田中 新吾

ChatGPTが普及した社会において「賢いと見なされる人」について考えた。

今年に入ってから生成系AI「ChatGPT」に関連した話題が爆増している中、個人的に特に目に留まったtogetterがあった。

ChatGPTのせいで子供たちがバカになるのでは?という疑問→未来では必要とされる〝賢さ〟の性質がたぶん変わる

もしかすると目にした人もいるかもしれないが、以下にダイジェストして記載したい。

「ChatGPTのせいで子供たちがバカになるのでは?」という疑問に対しては、未来では必要とされる「賢さ」の性質がたぶん変わるという予想。

というのも、ベストセラー本「銃・病原菌・鉄」で、ジャレド・ダイヤモンドは「パプアニューギニアの先住民は別にバカじゃない」という話をしている。

先住民たちはハーバード大学には入れないかも知れないが、自分が暮らす森の詳細な地図を脳内で作っているし動物の痕跡から狩りの計画を立てて実行することができる。

先住民たちは「森の中での生活」を完璧にこなすために脳を使っている。パプアニューギニアの森の中では「微積分の問題」が解けても「賢い」ということにはならない。獲物の将来の位置を予測できるほうがずっと重要で賢い。

我々現代の日本人は、衣食住をお金で満たすことができる。したがって、パプアニューギニアの先住民のように「森で生きるための賢さ」は必要がない。

同じように、現代では「賢い」と見なされるために必要な能力が、生成系AIが普及した未来では不要になっているかもしれなくて、もっと別の能力が必要なのかもしれない。

いかが思われるだろうか?

かくいう私はこの内容に結構深く考えさせられた。

そして、この発信者の述べている通り、ChatGPTが普及した未来においては、たしかに賢さの性質が変わりそうだと思うに至った。

では一体、これからの時代に「賢さ」とはどんなものになるのだろうか?

ChatGPTが普及した社会において「賢いと見なされる人」とはどんな人なのだろうか?

ChatGPTは「IQと関連する能力」をとんでもなくサポートしてくれる

まず大前提として、前出のパプアニューギニアの話のように、時代や文化によって「賢さ」は変わり、それによって「賢いと見なされる人」も大きく変わる。

私たち人類の歴史を辿ると、哲学的な思考ができる人や、知識を多く獲得している人が賢い人と見なされていた時代や文化があり、日本の江戸時代においては、学問を積み重ねることや道徳性を持ち合わせる人が賢いと見なされていた、と言われていたりする。

当時を生きていないため実際のところは分からないが。

そして、近代化が進む中で、経済発展にかかる知識の習得や技術の獲得が賢さへと変わっていき、現代では情報化社会やグローバル化が強く進み、賢さの性質も多様化しているといった具合だろう。

そんな現代における「賢さ」の一つは「IQ」と言っていいだろう。

IQとは「知能指数」を意味する言葉で「Intelligence Quotient」の略称。

すでにご存知の方も多い概念だ。

厚生労働省のサイトによれば「単に学習で覚えた知識や学力ではなく、様々な状況や環境に合理的に対処していくための土台となる能力を知能と捉え、それをわかりやすく数値化したもの」とある。*1

IQは知能検査によって計測され、平均値は90〜109。

IQが高いと呼ばれる人は110以上、130を超えると極めて高いと見なされる。

このように数値化される賢さがIQだ。

IQが高い人の特徴としては、記憶力が高い、論理的思考力が高い、情報処理能力が高い、好奇心が旺盛である、といったものが挙がる。

ではこれに対してChatGPTはどのように影響してくるのか?

ChatGPTのことは、ChatGPTに聞いてみるのが最も適当だと思ったので尋ねてみたところ、以下の出力を得ることができた。

ChatGPTは、人間の知能指数(IQ)を直接的に向上させるわけではありませんが、以下のような方法でIQと関連する能力をサポートすることができます。

問題解決能力: ChatGPTは、様々な問題に対して解決策やアプローチ方法を提案できます。これにより、人間が問題解決スキルを向上させる手助けをすることができます。

論理的思考力: ChatGPTは、データや情報を分析し、論理的な結論を導き出す能力があります。これにより、人間が論理的思考を磨くのに役立つ情報やアドバイスを提供できます。

情報収集力: ChatGPTは、インターネット上の情報を迅速に収集し整理する能力があります。そのため、人間が知識を増やし、情報を効果的に活用する力をサポートできます。

言語能力: ChatGPTは、言語の理解と生成に優れており、文法や語彙に関する質問に答えることができます。これにより、人間が言語能力を向上させる手助けをすることができます。

学習サポート: ChatGPTは、様々な分野の知識を持っているため、学習のサポートとして利用することができます。疑問に答えるだけでなく、学習方法や資料の提案など、学習プロセスをサポートすることができます。

クリエイティブ思考: ChatGPTは、ある程度の創造力を発揮できます。これにより、人間がアイデアを広げるためのインスピレーションや新しい視点を提供できます。

ChatGPTをうまく活用することで、人間が知能に関連する能力を向上させるためのサポートを提供できます。しかし、最終的には、人間自身が努力し、学ぶことでIQを向上させる必要があります。

数ヶ月の間触ってきてこの内容には確かに納得がいく。

能力によりサポートの割合はバラつく感じはするが、それでも5割〜8割くらいの実感だ。

とんでもない業務アシスタントが生まれてしまった。

言い換えると、IQと関連する種々の能力はこれまでほど人間本人が身につけなくてもよくなってきている、ということにもなる。

ChatGPTの力を上手く使える、上手く引き出せる」という前提ではあるが、現時点のイノベーションの尋常じゃない速度を考えると、多くの人が苦なく恩恵を受けられるようになるのも本当に時間の問題なのではないだろうか?

ChatGPTは「SQと関連する能力」も結構サポートしてくれる

そして現代においては「SQ」も賢さの一つだと言われている。

SQとは「Social Intelligence Quotient」の略称で、日本語では「社会的知能指数」などと呼ばれる。

SQは、アメリカの心理学者ダニエル・ゴールマンが2008年に、それ以前にあったEQ(感情知能指数)を進化させ「他者と関わるときに発揮される社会性や対人能力」として提唱した。*2

クイーンズランド大の心理教授、ウィリアムフォンヒッペル氏は、他者の考えていることを類推し、理解し、対応する人間の能力のことを「社会的知性」と呼んでいるがこれはまさしくSQのこと。

そして驚くのは、ヒッペル氏が「社会的知性こそがわたしたち人間の知的馬力であり、IQはSQの副産物である」と主張している点である。

過去一世紀の研究が教えてくれたのは、IQがわたしたち人間の知的馬力であり、社会的知性はより大きな知的能力の集まりのほんの一部か派生物であるということだった。

しかしながら、ここまで説明してきたような新たな研究の結果は、その反対が事実であることを示している

──社会的知性こそがわたしたちの知的馬力であり、複雑な問題を解く能力(抽象的思考力をもとに測るIQ)は、進化した社会的能力が偶然生み出したたんなる派生物なのかもしれない。

つまり、社会脳仮説が正しいとすれば、IQのほうが社会的知性の副産物であるということになる。

さらに、社会的知性がより幅広い知能を象徴するものだと考えると、IQの高さが必ずしも仕事の成功につながらない理由も明らかになってくる。

そんなSQに関連する能力の筆頭格は「コミュニケーション能力」になるわけだが、ここにChatGPTはどんな風に影響してくるのだろうか?

これもIQの時と同様、ChatGPTに尋ねてみた。

ChatGPTは、人間の社会的知性(SQ)を直接的に向上させるわけではありませんが、以下のような方法でSQと関連する能力をサポートすることができます。

コミュニケーション能力: ChatGPTは自然言語処理技術を活用し、人間と効果的なコミュニケーションを行うことができます。これにより、人間がコミュニケーションスキルを練習したり、改善するためのフィードバックを提供できます。

相互理解: ChatGPTは、異なる文化や価値観に関する情報を提供することができます。これにより、人間が他者との相互理解を深め、より円滑な人間関係を築くための知識を得ることができます。

感情認識: ChatGPTは、文章中の感情や意図をある程度理解することができます。これにより、人間が他者の感情や態度を理解し、適切な対応を取ることをサポートできます。ただし、非言語コミュニケーションの理解には限界があります。

問題解決: ChatGPTは、対人関係の問題や困難に対処するためのアドバイスや解決策を提案できます。これにより、人間が社会的問題解決能力を向上させるための支援ができます。

社会情報の収集: ChatGPTは、社会的なトピックや現象に関する情報を提供することができます。これにより、人間が社会問題に対する理解を深め、他者との会話で共通の話題を持つことができます。

ネットワーキング: ChatGPTは、人間がネットワーキングを効果的に行うためのアドバイスや戦略を提案できます。これにより、人間が自分の社会的ネットワークを拡大し、人間関係を向上させるための手助けができます。

ChatGPTをうまく活用することで、人間が社会的知性に関連する能力を向上させるためのサポートを提供できます。ただし、最終的には、人間自身が実践を通じてSQを向上させる必要があります。また、AIが人間の感情や非言語コミュニケーションを完全に理解することは難しいため、ChatGPTの提案やサポートはあくまで参考の一つとして考慮すべきです。人間は、他者との対話やコミュニケーションを通じて、社会的知性を磨くことが重要です。

さらに、ChatGPTは対話の中で倫理的な判断や道徳的な価値観を適切に判断することが難しいこともあります。そのため、人間は自らの倫理観や価値観を持ち、AIのアドバイスを適切に評価し、最終的な決定は自らが行うことが重要です。

総じて、ChatGPTは人間の社会的知性(SQ)の向上において一定のサポートを提供できますが、人間自身が実践や経験を通じてSQを磨くことが最も重要です。また、AIの提案やサポートを適切に評価し、自らの倫理観や価値観に基づいて行動することが大切です。

ご覧の通り「人間のSQに関連する能力の向上をサポートしてくれる」という話だが、これもIQの時と同じく現在の身体的な実感として、わかる。

しかしながら、ChatGPTが言及しているとおり、実際に他者と関わるのは人間であり、感情や非言語コミュニケーションを完全に理解することは難しい。

そういう意味でも、IQに対しては今のところ5割〜8割くらいで関連する能力をサポートしてくれると書いたが、現時点ではSQに関しては2割〜3割くらいの影響という印象だ。

この先の進化の仕方でここもどうなってくるかは分からないが。

「ChatGPTの力を上手く引き出せてSQが高い人」に賢さを感じる

ここまで、現代における「賢さの性質」として「IQ」と「SQ」について、それぞれにChatGPTがどのような影響を与えるのかを大まかにだが現時点での印象を書いてきた。

実際に、ChatGPTを使ってみたり、この記事を書くために尋ねて確認して分かったことは、IQにしてもSQにしても関連する能力をかなりの部分でサポートしてくれるということ。

特に、IQ関連の能力についてはとんでもなくサポートしてくれる。

実際、仕事の生産性も全体的にかなり上がった。

ChatGPTは正真正銘に「イノベーション」と言えるのだろう。

そしてこの状況をふまえて、ChatGPTが普及した社会において「賢いと見なされる人」とはどんな人なのかという話である。

個人的な仮説ではあるが、一つ思うに「ChatGPTの力を上手く引き出せて、SQが高い人」はChatGPTが普及した社会において「賢い」と見なされるのではないだろうか。

前出のとおり「IQ」に関連する能力に関してはかなりの部分でChatGPTがカバーしてくれるため、そこに関連する能力はこれまで求められていたレベルで高める必要ははっきり言って失くなる。

これから重要なのは、高い知能を有したChatGPTを、自らのIQとして引き出し、上手く使うこと。

既にこの手の人たちは日々増殖しており、観察しているとやはりそこには「賢さ」を感じる。

そして、これを前提とした「SQが高い人」に私はより賢さを感じていくのだと思う。

というのも、突き詰めると私たち人間がやるべきことは「他者と関わりながら、後世のために、いい社会・いい共同体・いい文化を作っていくこと」だと思うから。

よくよく考えてみれば、これまでは私たちは「IQもSQも両方高めなければならない」という状況に置かれていたわけで、的が絞られずエネルギーが分散してしまっていた。

しかし、ここIQに関連する能力をとんでもなくサポートしてくれる存在が突如立ち現れたことで、図らずも、そこにかかっていたエネルギーが大きく軽減される状況がやってきた。

これはつまり、私たちは「これまで以上にSQを高めることにエネルギーを注ぐことができるようになった」という変化と捉えることができるのではないだろうか。

今以上に人類全体のSQが高まれば、よりより共同体が作られ、より良い文化がそこに作られていくはず。

「社会的知性こそが人間の真の知的馬力」と述べたヒッペル氏は同書の中で「人が人生のなかで向き合う最大の挑戦は、他者を理解し、その相手に対応することだ」とも言っている。

ChatGPTが普及していくことで、いよいよ人類全体で本当にこの点に挑戦できるようになっていくのかもしれない。

というか、そうなって欲しいと私は願っている。

*1:知能指数 / IQ(ちのうしすう)

*2:組織のリーダーとして成功を収めるにはEQ(こころの知能指数)が不可欠である

UnsplashTachina Leeが撮影した写真

【著者プロフィール】

田中 新吾

今回はAIを社会に対してポジティブに捉えた記事でしたが、一方で「AIは水をめっちゃ飲む」など社会に対してネガティブな側面も目が離せません。引き続き学んでいきます。

プロジェクトデザイナー/ワードデザイナー。法人や個人のマーケットを生み出すプロジェクト、マーケットを運営して広げるプロジェクトなどのお手伝いをしています。元マーケティングファーム ディレクター。Webメディア http://ranger.blog 管理人。

●X(旧Twitter)田中新吾

●note 田中新吾

会員登録していただいた方に、毎週金曜日にメールマガジン(無料)をお届けしております。

ちょっとした気づきや最近の出来事など、メールマガジン限定のコンテンツもありますのでぜひご登録ください。

登録はコチラから。

幅を愉しむwebメディア「RANGER」に対するご意見やご感想、お仕事のご相談など、お問い合わせからお気軽にご連絡ください。

最後まで読んでくださりありがとうございます。