホ」は取り出すなという指示を受けた1500人とで調査を行った。

すると食後にディナーが楽しくなかったと答えたのは「スマホ」が側にあった被験者のグループだったという。

これはすなわち「目の前にスマホを置いていると相手と一緒にいるのがつまらなくなる」ということである。

思うに「ポケットにスマホを入れている状態」でも近しい実験結果になっただろう。

なぜなら個人的に思い当たる部分が多くあるからだ。

進化の過程でそうなってしまったのだから仕方がないのだが、人間の脳はおそろしいほどに「新しいこと」が好きだ。

この本の中にもその類の記述があった。

脳には新しいことだけに反応してドーパミンを産生する細胞があり、よく知るもの、たとえば「自分の家の前の道」といったものには反応しない。

ところが、知らない顔のような新しいものを見ると、その細胞が一気に作動する。感情的になるようなものを見た場合も同じだ。

新しい情報、例えば新しい環境を渇望するドーパミン産生細胞が存在する、ということは、新しい情報を得ると脳は報酬をもらえるわけだ。

人間は新しいもの、未知のものを探しにいきたいという衝動がしっかり組み込まれた状態で生まれてくる。

新しい場所に行ってみたい」「新しい人に会ってみたい」「新しいことを体験してみたい」という欲求だ。

私たちの祖先が生きたのは、食料や資源が常に不足していた世界である。この欲求が、新たな可能性を求めて移動するよう、人間を突き動かしてきたのだろう。

つまり、脳がこのような性質を持っているため、スマホを持ち歩いている以上、対面コミュニケーションをする時において「スマホ vs 目の前の人」という戦いが常に頭の中で繰り広げられることになる。

そして残念ながら、数分数秒単位で新しい体験を運んでくるスマホに「新しい情報の量」という点で人は勝てない。

この戦い、そもそもスマホの方に圧倒的に分があると言っていい。

なぜなら、対面コミュニケーションで目の前の相手から新しい情報を得るためには、相手の話に注意を払ってしっかり聴かなければ難しいからだ。

しかしスマホは勝手に脳の大好物を持ってきてくれる。

GooglemeetやZoomを用いたオンラインの対面コミュニケーションにおいても同じく、この場合は「パソコン」がスマホの役割をきっちり担う。

脳がスマホやパソコンが持ってくる情報に釘付けで、目の前の相手にほとんど集中できていない。

これが私たちの対面コミュニケーションにおける実態だろう。

真の対面コミュニケーションは、お互いにとても気持ちがいい

2018年の秋頃だったと思うが、私はほぼ日の「糸井重里さん」が登壇されるトークイベントに参加した。

その時糸井さんが発した数々の言葉の中で、特にハッキリと覚えているものがある。

それは「会話は言葉のセックス。だって相手とわかりあえて気持ちいいじゃない?」というものだ。

私はこれ聞いた時、真に慧眼だと感じた。

思うに、対面コミュニケーションの最大の価値はここにある。

つまり、真の対面コミュニケーションというのは「とても気持ちがいい」ものなのだ。

LINEやSlackを使ったデジタルなコミュニケーションでは感じることはできず、他でも代替できない「気持ちよさ」が発生する。

仕事中の「雑談」の有無でストレス解消に違い(*1)という新型コロナ後の調査結果にある通り、「雑談」の価値が再び上がっている。

雑談は言葉に装いがなく交わしていて気持ちがいいからだろう。

そして、この「気持ちよさ」がチームの心理的安全性へと繋がっていく。

しかしセックスがそうであるように、目の前の相手に意識が向いていなく気持ちが上の空であれば、当然その気持ちよさも減じられてしまう。

対面コミュニケーションにおいて、相手に意識を向けて、相手のことを理解しようと努めれることで、この上ない「気持ちよさ」を得ることができる。

にもかかわらず、「スマホ」のせいでそれが得られなくなっているとすれば非常に勿体ない話ではないだろうか。

人類がスマホを所有するようになってもう10年になるが、真の対面コミュニケーションがもたらしてくれる「気持ちよさ」をすっかり忘れてしまったように思う。

かくいう私ももちろん例外ではなくだ。

リアルの社交が充実していないと、SNSから悪い影響を受ける

本の中にはこんな知見もあった。

ほとんどのユーザーは、ソーシャルメディアを社交に利用するのではなく、皆が何をしているかをチェックしたり、個人ブランドを構築するためのプラットフォームとして使っている。

それ以外の場所で他の人からしっかり支えられている人は、SNSを社交生活をさらに引き立てる手段、友人や知人と連絡を保つための手段として利用している。そうした人たちの多くは、良い影響を受ける。

対して、社交生活の代わりにSNSを利用する人たちは、精神状態を悪くする。

これは、

リアルの社交が充実している人は、SNSを単なる連絡の手段としてみているため、SNSから良い影響を受ける。

一方、リアルでの社交が少なく充実していない人は、SNSを社交の代替として利用しがちで、そういう人はSNSから悪い影響(嫉妬、落ち込み)を受ける、というものだ。

また、

本当の人間関係に時間を使うほど、つまり「現実に」人と会う人ほど幸福感が増していた。

一方で、フェイスブックに時間を使うほど幸福感が減っていた。

「私たちはSNSによって、自分は社交的だ、意義深い社交をしていると思いがちだ。しかしそれは現実の社交の代わりにはならない」

といった知見も見逃せなかった。

社交のほとんどがSNSの人の場合、そこには対面コミュニケーションで得られる「気持ちよさ」というのは恐らく皆無に等しい。

対面コミュニケーションをしている人でも、スマホ依存が強く「スマホ」に意識を奪われて本来得られるはずの「気持ちよさ」が得られていないとすれば、社交のほとんどをSNSでしている人と状況はそう変わらないだろう。

思うに、リアルの社交の充実とは、対面コミュニケーションによる「気持ちよさ」を感じ取れているどうかに依る。

そして、「気持ちよさ」を感じ得る真の対面コミュニケーションを取ろうと努力していくことこそ、デジタル空間での社交を健全なものに変えていくはずである。

「気持ちよさ」の源泉は「励まし」にあり

「アイデアのちから(*2)」という名著で知られるハース兄弟は「スイッチ!」という本の中で「励ましこそ人間関係をよくする」と述べている。

相手が「人を喜ばせるタイプ」なのか。

「組織を導くタイプ」なのか。

「遠回しな攻撃性を持ったリーダー」なのか。

といった「性格タイプ」が分かれば人間関係がよくなるのではなく、

「相手の進歩」に気付き「相手を励ます」ことこそが人間関係をよくするということだ。

思うに、対面コミュニケーションで得られる「気持ちよさ」の源泉はこの「励まし」にある。

がしかし、ハース兄弟はここに潜む「問題」も同時に指摘している。

それは大半の人々が「励ますのが下手」ということである。

相手の進歩に気付き、励ましたり褒めたりするには、つねに周囲に目を配り、明るい兆しを探さなければならない。

問題を見つけるのは簡単だが、進歩に気づくのは遥かに難しい。

つまり「励ます」というのは容易いことではないのだ。

私たちはただでさえ励ますのが下手な上に、今日ではしょっちゅうスマホに注意を奪われているような状況だ。

こんな状態で「励ます」をしていこうなんぞ、以ての外なのだろう。

大まかにはなるが、以上のようなことから私は「スマホ脳」を読んで固い決意をした。

それが、「スマホ」に、対面コミュニケーションで得られる「気持ちよさ」を奪われてたまるものか、というものだ。

リアルもオンラインも対面している時は、スマホの電源はできる限りオフにし、ポケットではなくバッグに入れて遠のけ、目の前の相手に意識を向け、相手の話に関心を持つ。

そして、相手の小さな進歩も見逃さず「励ます」ことができるように、全力を尽したいと思う。

これが相手のためにも自分のためにも、今とても大切なことだと思うから。

*1 新型コロナウイルス禍における働く個人の意識調査

*2 アイデアのちから

Photo by Dmitriy Be on Unsplash

【著者プロフィール】

タナカ シンゴ

今推しの漫画は、ジャンププラスで連載中の「ダンダダン」です。「ターボババア」という現代妖怪に心とアソコを奪われそうです。

理工学部卒業後、東京のマーケティングファームに7年勤務。営業、リサーチ、コンサル、商品開発、集客、マネジメントの現場経験を積みジョブチェンジ。

現在は一人会社との複業で、中小オーナー企業や地方自治体をクライアントに商品開発と集客のプロジェクト運営などを行っています。

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◯noteマガジンで「事業の役に立つネームコレクション」を運営中

○Podcastで白湯専門番組「白湯FM」を配信中

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