田中 新吾

「米農家」としてやっていく道を考えてみた、という話。

タナカ シンゴ

この間、「この先、米農家になることを考えている」と友人から連絡をもらった。

南の島の移住体験が食の重要性を喚起し、6次産業化を念頭に考えたいということだった。

ツヤツヤと輝く炊きたてのごはんを、口に運ぶ瞬間。

これは、日本人が「しあわせ」を感じる代表的な瞬間だと思う。

この瞬間に掛けようという思いを聞いた時は、素直に「いい」と思った。応援したいし、なんなら一緒にやりたいくらいだと思った。

私も年に数回だが友人の米づくりを手伝う。

そして、そこで収穫できた米を食べさせてもらう。

年末には収穫した餅米で餅つきをするのも恒例になりつつあって、米作りに関わるのは毎年の楽しみの一つだ。

何より手塩にかけて作った米はとても味わい深い。

しかし、現実的に「食べていけそうかどうか」はちゃんとシミュレーションをした方がいいという話をした。

なぜなら「米農家単体」で生活をしていくのはとても難しく、年金受給者が暇を潰すために行っているのが現状だからだ。

ただ、そうだとしてもやっていく道はあると思っている。

以前、私も「米農家」について考えたことがあったので、その時にした粗々のシミュレーション(農業者へのヒアリングに基づく)と、考えを書き残しておこうと思う。

米農家単体で収益を黒字化させるのは厳しい

「米農家」に関しては「慣行農法」でいけば、機械ありで、1反(=10アール)の年間売り上げは約14万だと聞いた。

1反は約1,000㎡、10rです。昔は、お米が1石(成人1年間の米消費量)分収穫できる面積を「反」としていたそうです。

参考記事:一歩・一畝・一反・一町の面積【知っておきたい農業単位】

そしてこの約14万円を生み出すためにかかる人件費は、1万×8人日くらい。その他経費(維持費など)を計算していくと最終利益は赤字になってしまう。

機械が5年償却だとすると、5年くらいはこのような状況が続くことになる。 米農家単体で収益を黒字化させるのは厳しい。

一方、ナスやトマトのような「野菜農家」はどうだろうか。

ナスなら1反(=10アール)の畑で売上が約310万円、所得が約270万円。トマトなら1反(=10アール)の畑で売上が約170万円、所得が約110万円程度。稲作よりは随分とお金に変わることが分かる。

これだけを見ると「米農家はかわいそう、耕作放棄が広がるのもやむを得ない」と思ってしまうのだが、この領域に関してはもう一つの視点をもって考えてみたい。

1時間あたりの所得は野菜農家よりもいい

実は、野菜農家にくらべて米農家は労働時間が少なく「1時間当たりの所得」は野菜農家よりもいい。

米作りは1反(=10アール)あたりの労働時間は年間約20時間。

一方、ナスは約2,800時間、トマトは約800時間というのだ。

年間20時間程度の労働時間であるならば会社に勤めながら、あるいは、他の仕事を持ちながらでも十分することができる。

2反でも40時間程度、3反でも60時間程度だ。

ちなみに、自然農、有機農の場合はこれとはまた様子(所得、労働時間)が変わってくる。参考になる記事があったのでよければ見てみて欲しい。

参考記事:稲作の便利さと収入

さいごに

現時点での、個人的な見解(=やっていく道)を最後に書いておこうと思う。

米農家をいきなり「生業」にするのは難しい。

新規就農でいきなり何ヘクタールも田んぼを貸してくれるとは思わないのと、前述したシミュレーションのとおりだ。目先の儲けを考えてあたらしくはじめるのはやめた方がいいと思う。

ただ、ひとまず目先の儲けは度外視で1反をもってやるとかなり楽しいはず。

機械も無く、手だけだって1反くらいなら良い運動だ。

成長を見てるだけでも楽しいし、収穫の時の喜びは野菜より遥かに大きい。

さらに余った米を親戚・知人に贈ったり、米屋に卸せばいくらかの現金収入も得られる。

今から新たにはじめるとするならば、主業は持ちながら、最初業とは呼べないかもしれないが「副業」的にスタートさせて行くのが色々な面を考えても良いと思う。

そして研究を進めながら少しづつ副業→主業へと成長させていくイメージ。

「半農半X」という考え方があるが、米農家はまさしく「複業向き」なのだと思う。

米農家でもない人間がなんか偉そうなことを言ってしまいすみません。

この記事で書きたいことはこのくらいです。

【著者プロフィール】

田中 新吾

中小企業、中小自治体、個人のプロジェクトサクセスを支援しています。人生のミッションは「プロジェクトという挑戦」を応援すること。座右の銘はLife is Projects。自称ネーミングマニア。

詳しいプロフィールはHTML名刺をご覧ください。

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