田中 新吾

「活動していることを止めてみる」ことでも、自分にとっての「新しい発見」は得ることができる。

新型感染症発生によるロックダウン(都市封鎖)で経済活動が止まり、それによって起こった現象に関してはまだ記憶に新しいことではないだろうか?

ヴェネチアの運河、ガンジス川の透明度がたちまち上がり綺麗になった

インドの都市部からヒマラヤ山脈がハッキリクッキリ見えた

絶滅危惧種であるジュゴンの大群がタイ南部の海で確認された

これらは要するに、経済活動を一旦止めてみたら、経済活動が地球にたくさんの負荷をかけていた事が誰の目から見ても明らかになったという話だ。(*1)

いずれにしても経済活動を止めることをしなければ誰の目にも見えなかったことである。

思うに、アイザック・ニュートンが発見した運動の三法則の一つ「慣性の法則」を知らない人は少ない。

これは「動いているものは動き続け、止まっているものは止まったままでいる」というもの。

また「動き続ける物体を止めるには大きなエネルギーが必要であり、逆に止まっている物体を動かすためには大きなエネルギーが必要になる」ということでもある。

慣性の法則は、物体に限らず動いているものの全て(例えば、人も)に適応され、いずれも止めるためには大きなエネルギーが必要だ。

しかし、個人的に思うのは「活動していることを止めてみる」には、大きなエネルギーはかかるが止めることで自分にとっての「新しい発見」を得ることができる側面が確実にあるということ。

それはロックダウンで経済活動を止めることで見えていなかったものが見えてきたように。

ということで、経済活動ほど大きな話ではないため参考になるかは定かではないが、個人的な活動における経験ベースに現時点での考えを残しておきたい。

長く続いた習慣でも行動の設計次第で止めることができる

例えば、以前私は「タバコを吸うのを止めてみる」ということを行った。

10年以上のタバコ歴についてここで軽く振り返っておきたい。

タバコを吸いはじめたのは20歳になってからだ。

当時よくお世話になっていた方が、マイルドセブン(現在はメビウス)を吸っていて「かっこいい」と思ったのと「タバコを通じたコミュニケーション」に興味が湧いた。

今思えばなんとも些細なきっかけだ。

手始めにマイルドセブンからはじめ、マルボロ、ハイライト、ラッキーストライクなど色々なタバコを試しては吸ってみた。

そんな中から学生時代の私に一番フィットしたのがセブンスター。

タール10mgのものを好んで吸った。

社会人になると、少し健康に気を遣うようになり、7mg、3mgとタールを軽くしていき、仕舞いには銘柄も変わり、アメリカンスピリットの1mgを嗜んでいた。

最後にアメスピを吸ったのはたしか2019年秋に行ったサウナ&キャンプだと思う。

それを境に思い切ってタバコを吸うのを止めてみることにしたのだ。

2020年1月からは「お酒を飲むのも止めた」こともあって、禁煙生活は思いの外順調に進み、今もなお継続中となっている。

そして、タバコを吸うのを実際に止めてみたからこそ分かったことがあった。

身体が軽くなった、朝の目覚めがよくなった、外出時に喫煙スペースを探さなくてもよくなり時間が生まれた、などよく言われることは当然ながら。

個人的に大きかったことは、

長く続いた習慣でも行動の設計次第で止めることができる

というもの。

止めると決めてからとった行動を具体的に言えば、タバコが目にはいり買える場所にできるかぎり行かない、居酒屋など吸いたくなるような場所にいかない、お酒など吸いたくなるようなものを飲食しない。

まとめると「タバコを自分から遠ざけた」になるのだが、これらを徹底してやっていたらいつの間にか必要としない身体になっていたのだ。

そして「習慣は設計することが可能」ということが自分の腹にしっかり落ちるのに、この経験はかなりの影響を及ぼしたと今になって思い返している。

疲れた時は発信を休めばいい

最近の話でいけば「ツイッターへの投稿を止めてみる」ということを行ってみた。

期間は1ヶ月にかぎり個人的に行ったプロジェクトの一つである。

もう少し詳細に言うと、1日に3回行っていたテキストでのツイートを止めたというもので、webメディアの方に投稿された「記事のシェア(週に2回)」は行っていた。

参考:やりたいと思ったことをやる時に採用している「プロジェクトデザイン思考」についての話。

思うに、元々ツイッターには「継続的にその発言を読んでおきたい人をフォローする」というカルチャーがある。

これに則れば「継続的に発言のない人はフォローを外す」というムーブになるのは必然と言っていいだろう。

でもだからこそ「本当にそうなのだろうか?」を一度検証してみたかったのだ。

先に結論から言ってしまうと、1ヶ月間止めてみた結果、現在のフォロワー数が著しく減ることはなかった。

減ったのは6〜7人。

逆に増えたのもあって結果としては2〜3人減ったという着地点。

この1回の取り組みの結果だけで再現性があるとはもちろん言い切れない。

しかし、この発見は私にとって遥かに大きな意味があった。

というのも「投稿をし続けなければフォロワーがガクンと減ってしまうかもしれない」という恐れ、偏見から開放されたからだ。

私は長いこと、ブログやツイッターで発信をしてきたため比較的発信することに対しての筋力はついている方なのかもしれない。

だがそんな私も「疲れる」ことはある。

このプロジェクトを実施する以前は、

疲れている時は発信を休みたい、でも休むとフォロワーが減ってしまうかもしれない

このような観念がずっとつきまとっていた。

しかし今では、

疲れている時は発信を休みたい、フォロワーが減ることはあっても大きく減ることはないのだから、休みたいと思う時は休めばいい

という思考モードに完全に切り替わった。

これはツイッターへの日々の投稿を止めてみなければ分からなかったことで、生まれても来なかったであろう思考モードである。

バイアスと聞くと悪い面ばかりがクローズアップされがちだが

この他にも「夕食を摂るのを止めてみる」「お酒を飲むのを止めてみる」などもこれまでに行なってきた。

詳細は割愛するが、そこでも止めなければ分かるはずもなかった「新しい発見」を獲得することができている。

こういう話をすると、

でもそれは認知バイアスなのでは?

こう思う人もいるかもしれない。

認知バイアス」とは人間の脳が持っている性質の一つだ。

例えば、サイコロをひたすら振る純粋な確率勝負の場においては文脈も意味も一切関係ないランダムな結果にもかかわらず「次は出るはず」というように思い込んでしまうようなもの。

このバイアスの発生は、自然界において「痕跡があるから近くに獣がいる」「こういう雲が出ると天候が崩れる」など原因と結果を結びつけて、物語を作って推測することが有効であることを掴み、そんな風に進化してきたからだと言われている。

要するに、人間の脳には物語を作ったり意味を見出してしまう「クセ」がついているということ。

そしてこのクセは強くどんなことでも物語を作りたくなり意味を見出してしまう。

言い方を変えると人は「無物語」や「無意味」に耐えることができないのだ。

であるから、今回の私の主張である「「活動していることを止めてみる」ことでも「新しい発見」を得ることができる。」について、これが認知バイアスによるものではないか?と考える人がいてもおかしな話ではなく、私自身その通りだと思う。

今までやっていた活動を止めるというのは自分事としては一大事だ。

一大事だからそこに自分にとって意味のある何かを見出さなければ頭も心も落ち着かない。

であるから、何かしら自分が納得のいく、自分にとって都合のよい新しい発見をしようと脳が勝手に動いてしまうのではないだろうか?

新しい発見の獲得の仕方というのは本当に様々ある。

旅に出る、本を読む、映画を観る、会話をする、人の話を聴く、住む場所を変える、やりたいと思ったことをやってみるなどなど。

様々とある新しい発見の得方において「活動していることを止めてみる」は、エネルギーもかかり、ハードルが高いと感じることかもしれない。

ただ個人的に思うのは、活動していることを止めてみることは大変だからこそ、その見返りを何とか得ようと働く認知バイアスの力は強くなり、強くなった結果、自分の人生にとって新しく意味の大きな発見につながることがあるのではないだろうか?

少なくとも今の私はそう考えているので、これからも時折活動していることを思い切って止めることはしていきたい。

「バイアス」と聞くと悪い面ばかりがクローズアップされがちに思うが良い面もちゃんとある。

私が思う自分にとっての新しい発見の獲得の仕方の一つで拙いかもしれないが、何かの参考になれば嬉しい。

*1:インド北部から数十年ぶりにヒマラヤ眺望、新型コロナ対策で大気汚染改善

*1:タイ南部の海にジュゴンの群れ、コロナ禍 野生生物には恩恵

UnsplashRaimond Klavinsが撮影した写真

【著者プロフィール】

田中 新吾

「活動していることを止めてみる」のも幅を愉しむことにつながることだなと思っています。

中小企業、中小自治体、個人のプロジェクトサクセスを支援しています。人生のミッションは「プロジェクトという挑戦」を応援すること。座右の銘はLife is Projects。自称ネーミングマニア。

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