「これとこれは実は似ているよね」という話は、人の気付きにつながり、理解を促進する。
飲み会や雑談の席で、「これとこれって、実は似ているよね」という話になって盛り上がったことはありませんか?
一見すると全く関係なさそうな二つの事柄の間に、意外な共通点が見つかった瞬間。
その時、場には「あー、確かに!」「なるほど!」という納得感と共に、ある種の知的興奮が走ります。
私はこの瞬間が大好きです。
なぜなら、「似ている」という感覚は、単なる話のネタに留まらず、物事の本質を理解するための最強のエンジンになり得るからです。
今回の記事では、この「似ている」の正体である「アナロジー(類推)」と「メタファー(隠喩)」について、そしてそれらがどのように私の仕事である「命名」や「ブランディング」に活きているかについて、少し深掘りしていきます。
「似ている」には2種類ある
そもそも、「似ている」には大きく分けて二つの種類があると言われています。
一つは「表面的類似」。
これは見た目が似ているとか、色が似ているとか、あるいは「皇帝」と「校庭」のように音が似ているといった、五感で直接感じ取れる類似性のことです。
この「似ている」は誰にでもすぐに分かります。
もう一つが「構造的類似」。
こちらは見た目は全く違うけれど、その成り立ちや仕組み、あるいは関係性が似ているというものです。
例えば、コロナ禍に当時のTwitter(現在X)で話題になった「スマホは大人のおしゃぶり」という言葉があります。
スマホとおしゃぶり。
見た目は全く似ていません。
しかし、「四六時中、手放せずに口元(目元)に持っていってしまう」「それがないと落ち着かない」という構造(関係性)は見事に似ています。
「スマホは大人のおしゃぶり」ってパワーワードを知ってから、自分はいま明確な目的があって使っているのか、スキマ時間に何となく触っているのか気にするようになった。ここ最近のスマホ利用を振り返ってみると、おしゃぶりとして使い倒してる。
— いまにし / baigie inc. (@imnstkhs) May 4, 2021
この構造的な類似を見つけ出し、別の物事に当てはめて考える思考法のことを「アナロジー(類推)」と呼びます。
参考:アナロジー思考(著:細谷功)
アナロジー:構造を見抜く力
アナロジーは、難しい概念を理解したり、新しいアイデアを生み出したりする時にとてつもない威力を発揮します。
私の手元にあるメモ(Obsidian)には、アナロジーについてこう記されています。
アナロジー(類推):物事の共通点を探して違うもので表現をする
ana(上に)+logos(論議)=> 同じ論理の上で考えられるもの
つまり、全く違うフィールドにある二つの事象を、同じ論理の土俵に乗せて考えることができる能力。
これがアナロジーです。
例えば、「山脈」と「人脈」。
これらもアナロジーの関係にあります。
山脈は、同じ高さの山々が連なってできています。
低い山と高い山がいきなり隣り合うことは地質学的にも稀でしょう。
人脈も同じで、だいたい同じような「視座の高さ」を持った人たちが連なってできています。
あるいは、「とんかつ屋」と「DJ」。
一見なんの関係もなさそうですが、「カツを揚げる(アゲる)」のと「フロアをアゲる」という役割において類似している、なんていう言葉遊びのようなアナロジーもあります(漫画『とんかつDJアゲ太郎』ですね)。

このように、AとBという異なる対象の間に、「構造」や「役割」、「関係性」の共通点を見出すこと。
これができると、私たちは未知の物事に対しても「ああ、要するに〇〇と同じようなことね」と、一瞬で理解の解像度を高めることができるのです。
メタファー:見立てる力
そしてもう一つ、「似ている」を語る上で欠かせないのが「メタファー(隠喩)」です。
アナロジーと兄弟のような関係ですが、メタファーは「〜のような(直喩)」という言葉を使わずに、AをBに見立てて表現する技法のことを指します。
メタファーは一種の学びであり、類似を見出す能力だ。(アリストテレス『詩学』)
私のメモにはこうあります。
例えば、「人生は航海だ」。
これは人生という抽象的で掴みどころのない概念を、航海という具体的なイメージに見立てることで、その本質(波乱万丈、目的地を目指す、天候に左右される等)を直感的に伝えています。
他にも、
- 「AI」は「料理人」(素材を渡すと調理してくれる)
- 「失敗」は「肥料」(次の成功の糧になる)
- 「習慣」は「雪だるま」(最初は小さいが、転がし続けると勝手に大きくなる)
といったメタファーがあります。
これらは単なる比喩表現ではなく、対象の捉え方そのものを規定するフレームワークとして機能します。
「失敗は肥料だ」と思えば、失敗した時に落ち込むのではなく、「これでまた土壌が豊かになった」と前向きに捉えることができるようになります。
つまり、メタファーは認識を変え、行動を変える力を持っているということ。
*
アナロジーとメタファー。
この二つに共通しているのは、「ある物事を別の物事に例えることで、理解を促進し、発見的思考のエンジンになる」という点です。
新しいことを学ぶ時や、人に何かを説明する時、「これって何かに似てないかな?」と考える癖をつけると、物事の習得スピードは格段に上がります。
そして何より、そうやって世界を見渡すと、世の中は「似ているもの」で溢れていることに気づき、毎日がぐっと面白くなります。
命名は「石積み」である
さて、ここからは私自身の仕事の話を少しさせてください。
私は「命名創研」という名前で、企業やサービス、商品などの「命名」を行なっています。
この「命名」という仕事、実はなかなか一言で説明するのが難しい側面があります。
「いい感じの名前を考える仕事でしょ?」と言われればその通りなのですが、私が実際に行なっているプロセスや、そこに込めている想いは、単なる「思いつきのアイデア出し」とは全く違います。
そこで、私は自分の仕事を説明する時に、あるメタファーを使っています。
それは、「命名は石積み(積み石)である」というメタファーです。
石積み。
河原や神社の片隅で、石が積まれている光景を見たことがあるでしょうか。
あの石積みと、私の行う命名は、その構造において驚くほど似ているのです。
まず、石積みはボトムアップです。
最初から完成形が見えているわけではありません。
数多ある石の中から、「これだ!」と思う土台の石を選び、置く。
そして、その石の形や重心を見極めながら、その上に乗るのにふさわしい次の石を選び、積む。
今置いた石があるからこそ、次に置ける石が決まります。
私の命名もこれと同じです。
いきなり「これだ!」という最高傑作の名前が天から降ってくることは(残念ながら)ほとんどありません。
まずは対象となるプロジェクトや商品を深く観察し、コンセプトとなる言葉(土台の石)を選び抜く。
その言葉の上に、音の響きや意味の広がりを考慮しながら、次の言葉を積み上げていく。
名前のアイデア同士がお互いに影響し合い、支え合いながら、徐々に一つの構造を成していきます。
そして、石積みの頂点には、「要石(キーストーン)」と呼ばれる重要な石が置かれます。
この石が全体の重心を支え、構造を締める役割を果たします。
命名においても、思考を積み重ね、検証を繰り返した最後に、「これしかない!」という確信と共に選び抜かれる名前があります。
それが頂点に君臨する名前であり、プロジェクト全体の意味を支える要石となります。
さらに言えば、石積みには願掛けや供養といった「祈り」が込められています。
命名もまた、「この商品が愛されますように」「この会社が発展しますように」という、作り手の切実な祈りや願いを込めて行われる行為です。
このように、「命名は石積みである」というメタファーを使うことで、私の仕事が単なる「言葉遊び」ではなく、「祈りを込めた、ボトムアップの構造物を作る行為」であることが、自分自身にも、そしてクライアントにも深く理解されるようになりました。

このメタファーを見つけてから、私は自分の仕事に迷いが一切なくなりました。
参照:「乱流」が「層流」になると、迷いがなくなり、発展と進化のフェーズに入る。
思うに、「今は土台の石を選んでいる段階だ」「今は要石を探している最中だ」と、プロセスを客観的に捉えられるようになったからです。
星座のようなブランディング「名前座」
もう一つ、アナロジー思考から生まれた私のサービスについてお話しします。
それは「名前座(なまえざ)」というブランディング支援サービスです。
これは、一つの名前だけでなく、複数の名前の関係性を構築することで、プロジェクト全体の世界観を表現しようという試みです。
このアイデアの着想元になったのが、まさに「星座」のアナロジーでした。
夜空に輝く星々。
星の一つ一つは、ただの光る点に過ぎません。
しかし、昔の人々は、離れた場所にある星と星を目に見えない「線」で繋ぎ、そこに物語や意味を見出すことで「星座」という概念を作り出しました。
オリオン座、カシオペア座、北斗七星…。
個々の星(点)が集まり、関係性(線)を持つことで、一つの大きな絵(面)が浮かび上がる。
想像力のトップオブトップは「星座」だと思う。カシオペアにしたって、アンドロメダにしたって、くじらにしたってあれはただの線。というか線どころかただの点。点をつないで線にしてストーリーにしてしまっている。さらにすごいのが、この想像力が長い間受け継がれてきているところ。星座すごい。
— タナカシンゴ(ハグルマニ / 命名創研 / 栢の木まつり) (@tanashin115) June 7, 2019
私はこの構造を、ブランディングに応用できないかと考えたのです。
プロジェクトやブランドにおいて、一つの商品名やサービス名(点)だけでは表現しきれない世界観があります。
しかし、関連する複数の商品やサービス、あるいは機能や部署の名前に、ある一定のルールやストーリー(線)を持たせることで、それら全体として一つの強固なブランドイメージ(面)を構築できるのではないか。
つまり、「複数の名前」≒「星々」、「ブランディング」≒「星座」 というアナロジーです。
単に「命名セット」として売り出すこともできたでしょう。
しかし、それでは「まとめて頼むと安くなるのかな?」くらいの価値しか伝わりません。
そこで、「名前座」という名前を命名しました。
「座」という言葉には、「星の集まり」という意味だけでなく、「人が集まる場所(一座)」という意味もあります。
この名前自体が、「点ではなく面で捉える」「関係性によって価値が生まれる」というサービスのコンセプトを体現するメタファーになっているのです。
おかげさまで、この「名前座」という概念は、説明すると多くのクライアントに「なるほど!」と膝を打っていただけます。
「星座を作るように名前を付ける」というアナロジーが、直感的な理解を促進しているのだと思います。
参照:複数の名前が織りなす「名前座」で、あなたのプロジェクトに唯一無二のアイデンティティを。
「これって、何かに似ていないか?」
「これとこれは実は似ているよね」。
そんな何気ない会話や思考の中に、実は大きな可能性が眠っています。
アナロジーやメタファーは、単なるレトリック(修辞技法)ではありません。
それは、未知のものを既知のものと結びつけて理解するための架け橋であり、新しい価値や概念を生み出すための創造性の源泉です。
- 理解を促進する
- 発見的思考のエンジンになる
もしあなたが、仕事や生活の中で「何か分かりにくいな」と感じたり、「新しいアイデアが欲しいな」と行き詰まったりした時は、一度立ち止まってこう問いかけてみてください。
「これって、何かに似ていないか?」
その問いの先に、思いもよらない「気付き」や「突破口」が待っているかもしれません。
私にとっての「石積み」や「星座」のように、あなたにとっても、あなただけの強力なメタファーやアナロジーが見つかることを願っています。
今回の内容が、みなさんの思考の引き出しを一つ増やすきっかけになれば幸いです。
UnsplashのAdrian Siarilが撮影した写真
【著者プロフィール】
著者:タナカ シンゴ
「これとこれは似ている」と考えることは、実は前回の記事で書いた「伏線回収」にも繋がる話だと思っています。
過去の経験(A)と現在の課題(B)の間に類似性を見つけた時、過去が伏線として回収されるからです。
そう考えると、人生というのは壮大なアナロジーの連続なのかもしれません。
◼︎ ハグルマニ(プロジェクトコンプリメンター)
◼︎ 命名創研(命名家)
◼︎ 栢の木まつり 実行委員会(委員長)
◼︎ タスクシュート 認定トレーナー
◼︎ 8020BooX(準備中)

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