目の細かい木の年輪のように成長したい。
今日は関わっている仕事の側面から思うことを書いてみようかと思います。
僕は今のところ、仕事のことをSNSやブログで普段ほとんど発信しないのでレアです(笑)そのせいか「何やっているんですか?」と聞かれることも多いです。
今日のブログは、この質問に対しての答えに少しはなるかもしれません。
これからは森林資源を活かす時代
現在、関わっている仕事の一つに「木」があります。場所は埼玉県の西川林業地域です。実は2016年から関わっているのでかれこれもうすぐ3年が経ちます。
キッカケは日本の森林が抱えている諸問題を知ったこと。この辺はググれば色々と出てくるので調べてみてください。大きく分けて、経済と環境保全に問題があってそれぞれ結構根深いです。
日本という島国は国土の7割が森林です。ざっくりとスコープして言うと、この7割の森林を殺してきたのが今までで、活かすのがこれからの時代だと思っています。
ちなみに、来年から「森林環境譲与税」という市町村単位で降りる補助金があることをご存知でしょうか。補助金の額は私有林人工林面積・林業就業者数・人口の割合の合計で決まるものです。林業が主要産業の市町村に分配が多くなるのと同時に、人口が多い市町村にも分配が多くなります。
東京23区は分配が多いけど、森林がほぼ無い状態という、とても可笑しな事態になりつつも、どうやって「森林のための」補助金を使えば良いんだろう?というのは近いうちどの自治体も悩むのだと思います。これも国が考えた「活かす」ですよね。
活かすという文脈で、よく聞く事例は岡山県の西粟倉村。
参考記事:森林とローカルベンチャーで蘇る村──若者の移住にわく西粟倉村の現在
「西粟倉村は素晴らしい!」と言う人も知っているし「西粟倉村はダメだ!」と言う人も知っているので何が正しいのかは今のところよく分かっていませんが、とにかく良く聞きます。
あとは、長野県根羽村の「トータル林業」も最近耳にするようになりました。「いまだかつてない森 Never forest」と言うちょっとした駄洒落混じりで好意が持てますが、実際のところ何をどうしているのか分かってはいないのでこの目でみてみたい案件の一つです。
こんな感じで「活かそう」としている自治体や地域は増えているわけですね。これらの背景には石油などの化石燃料の限界や、資本主義の停滞など複数の事案が複雑に絡みあっていますが、ここではこの話をするつもりはありません。
僕は今の自分が知っている情報の中で、自分が信じれる資源の利活用の方法で、森林や木に向き合いいくつかの事業化をしています。林業家の育成やそのコミュニティ運営だったり、木材ビジネスの開発だったり、いくつかあります。
一つ一つは小さい事業ですが、掛け算するとそれなりに独自性があるんじゃないかなあと思ったりします。今朝、見かけたツイートを貼り付けていますがビジネスとしての狙いはこんなイメージでやっています。
大きなブルーオーシャンは見つけるのが難しい上、時間と共に大きなレッドオーシャンに変わって行く。おいしい場所には強くて大きな会社がどんどん飛び込んで来るから。狙うべきは小さなブルーオーシャン。小さいけれども利益率の高いビジネス。それを複数組み合わせれば、最強の中小企業が出来上がる。
— 安田佳生 (@yasuda_yoshio) October 31, 2018
ゆっくりと時間をかけて成長した木は年輪が細かい
そんなわけで木と触れることがこの数年で急激に増えました。
木には年輪があります。
年輪をみれば「木の年齢がわかる」と言われていますが、それは年輪というのは一年に一本刻まれていくからです。だから樹齢(年齢)がわかるんですね。
四季がはっきりしている日本では、色の薄いところは春から夏にかけて作られ、色の濃いところは夏から秋にかけて作られ、冬は成長が止まります。
そして、新しい年輪は外側に、外側にできていきます。
ご存知の方もいるかもしれませんが、ゆっくりと時間をかけて育ってきた木は年輪も細かくなるので、他と比べて固く締まっていて、年輪の見た目も均等に揃っていて、とても美しいです。当然、材価も高いです。
ちなみに、日本有数の優良材を生産する奈良県吉野の市場には、この手の材がごろごろと転がっています(上の写真)。年輪を数えると、200個(=200歳)とか普通なのでそれはもう仰天です。関東や東北ではこんな優良材はなかなか見ることができません。
木は嘘をつけない
このように年輪を見ればその木が何歳で、どのように人生を過ごしてきたかが分かります。
知識の無い人は「木は太ければいい」と思いがちですが、それは大きな間違いです。
いくら太くたって急激に成長して、若いうちにそのサイズになった木もあれば、年輪幅がバラバラで十分な管理をされてこなかったものもあります。
これらは全部木を伐ってその断面をみれば一目瞭然です。つまり、木は嘘がつけないということです。
どんなに太く実っていても伐れば本物かどうかすぐに分かる。年輪に出る。木は嘘をつけない。木を見る度に、インターフェースだけでは物事の本質は分からないことが刷り込まれていく。
— タナカシンゴ (@Shingo_tna) October 29, 2018
そして、見た目だけでは物事の本質がわからないことも木は教えてくれます。
人間の成長も木と同じ
年輪と人の成長はよく似ている気がします。
人間は、年輪のように目に見える形では残っていきませんが、1日1日歩んできて今がありますよね。色濃く密に刻まれた年輪(=人間でいうと経験)は自分の未来でとても重要な役割を果たしてくれるのでしょう。
細かな年輪のようにゆっくりとしっかり濃く、密に成長していったならば、固くしっかりとした「芯」ができあがると思うんです。
年輪をみていると、たくさん成長した年もあれば、ゆっくりとしか成長しなかった年があることも分かります。人間もそうですよね。
そういう浮き沈みや振り子の中で、自分という存在がつくられていくんだと思います。
未来に、立派な木のようにどっしりとした、自分という芯・自分という根っこをもった人間になれるように毎日を大切に過ごしたい。木を見るたびにそう思うんです。
さいごに
奈良県吉野町には、Airbnbのジョー・ケビア氏と建築家の長谷川豪氏がコラボして作った「吉野杉の家」があります。
地域の様々な人がホストになって管理しているゲストハウスで、1Fのコミュニティスペースを通らないと2Fのゲストハウスにいけない仕組みになっていて、これを利用するひとが必然的に地域との関係ができるようになっています。
実はこれ2016年に豊洲で行われていた「HOUSEVISION」に展示されていたもので、それがそのまま移築されたんですよね。こういうコンセプトも個人的にグッときました。
地域のリソース(木材、人材)をふんだんに使い外貨を獲得するこの試みはとても面白いなと思います。次回、吉野を訪れた際には使ってみたい場所の一つです。
それでは今日はこの辺で!