RYO SASAKI

折角生まれてきたのだから、イミテーションワールドから抜け出て本物を知りたい。

タナカ シンゴ

今年もまたビールが旨くて、またしてもお酒の話を書かずにはいられない。

ある居酒屋で隣に座っていたのは、お酒好きで特にクラフトビールが好きな30代(たぶん)女性だ。

中でも、IPA(ホップを大量に使用してつくられる苦くて濃いビール)が一番好きだ、という。

他にも、最近になって初めてウィスキーを美味しく感じるようになったとか、彼氏がIPAを好まないので何とかしたいとか、酒にまつわる色々な話をしてくれた。

そう言えばクラフトビール専門店でいろいろ教えてくれる常連さんも、私よりずいぶん年下の人ばかりだ。

若い女性もIPAを好んで飲む時代。

昭和のおじさんはなんとも感慨深い。

意外だったのが、その女性がこれまでウィスキーを好きになれなかった理由が、学生時代に初めて飲んだのが某大手が提供している激安ウィスキーだった、ということ。

その激安ウィスキーを先輩に一気飲みさせられたり、中には急性アルコール中毒になった人がいたという。

私にも学生時代に同じ経験があったから、学生の酒の話としては定番中の定番だと最初は思ったのだが・・・。

すぐにそれが変だと気づいた。

この女性と私は、30年近く年齢差があるのにもかかわらず、その激安ウィスキーの銘柄も一気飲みも急性アルコール中毒も私の頃と何も変わっていないのはおかしくないだろうか?

30年の間、何も変わってないということなのか?

バブル崩壊後の不景気状態を”失われた30年”などと言うが、ここにも”失われた30年”が現われているんではないだろうか?笑。

この激安ウィスキーの話は、若者と共感できて貴重だから、おじさんには何ともありがたいものなのだが、それをただ喜んでニヤニヤしているだけでいいものなのか?

そんな悪しき?出来事が変わってないのは問題ではないだろうか?

そんな思いがもだげた。汗笑。

社会は進化するはず・・・

安酒で悪酔いする。

これをここでは一旦悪しきことだとしよう。

※賛否があるかもしれないが、今回は、これを悪しきことだという前提で話しを進めることにする。

社会の進化(変化?)とは、悪しきことが排除されて別のことに置き換わっていくものなんだろうから、30年たったら、こんな悪しきことはなくなってないといけないはず。

部活やらサークルの先輩からの酒の強要、それはシゴキ、カワイガリ、イジメのどれに含まれるものなのかわからないが、まずはそんなものがなくなっていくべきではないか?

あるいは、安酒が高級な酒になることで悪酔いしなくなったり、そんなにガブガブ飲ませにくくなったりするなど豊かな方へ変化してもいいのではないか?

30年近く変わっていないことにどこか日本の精神的、経済的貧しさを感じる。

柄にもなく急に社会派っぽいことを言い出してしまった。汗。

もし、学生コンパで出されるウィスキーが、サントリー『山崎』になっていたらどうだろうか?

それでも変わらずに、味も適量もわからず悪酔いする人もいるんだろう。

でも、この女性のように今に至るまで、ウィスキーが好きになれないということはなかったんではないだろうか?

同時に体への負荷も減っていたのではないだろうか?

私の場合、ウィスキーもそうだが日本酒での印象が強い。

若い頃は、別アルコールを外から添加したような安い日本酒しか飲む機会がなかったので、その印象が強くてなかなか日本酒が好きになれなかった。

日本酒が美味しいと感じ始めたのは40を越えてからではなかっただろうか?

こんなような安酒の影響でお酒が嫌いになったと言う話はよく聞くものだ。

私を含む大安酒被害者(笑)が日本には大勢いるわけで・・・。

少なくともこんなような安酒被害者は、サントリー『山崎』によって確実に減ったはずだ。笑。

テキーラを初めて知る

最近、知人がワインよりテキーラの方が得意だと言うので、メキシコ料理を探すことになった。

このテキーラの思い出もあまりいいものはない。

今、振り返る当時のテキーラは、ショットで一気飲みをして、急いで酔って騒ぐための、あるいは誰でもいい、醜態を晒す敗者をあぶり出すための、ツールでしかなくて、キツくてどこか薬臭くて美味しいと感じたことはない。

テキーラはその成分から悪酔いする、などとも聞いたが、飲んだ量がその原因ではないか?と疑わしい。

いずれにしても、テキーラも同様に安酒被害者が出やすかったのだろう。

乗り気はしなかったが、気を強く持って来店することにした。

お店にはテキーラが10種類もあって、高いのはいいお値段になる。

店員さんにお薦めを聞こうとすると、自分がメキシコ料理にもテキーラにも全く知識がないことに気づく。

あれこれしつこく聞いて、何とか薦めてもらったショットをライムをかじってチビチビやってみる。

ワインでもたまに感じるような、植物の青っぽい感じ(これが原材料のアガベのものだと後から知る)にバターのような旨味が混じる。

あら?旨い!

初めてテキーラを私が味わった瞬間だった。

イミテーションで豊かになった

ここまで安酒被害者などという言葉を出してみたのだが、その被害を訴えたいのではないし、もちろんそのことを根に持っているわけでもない。

自分がその金額しか出せなかったから、それを自ら選択して飲んだだけなのだ。

メーカーはそれまでになかったそのニーズを満たすために、知恵を絞って努力して安くてもそこそこいける酒を造ってくれた。

敢えていうと元々の造り方の本物というものがあるとすると、それに似せて作るイミテーションを上手~く大量に造った。

安価な代替品で、別物を加えて・・・

それが時には、粗悪な原料で、時には薄められて・・・

見渡せば、イミテーションは酒に限ったわけでなくあらゆる食べ物に存在する。

その代表と言えるのが、即席麺だろうか、これはとにかく画期的な発明だった。

日本の敗戦、食料自給率の低さ、これに日本人の器用で勤勉なところが合わさって、イミテーションが豊富に提供されてきたように思う。

イミテーションワールドを抜けた先を見る

『大手が造るビールがビールなんかではない』といった反骨心からクラフトビールを造り始める若者が多いと聞く。

私はクラフトビールを知らず、よって本物のビールを知らず、いい歳になってやっとそんな思いのある若者に教わる。

本物のテキーラもこの歳まで知らずにメキシコ料理屋の若い店員から教わる。

以前、これまた若者に薦められるままに飲んだアイリッシュウィスキーがまた格別に美味しかった。

好きな酒を長らく嗜んできたという自覚がありながら、全く知らないものばかり・・・。

各専門分野に入るとどこに行っても未だなお初心者である。

ここまで一体何をしてたんだろう?笑。

あちらこちらにある本物を、逆に徹底的に避けてきた?ようにすら見えるのだ。汗。

このお酒の話のように、私の生活はこれまでイミテーションで豊かになってきた・・・と言えるんではないだろうか?

大袈裟だがイミテーションワールドにとじ込もっていたとも言える?笑

そのワールドから、少しだけムクりと顔を抜け出してわかってきたことは、本物は何と言われようがイミテーションより美味しい、ということ。

少なくとも今の私にはそう感じられる。

酒なんてのは自然の発酵にまかせるわけで、自然の神秘としかいいようがない。

その自然の造り出すものは体に沁み入るようで、それがわかるのは、だんだん弱ってきて不自然なものに体が堪えるようになってきたからなのかもしれない。

今さらながら、というか今だからなのか、そんな風に感じた。

そんなことをツラツラと考えると、こんな思いが生まれる。

折角この世に生まれ落ちたのだから、死ぬまでに少しでもこの世の本物を味わっておきたい!

そんなやや大袈裟な理由をつけて、たまにはこのくらいの贅沢はさせてもらいたいと懇願する。

誰にしているのかわからないが。汗。

更に広げてみると、酒や食に限らず世の中にはいろいろな分野での”本物”がある。

他の分野の本物にもこれまでのどれだけ出会ってきたものだろうか?

こちらも私ならばかなり怪しいものだ。汗。

こちらも糊代がいっぱいのようだが、これからどれだけ出会えるものだろうか?

豊かな未来を願って

ここまでの話はあくまでも私個人のものなのだが、もしかするとこれまでの時代全体の話なのかもしれない。

その時代にただ生まれ落ちた一個人の必然か。

未来の人から、今のこの時代を眺めた時にどんな時代だったと見えるんだろうか?

今の時代は、昔に比べると食に関してとんでもなく豊かになったとも言えるんだろう。

それでも、戦後わずか80年である。

ならば、今はまだまだ過渡期で大変な時代だった!と、もっと豊かな未来から見えたとしても不思議ではないだろう。

学生がサントリー『山崎』で穏やかにコンパをしている未来ならば、安酒による悪酔いは昭和のバイクノーヘル(ヘルメットなしでバイクに乗る状態)のように信じられないことになっているのかもしれない。笑。

イミテーションが豊富にある豊かな時代。

それでも今や本物の水を手に入れるのも難しい時代になってるとも言えて、本物がないと不十分だと普通に体は感じる。

もっと本物を普通に味わえる豊かな時代になって欲しい。

この本物という点から、今後の時代の進化(変化)を見届けていきたいものだ。

そう言えば今の時代、既に”酒”というもの自体が悪だと言われているから、進化した未来は悪である”酒”を排除しているのかもしれない。

そうなったとしたら、未来の人は今の時代を”酒”なんてのを飲んで騒いでいた滑稽な時代、と見るんだろうけど、私が生きていれば、本物・イミテーションいずれもの酒が豊富にあって良かった時代、と酒を飲めなくなってしまった未来を憂えながら、懐かしく振り返るのだろう。悲。

結局美味しい酒を飲みたい、という話に終始してしまった。

UnsplashDrew Beamerが撮影した写真

【著者プロフィール】

RYO SASAKI

本物というものとは何か?この定義も見極めも難しいものなのだが、何とか自分なりにやっていきたいと思います。

工学部を卒業後、広告関連企業(2社)に29年在籍。 法人顧客を対象にした事業にて、新規事業の立ち上げから事業の撤退を多数経験する。

現在は自営業の他、NPO法人の運営サポートなどを行っている。

ブログ「日々是湧日

会員登録していただいた方に、毎週金曜日にメールマガジン(無料)をお届けしております。

「今週のコラム」など「メールマガジン限定のコンテンツ」もありますのでぜひご登録ください。

▶︎過去のコラム例

・週に1回の長距離走ではなく、毎日短い距離を走ることにある利点

・昔の時間の使い方を再利用できる場合、時間の質を大きく変えることができる

・医師・中村哲先生の命日に思い返した「座右の銘」について

メールマガジンの登録はコチラから。

最後まで読んでくださりありがとうございます。

これからもRANGERをどうぞご贔屓に。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

記事URLをコピーしました