田中 新吾

「すべての仕事に修正が入る」という考え方でスケジュールを組むからこそ「納期」に間に合う。

10年以上仕事をしてきた中でよく分かったことは仕事は「納期」がウルトラ重要ということである。

「納期」というのは言い換えると「約束」であるから、「納期を破る」ということは「私は嘘つきです」「私は泥棒です」と公言しているに等しい。

嘘つきや泥棒を信用する人がいないように納期を守らない人も同じく信用されない。

したがって、信用がない人には仕事が回ってこないという運命が待っている。

こういうことをこれまでの仕事生活を通して散々見てきた。

だからこそ「納期は厳守しよう」と強く思うわけだが、実際に納期を守るために私が個人的にとても大切にしている考え方がある。

それが、

「すべての仕事に修正が入る」という考え方でスケジュールを組むからこそ「納期」に間に合う。

というものだ。

私の中で貴重な失敗経験となっていること

昔の話になるが、私が前職マーケティングファームにいた時の話だ。

私はプロジェクトを推進していく際に、多くの「パートナー会社(外部からプロジェクトを手伝ってくれる会社)」との関係を築いた。

同時並行で動いていく多くのプロジェクトの目的を果たすためには、パートナー会社の発掘と関係構築はとても重要な仕事だった。

そんな中、私が入社して2年目半ばになった頃合いにご縁があったパートナー会社のAさんの話である。

今でもよく覚えているがAさんは納期を守らない人だった。

とあるプロモーションプロジェクトに関わってもらっていたAさんは、私が依頼していた納品物を約束の期日当日になって提出してきた。

Aさんの納品物を急いで確認すると、それは私が求めるクオリティには到達しておらず、結局そこから何度か修正のラリーが続いた。

その結果として、私はクライアントと握っていたスケジュールに遅れを生じさせてしまい先方に多大な迷惑をかけてしまったのだ。

Aさんは納期に間に合わせたつもりだったかもしれないがそこに内容は伴っていなかった。

この一件が私の中で大変貴重な失敗経験となっているのだ。

そして、このことが私に大きく作用して、誰かに仕事を依頼する際は「かならず修正が入る」という前提で真の締め切りラインよりも数日間の余裕を持った納期を伝えようという意識になった。

その一方、私が誰かに頼まれる仕事があった場合は、相手から提示された納期よりも数日前に納品をするようにスケジュールして進めるようにしてきた。

これらを実行してきて思うのは、やはり一発でOKとなる仕事はというのはなく、実際多かれ少なかれどんな仕事にも修正は入った。

だがAさんの件があったおかげで私の仕事が納期に遅れるようなことはほぼなかった。

どんなにデキる人の仕事であっても修正は必ず入る

仕事とはそういうものだと今の私は思っている。

Windows95の開発に携わった伝説のプログラマー

米マイクロソフト本社でWindows95の開発に携わり伝説のプログラマーと称される「中島聡氏」という人のことを私が知ったのは2018年頃だった。

なぜ、あなたの仕事は終わらないのか」という本から中島氏の仕事への姿勢を知った。

本書に書かれていることはいずれもプログラムの話に限らず、一般的な仕事にも応用することができる抽象的な概念で大変参考になるものばかりだ。

特に私の目を引いたのが「すべての仕事は必ずやり直しになる」という項目。

これがまさに我が意を得たりの内容で、

「仕事というのは最初の狙い通りにいく方が稀」

「スマホのアプリも、Windows95も、明日のプレゼン資料も、どうせやり直しになるのだからまずはさっさと全体像を描いてしまうのがいい」

中島氏はこのように述べている。

「さっさと全体像を作ること」を「プロトタイプ(試作品)を作る」と称しているが、実にプログラマーらしい説明の仕方である。

加えて、スケジューリングの段階から「締め切りは絶対に守るもの」という前提でのぞむことが仕事は大切で、そうすることで予定を立てる段階から真剣なやり方を取らざるを得なくなる、とも述べていた。

真剣なやり方とは以下のようなものである。

例えば、上司から「これ10日でやっておいて」という仕事が降ってき場合、

①「まずはどのくらいかかるかやってみるので、スケジュールの割り出しのために2日ください」と答えて仕事に取り掛かる(見積もりをするための調査期間をもらう)

②その2日をロケットスタート期間として使い、2日で「ほぼ完成」まで持っていく

③万が一、その2日で「ほぼ完成」まで持っていけなかった場合、これを「危機的な状況」と認識してスケジュールの見直しを交渉する

というものだ。

いやはや凄まじい。

初めて読んだ時の私の正直な感想だった。

私よりも遥かに上のレベルで納期を捉え、スケジューリングをし、仕事を終わらせていてもう感銘を受けるほかなかった。

この本を読んで以来私は中島氏の一人のファンとなり、最近では彼のnoteでも勉強させてもらっている。

なぜ「修正は入らない」と思ってしまうのか?

話は変わるが、飛行中の機体が予定されたルート上を飛んでいるのは飛行時間全体の「ゼロパーセント」だそうだ。

80パーセントくらいは予定通りに飛んでいるだろうと思っていたため、この事実を知った私は物凄く驚いた。

要するに、飛行機というのはまったく予定通りには飛ばない、ということである。

予定通りに飛ばない飛行機において、重要な役割を占めているのが飛行機の翼の淵のあたりについている「補助翼」だ。

補助翼というのは飛行中しきりに動いている。

しきりに動くことで飛行ルートを絶えず修正しているのだ。

自動操縦装置が、毎秒何回も予定位置と現在位置のズレを感知し、舵の役目を果たす翼に修正指示を出しているということだが、これが小型飛行機の操縦になるとよりリアルに体感できるという。

小型飛行機ではこういう微調整は自ら行うことになり、1秒でも操縦桿を放置すれば機体はあれよあれよと飛行ルートを外れてしまう。

考えてみれば、自動車だって同じだ。

一直線に延びる高速道路を運転している時でさえ、ハンドルから手を離せば車は車線から外れ事故になりかねない。

飛行機や自動車に限らず、仕事もそもそも人生も、私たちのあらゆる活動が計画通りに運ぶことはまずない。

例外的に、修正なしで計画が実現できたとしてもそれはまったくの偶然と思った方が身のためになる。

しかし、それでも「修正が入らない」と思ってしまったり、修正に対して抵抗を感じてしまう自分がいるのはなぜだろうか?

それは、どんな些細な修正も「計画が間違っていたことの証拠のように思えてしまう」からである。

その証拠を見て計画が間違っていたと落ち込み、自分は無能な人間だと感じてしまう。

こういった仕組みで「修正」に対して私たちは抵抗を感じ「修正などはない」と思ってしまうのだろう。

ある意味、人間の本能的に修正に対して抵抗を感じてしまうのであれば、自分の耳にタコがデキるくらい常に修正にこそ価値があるということを言い続けるべきなのかもしれない。

大事なのは完璧な計画を立てることではなく、状況にあわせて何度でも計画に修正を加えることだと。

<参考文献>

人生において掛け替えのない経験

話は戻るが、実はAさんとの話には続きがある。

あの一件は失敗経験として私自身の学びになっただけでなく、Aさん自身にとっての学びにもなったようなのだ。

例の案件がひと段落ついた頃、私はAさんから電話で連絡をもらった。

「今回はご迷惑をおかけして本当にすみませんでした」

「今後は修正が入る前提で納期よりも前にお見せできるようにスケジュールしていきますので、できればまたお仕事ご一緒させてください。よろしくお願いします」

うろ覚えだが確かこのような内容だったと思う。

そして、その後Aさんと再び仕事をする機会があった時には、Aさんは有言実行で修正が入る前提で仕事を進めてくれ、本当の納期までに「最高の納品物」に仕上げてくれた。

それによって私はAさんを信用するようになり、その後も度々Aさんを頼るようになったという話である。

これは私の人生において掛け替えのない経験となっている。

繰り返しになるが、仕事というのは「納期」がウルトラ重要である。

納期という約束を守ることが信用を作るからだ。

しかし、ウルトラ重要だからといって、とにかく間に合わせればいいというわけではなく、相手の要望を満たす形で納期に間に合わせなければまったく意味がない。

そして「あらゆる仕事は修正が入る」ということも踏まえると、取るべきアクションというのは必然的に決まってくると私は思う。

「すべての仕事に修正が入る」という考え方でスケジュールを組むからこそ「納期」に間に合う。

これはまだまだ続く仕事人生において引き続き大切にしていきたい考え方だ。

Photo by Austin Distel on Unsplash

【著者プロフィール】

田中 新吾

この考え方で仕事を進めていると「納期」に追われる、という感覚も薄まると思っています。

中小企業、中小自治体、個人の「プロジェクトサクセス」を支援しています。人生のミッションは「プロジェクトという挑戦」を応援すること。座右の銘は「Life is Projects」。自称ネーミングマニア。

詳しいプロフィールはHTML名刺をご覧ください。

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