田中 新吾

「面倒くさい」という「老化」の原因に立ち向かう手段は、色々とありそうなことが分かってきた話。

タナカ シンゴ

先日、はてな匿名ダイアリーでこんな記事を読んだ。

「老化」の本当の恐ろしさ

当方男なので、女の老化についてはわからない。

ただ、実際に老化してみた感想。

まず簡潔に言うと、以前思っていた「老化していく」という感覚より「老化を選び取っていく」という感覚に近い。

・反射神経が落ちる

反射神経が落ちる、というより、集中力もろもろが落ちる。やろうと思えば若い時みたいな反応はできるが、

だるいしめんどくさいし疲れるので「集中したくない」という感覚に近い。

・運動能力が落ちる

筋力も上げようとすれば上げられるのだが、とにかく「運動するのがめんどくさい」

運動して何になるの?という感覚。ケガも増えるので「運動ができなくなる」というより、「運動が怖くてできなくなる」に近い。

・肌が老いていく

肌のことを考えてビタミンとったり、保湿したりは若いころはしていたが

まぁめんどくさいし疲れるし、肌を保とうというモチベがなくなる。

ちょっと疲れたかな?って顔が次第に普通になりそれの繰り返しで老いていく

・まとめ

結局何が言いたいかっていうと、若さとはモチベーション、やる気、バイタリティがすべて

老いは「やりたいのにできない」じゃなくて「やりたいがなくなる」という感覚に近い。

いつまでも若い人は、とにかくバイタリティとモチベが高い。

私も30代半ばになり、昔と比べ「反射神経が落ちる」「運動能力が落ちる」「肌が老いていく」といった物理的な「老化」の実感があり、この文章は骨身に染みた。

私たちは「年齢を重ねる」という物理的なことから逃れることはできない。

ところが、いくら歳を重ねても「若々しい人」はいる。

いくら年齢を重ねても「行動量が減るどころか増える人」もいる。

例えば、身近な例でいけば、

もうすぐ70歳の義理の母は、私よりも遥かに「情報通」だ。

TwitterやInstagramといったSNSを使いこなし、いつも情報収集をしていて、会うたびに私がよく知らないことについて丁寧に教えてくれる。

そして、英語も堪能。

裁縫も得意で、ファッションセンスも非常に高い。

聞くと、そろそろファッションブログを始めようということで、撮影用のカメラを買ったりと下準備を進めているらしい。

そんな義理の母に「老化」という言葉は一切似つかわしい。

むしろ、会うたびに新しいことに着手しており「若返り」を感じる。

一体、老化とはなんなのだろうか?

老化に立ち向かう手段はあるのだろうか?

このような疑問を持つようになってずいぶんと経ったが、最近ようやく分かってきたことがある。

それがこの記事のタイトルの、「老化」の原因は「面倒くさい」であり、「面倒くさい」に立ち向かう手段は色々ありそう、ということである。

「老化」とは「面倒くさい」が増えること

上の記事では、老化とは「やりたいがなくなる」という説明がある。

しかし「やりたいがなくなる」というのは、経験則でいけば、結局のところ「面倒くさいが増える」から、そうなる。

私も20代の頃は、人が行動しないのは「やり方がわからない」あるいは「失敗が恐い」といった理由が主だと思っていたが、これはどうやら勘違いだった。

今は「やり方」がわからなくても、調べれば誰にでも分かる。

「失敗が怖い」だけなら、背中を押してくれる誰かがいれば済む。

当然「やり方がわからない」や「失敗が恐い」といった理由もゼロではないだろう。しかし、これは動かない理由の「本音」ではない。

私の知る限り、多くの場合「面倒くさい」が行動しない理由の「本音」だ。

掃除をしないのは、面倒くさいから。

発信をしないのは、面倒くさいから。

運動しないのは、面倒くさいから。

投資をしないのは、面倒くさいから。

調べれば分かるのに調べないのは、面倒くさいから。

背中を押してもらえるよう誰かに相談しないのは、面倒くさいから。

面倒くさい」などとハッキリ言おうものなら、ダメなやつだと認識され、その先一生、仕事が回ってこないかもしれない。

この先、一生付き合いがなくなるかもしれない。

だから、表面上「忙しさ」や「効率の悪さ」などを理由にして繕う。

周囲を気にして、「面倒くさい」を言い換え「本音」を言わないだけ。

このように「面倒くさい」という感情は、かなりの部分で私たちの行動を抑制しており、その壁を簡単には突破できない。

そして、

面倒くさいから、外に行きたくない。

面倒くさいから、今日はなにもしたくない。

面倒くさいから、遠出はやめよう。

面倒くさいから、これで止めよう。

こうやって「面倒くさい」が増えれば増えるほど、人は動かなくなり、そして錆びていく。

思うに、これこそが「老化」だ。

したがって、年齢的には若くても「老化している人」は結構いる。

なんでもかんでも「面倒くさい」と思って動かない人は、年齢的にはいくら若くても「老人」と思っていいだろう。

どうすれば「面倒くさい」を克服し、「老化」を防ぐことができるのだろうか。

これは私にとって大変大きなマネジメントテーマだ。

「面倒くさい」と感じる時を知り、「面倒くさい」と思わないように対策をとる

実は、克服するための「大きな方針」は私の中で既に出ている。

「面倒くさい」と感じる時を知って、

「面倒くさい」と思わないように対策をとる。

というものだ。

これは「脳の学校」代表の加藤俊徳先生の話を大変参考にしている。

先生がこれまでに診断・治療してきた脳画像は1万人以上。

TV番組の出演や執筆活動もされており著書も出している脳の専門家だ。

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先生によれば、

・脳は、余裕のある時に「面倒くさい」と感じる

・脳は、環境が静かすぎると「面倒くさい」と感じる

・脳は、処理能力が低下している朝に「面倒くさい」と感じる

・脳は、細かい運動に対して「面倒くさい」と感じる

・脳は、寝不足の時に「面倒くさい」と感じる

いずれも経験則的に頷ける。

このような「面倒くさい」と感じる時を知っておけば、対策は如何様にでもとることができる。

例えば、歯磨き(細かい運動)の前に、軽く外を歩く(大きな運動)。

例えば、コーヒーショップなどの雑然とした場所で仕事をする。

しかし、

「面倒くさい」という感情の中で最も乗り越えたく、でも乗り越えづらいのが、「自分の不得意なことや新しいことをするとき」である。

これを突破することができなければ、

「やったことのあること」

「知っていること」

「簡単にできること」

「いつも同じこと」

の中で、行動は留まることになり、新しい経験のバリエーションは積まれていかない。

したがって、殆ど成長しない。

ちなみに、加藤先生はこの類の「面倒くさい」を突破するのに「片足立ちで30秒数える」を提唱している。

曰く、そうすることで「面倒くさい」という感情が消えるというのだ。

「そんなわけあるか」

と、大半の人が思うだろう。

だから実際に私も何度か繰り返しやってみた。

すると「面倒くさい」と思うだろうことに取り組む前に、片足立ちで30秒数えると、確かに「面倒くさい」が消えた。

しかも、何度やっても結果は殆ど同じだった。

「感情が消える」というよりかは、「感情が薄まる」という方が実際には近いのかもしれない。

自分に何かの魔法をかけたようで、この変化には正直かなり驚いた。

生体にほどほどのストレスをかけることは「面倒くさい」を突破しやすくするのかも

そして、最近読んだ「Life Span 老いなき世界」という本の中にも、「面倒くさい」と思わないための対策として好手となりそうな知見を見つけた。

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この本の主たるテーゼは、老化はがんなどと同じように「病気」だから、その原因を取り除けば「治せる」というものだ。

驚くなかれ。

なんと「老化」は必然ではなく「病気であり治療可能」という驚愕的な概念がついに生まれてしまったのだ。

著者であるデビッド・A・シンクレアは、「老化」の原因として「エピゲノム」に注目している。

細胞内にあるすべてのDNAをひとまとめにした「ゲノム」を「ピアノ」だとするならば、「エピゲノム」はそれを鍵盤にして音を奏でる「ピアニスト」だ

要するに、エピゲノムが、ゲノムのどの遺伝子のスイッチを入れ、どの遺伝子をオフのままにしておくのかを調整しているのだ。

この「エピゲノム」の働きが失われるとどうなってしまうのか?

細胞は自らのアイデンティティを失い、生まれ替わる細胞もアイデンティティを見失ってしまう。そうなれば、組織や臓器は次第にうまく機能しなくなり、やがて動きを停止する。

具体的には、筋力は低下し、目は濁り、関節は痛み、骨の密度が失われ、認知はあやしくなるのだ。

著者は、これこそが「老化」の正体だという。

そして、「老化を治す」には「エピゲノムの働き」を安定化させればいい、というのが著者の主張である。

エピゲノムの働きを安定化させるのは、「長寿遺伝子(サーチェインやMTORなど)」と呼ばれる遺伝子たちだ。

つまり、長寿遺伝子を活性化させることができれば、エピゲノムの働きは安定化し、老化を治すことができる。

本書の中には、治療薬や化学物質の他に「今すぐにでも長寿遺伝子を活性化させる手段」がいくつも記されていた。

例えば、食べる量や頻度を制限する

例えば、アミノ酸を制限する

例えば、高強度なインターバルトレーニングをする

例えば、快適とはいえない温度に身をさらす(サウナに入る、寒さに身をさらす)

などであり、

総じて言えば「生体にストレスをかける」ということになる。

しかし、言わずもがなだが細胞内のストレスにしても、大きすぎれば手に負えない。

カタツムリはどんなに頑張っても、踏まれて潰れたら万事休すだ。

急性の外傷や制御不能な炎症は、生物に老化する暇を与えずその命を奪う。

したがって「ほどよいストレス」こそが長寿遺伝子にとっては良く、長寿遺伝子を活性化させる。

いずれのストレス要因にしてもやりすぎは注意だ。

本書には「面倒くさい」という感情と「長寿遺伝子」の結びつきについてはそれらしき記述は見当たらない。

しかし、直感的に長寿遺伝子を活性化させることができれば、「面倒くさい」は消すことができると思う。

こう考えれば「片足立ちで30秒数えるとが面倒くさいが消える」という不思議な現象にも説明がつくからだ。

つまり、一時的に「ほどよいストレス」をかけたことで、長寿遺伝子が活性化し、老化を治すエピゲノムの働きが安定化したのではないか、ということである。

自分の体を使った実験はまだまだ必要だが、

「面倒くさい」は、生体に対してほどほどのストレスをかけることを習慣にしておく方が突破しやすくなるのかもしれない。

「寒いから(暑いから)なるべく外に出たくない」なんて言ってられない。

Photo by Jaime Spaniol on Unsplash

【著者プロフィール】

田中 新吾

ネーミングに強いプロジェクトデザイナーとして、法人や個人のマーケットを生み出すプロジェクトや経営改善プロジェクトのお手伝いをしています。元マーケティングファーム ディレクター。Xではプロジェクトの進行・マーケットの創出や成長の助けになる知見・ノウハウを発信。Webメディア http://ranger.blog 管理人。

すべてではありませんがここ数年の実績をまとめています。

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