田中 新吾

「素手でトイレ掃除」をする運動を広げた創業者の本にあった、「掃除を続ける極意」を読んで、確信に変わったこと。

タナカ シンゴ

本題に入る前に、私の「習慣」について少し話をさせてほしい。

私には「メモする」という習慣がある。

このように言うと「メモなら私もしている」と言う人も出てくるだろう。

ところが、そういう人に向かって、私の「メモする」の中身をお話すると驚かれることが意外と多い。

例えばこんな感じだ。

メモするための「ペン」は、ぺんてる株式会社の「エナージェル」の「0.5mm」を使用している。

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その理由は、持ち心地・書き心地が良く、字が綺麗に書ける、書いた字が読みやすいなど、パフォーマンスが最高だからだ。

様々なペンを買い試して、ようやくこのペンまで辿り着くことができた。

そして「オトナへ進んでいく」という商品のキャッチコピーをお借りして、このエナージェルというペンには「オトナペン」という独自の名前を付けている。

「オトナペン」と名付けることで、「オトナの字を書こう」という意識づけをすること、他のペンとの差を付け使用頻度をあげることなどが狙いだ。

しかも、ドラえもんの「ひみつ道具」のような名で、愛着も湧く。

肝心な「メモ帳」は二つのメモ帳を使い分けている。

一つ目がコクヨの「測量野帳」。

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もう一つが、どっしりとした重厚感のある表紙が特徴的な「ツバメノート」だ。

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ペン同様に、測量野帳に関しては「二軍ノート」、つばめノートに関しては「一軍ノート」という名前を付けている。

これらの使い分けについてざっくり言うと。

なんでもかんでもとにかくメモするのが「二軍ノート」で、二軍ノートの中から選び抜かれたアイデアや知見が、「一軍ノート」に整理された状態になって記されている感じだ。

ノートの名付けと使い方は、クリエイターでブルーパドルという会社の代表の「佐藤ネジ」さんの知見を参考にしている。

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そして、数々の研究結果から、記憶は「思い出した時に定着する」と言われていることから、「二軍ノート」にはこの役割を担わせている。

要するに、「メモを見返すためのメモ帳」が「二軍ノート」ということだ。

常日頃、持ち歩いているメモ帳は「二軍ノート」で、一軍ノートはデスクの所定の位置に置いてある。

当然、二軍ノートを取り出すよりも、スマホの方が早い場合には「スマホ」を用いる。この時は今のところ「エバーノート」を使っている。

メモする場所はこの他にも、

思考の固着化を防ぐ、記憶の定着化、気分転換になるなどを狙って、机の上の「メモパッド」、机の脇に「ホワイトボード」、ベッドの横に「落書き帳」などを設置している。

そして、仕事をはじめる前に、頭の中にあることを「二軍ノート」にとにかく書き出し、二軍ノートから一軍ノートへの選抜作業も行う。

その他の時間帯でメモしておこうと思ったものは、生活導線に配置されているツールを使ってメモしておき、あとで二軍ノートに移行させる。

とまあこんな具合なのだが、このような話をすると「メモする」という小さな習慣でも「工夫をしながら取り組んでいる」という点に意外と驚かれる。

ただ、今の私からしてみるとこれは当たり前のことで、どんな習慣も取り組みでもそうだと思うが、「工夫をしながら改善をしていかないことには、習慣として定着することはない」と思っている。

「心が磨かれるから」といって、「素手でトイレ掃除」をしている場合ではない

話は変わるが、今「素手でトイレ掃除」をすることに非難が集中している。

それもそのはず。

糞便」から「ウィルス感染」する可能性が非常に高いからだ。

「下水道の水をPCR検査すれば、その地域の住民を個々にPCR検査しなくても、感染状況をいち早く把握することができる」

というような「海外の医学誌の内容」が、日本でも紹介されているように、排便は咳や呼気とともにウイルスが拡散する「主要なルート」だと言われている。

参照:新型コロナ、トイレの「糞口感染」対策が盲点…ウイルス含む糞便、手指を介して口に

こうなってしまっては非難が集中しても致し方がない。

しかし、「素手でトイレ掃除」が「劇的な成果」をあげてきたのも事実だ。

それは、この運動を始めたことで有名な、カー用品店イエローハットの創業者「鍵山秀三郎氏」の本に書かれている。

私は去年、この本をkindle Unlimitedで読んだばかりだった。

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では「素手でトイレ掃除」の「劇的な成果」とは一体どのようなものか?

例えば。

・社長の、指先を便器の裏にねじ込み、汚物を素手で落とすトイレ掃除に圧倒されたやんちゃな社員達は、それからトイレを汚すことができなくなり、やがて物を大事にし、社用車を大事にし、会社を大事にする動きにつながっていった。

・入学した生徒の半分が退学する荒れた学校で立て直しのために、生徒の有志を募って素手でトイレ掃除を行った結果、劇的に校風が改善した。

・素手でトイレ掃除に取り組むようになって、わずか2年も立たないうちにそれまで三億円の赤字だった病院の経営が、5億円の黒字になった。

などである。

素手でトイレ掃除」はこのようにして、各地で実績を上げながらムーブメントとして社会に広がっていったのだ。

実際に「素手でトイレ掃除」をしたことのない私には、想像を巡らせるしかないのだが、思うにこの本質は、

便器の裏まで素手をねじ込めるような人でなければ、汚れの「本当の所在」、すなわち「問題の本質」を探り当てることなどはできない

ということなのかもしれない。

このように考えると、「素手でトイレ掃除」に価値を感じ、賛美する人たちが一定数いることや、それによって人が変わり、劇的な成果が上がるのも理解できなくはない。

知るのがもっと早ければ私も実際に経験してみたかった。

これは偽りのない「本心」である。

だがしかし、時代は変わった。

いくらその活動に価値があって、賞賛されてきたものであったとしても、今すぐに「適切な対策」を取るべきだ。

今まで示してきた価値が減じられてしまうのは心苦しいことではあるが、それが「社会的責任」というものなのだろう。

もう「心が磨かれるから」といって、「密」になって「感染」の可能性が高い「素手でトイレ掃除」をしている場合ではない。

思うに、今は、トイレ掃除をより衛生的にやれるか、または、そもそも汚れない便器を開発するか、といった点に創意工夫が求められているのではないだろうか。

しかし。

そうは言っても、鍵山氏が人生をかけた「掃除」からは、学ばされるところが非常に多かったのは本当のことだ。

「掃除の基本」が、掃除を続けるための極意

私にとって「遥かに大きな発見」は、鍵山氏が提唱する「掃除を続けるための極意」にあった。

鍵山氏はそれを、継続して掃除をする習慣を定着させるための「掃除の基本」として本の中で紹介している。

では、順を追って見ていこう。

①掃除道具をキチンと揃える

まず、鍵山氏は、掃除の大切さを認識されている人であっても「案外掃除の道具には無頓着な人が多い」と述べている。

汚れた道具がそのまま放置してあったり、使用不能な道具が手放されないままいつまでも置かれていたり、必要な道具が必要数揃っていないなど、このような状態でいくら掃除を進めても掃除は定着しないというのが氏の考えだ。

例えば、外回り用の掃除道具の保管場所は、道具一つ一つに吊り下げる用に同じ種類のロープが付いており、吊り下げた時に見た目的にも美しくなるように長さが調整されているという。

さらに、道具それそれに「名前を付ける」ことを推奨している。

それは、名前を付けることで、「紛失」を未然に防ぐ効果があるからだという。

でも、名前を付ける効果はこれだけではない。

名前をつけるということは、「道具に命を吹き込む」という意味もあり、命が吹き込まれた道具には血が通う。

そうすると、物は生きているという実感が沸き上がり、物を大切にするようになり、道具に愛着が湧いてくる。

結果として、道具を乱雑に扱わなくなるのだという。

②掃除道具の置き場所を決める

道具が揃った次はそれらの「置き場所」を決める。

ちなみに鍵山氏は、「少し広めの明るい場所」を道具の置き場にするのを推奨している。

その理由は、出来るだけ誰からでも見えるような場所に置いておくことで、汚くなりがちな掃除道具の置き場所が、綺麗な状態で維持されるようになるからだ。

確かに、一般的には、掃除道具の置き場所は社屋の裏側や階段の下など、見えにくいところや薄暗いところに隠すように設置してある場合が多いが、それでは「ダメ」なのだ。

そして、置き場所の「整理整頓」も重要な要素だとして説いている。

整理整頓とはつまり、必要なものをひと目で「誰でもわかる」「誰でもすぐに使える」「誰でもすぐに戻せる」仕組みにすること。

いくら言葉で注意しても、細かなルールを作っても、掃除道具置き場は乱れやすいもの。

だからこそ、注意やルールで守れないことは「乱れない仕組みを作る以外にない」というのが鍵山氏の考えだ。

イエローハット社の場合は、車用のカッティングシートなどを用いた「色別整理」と「看板表示」で乱れない仕組みが作られている。

掃除道具の種類と整理整頓されたこだわりの掃除道具の置き場所は、見た人を感動させる場所にもなっているそうだ。

③工夫しながら掃除をする

そして「掃除の基本」の最後に「工夫をすること」を挙げている。

鍵山氏は、掃除が続かない大きな原因に「工夫がされていない」ことを見出した。

その上で、掃除を「絶えず工夫、改善して進歩させる」ことを推奨している。

少しでも進歩すれば、楽しくなり、楽しくなれば、続けたくなる。

一方で、「進歩が目に見えないものは続けられない」というのは当然のことだと鍵山氏は言う。

例えば、イエローハット社では、「風のない日」と「風の強い日」で、掃除の仕方に工夫が見られる。

「風のない日」はゴミを掃き集めておいて、あとからちり取りで取ればよいため、ちり取りは「四人に一つ」くらいの割合で十分。

風の吹いていない穏やかな日は、なるべく広範囲を掃き「ちり取りを使う回数を減らすようにしているという。

一方、「風の強い日」は、掃きながらゴミを集めなければ飛び散ってしまうため、一人にちり取り一つが基本だ。

また「範囲を限定して掃除を徹底する」という心がけも工夫の一つである。

例えば、タイル1枚をまず綺麗にする、あるいは廊下を1メートルづつ区切って徹底して磨くというというように掃除をしていく。

そうすることで、キレイなところと汚いところの差がはっきりとしてくるため、「汚いところを放っておけなくなる」のだという。

そして「道具の工夫」も忘れてはならない。

鍵山氏が、不便を感じた時点で「億劫がらず使いやすい道具に替える工夫も大事」と言うのは、それが掃除を継続するエネルギーに変わるからだという。

以上、3つの「掃除の基本」が、

鍵山氏が提唱する「掃除を続けるための極意」だ。

「努力の正解」を見つけることが大切

この「掃除の基本」が私にとって遥かに大きな発見となったのは、

冒頭申し上げたような「ある行為を続けるために取り組んでいる、あるいは意識している」ことと「多くの類似点」を見出すことができたからである。

・道具をきちんと揃える

・名前を付ける

・整理整頓をする

・工夫して、改善して、進歩し続ける

などは、声に出して「そうそう」と共感せざるを得なかった。

私はこのような方法で、「メモする」こと以外にも習慣にできているものがあり、この本の初版は「2005年8月」のことだが、その内容は非常にエッセンシャルであるという実感を持っている。

何かを続ける上で、最も重要なことは「アイデンティティである」ことは、以前に別の記事で書いているが、どんなにアイデンティティと紐づいていても「間違った努力」をしていては、続くものも続くかない。

よって習慣にならない。

はっきり言って、努力は「嘘をつかない」は幻想だ。

努力は、無駄にはならないが、嘘を私たちに平気でつき、平気で裏切る

フィギュアスケーターの羽生結弦選手は、以前、カナダにあるクリケットクラブの庭で行われたインタビューでこう答えている。

「努力が嘘をつかないんだったら、やっぱり練習量を1番している人が毎回、毎回、優勝できるでしょう。

オリンピックでもどんなに努力している人でも勝てない時は勝てないんだなと思った。

そういう意味で努力っていうものは嘘をつく。

努力の正解を見つけることが大切

逆に本当に若い選手が勢いで取っちゃうってことも。」

私は、今まで仮説検証を繰り返しながら、少しづつ手応え(努力の正解)を得てきたわけだが、鍵山氏の「掃除の基本」を知り、それが今は「確信」に変わっている。

つまり、鍵山氏は、私にとっての「努力の正解」を確固たるものとして、強く補強してくれた、ということである。

残念ながら「素手でトイレ掃除」は時代にはもう合わなくなってしまった。

がしかし、鍵山氏が提唱する「掃除を続けるための極意」すなわち「掃除の基本」は、時代を超えていく。

なぜならそれが「物事を続けるための本質的なメソッド」となっているからだ。

私は少なくともそう思う。

Photo by Giorgio Trovato on Unsplash

【著者プロフィール】

田中 新吾

プロジェクト推進支援のハグルマニ代表。プロジェクトデザイナー兼コミュニケーションデザイナー。タスクシュート認定トレーナー。X・note ではプロジェクトの推進に役立つコンテンツを発信。Webメディア(http://ranger.blog)管理人。

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