この夏、ビールについて思うことをすべて書いてみた。
季節によって飲みたいお酒は変化することを最近感じてきた。
冬場は鍋に日本酒。
春が近づくとワイン。
季節に限らず、その日の気温によっても変わる。
同じ夏場でも最高気温が32度を超えるくらいから、またグッとビールが飲みたくなったりする。
忙しさにかまけていた時期はそんなことは感じもしなかった。
いや感じていたかもしれないが、別のことの流されて、気に留めもしなかったのだろう。
この夏は、コロナ禍の影響で、ほとんどが家飲みとなった。
残念ではあるものの、いい面もまたある。
●外食しないから、飲食費が節約できたこと。
●ビールを最高のタイミングーたとえば風呂上りすぐにー最高な冷たさで味わえること。
●いろいろなビールを自分で買ってきて飲むことによって、味の違いに敏感になったこと。
外食の場合、お店に置いてあるビールの銘柄は限られるから、そこにあるものをだいたいそんなもの、という感じで飲んでいた。
ましてや、置いてあるビールの銘柄によって店を選ぶこともなかった。
今は、家でいろいろな種類を飲んでみる機会を得て、自分の好きなビールを見つけることができた。
コロナ禍によって、ビールが興味深いものに急浮上した。
ビールのあのコク、のどごし、程よい苦み、なんと素晴らしいバランスだろうか!
なんと美味しいものがこの世に存在するのだろうか?
あらためてこの美味しさに感謝して、ビールについて今思うことを好きなように書いてみることにした。
特定商品の味批判も含まれているので、頑張って製品開発している方々に対して申し訳ないが、正直に書くことにする。
ビールの前に
まずは、ビールの前さばきをしておきたい。
コロナ禍で、普段なら飲まないノンアルコールビールを飲む機会もあった。
最近のノンアルコールビールは「更に美味しくなった」などと宣伝が激しい。
期待したいところだが、期待していいのだろうか?
夏場の長い外出の後などは、喉の渇きが頂点に達するので、ゴクゴク飲めてのどごしを感じられるのはよいのだが、味は満足するものではなかった。
なくなってみて始めて感じるアルコールのもつ甘さというか、コクというもの。
ノンアルコールビールはこれを他で補うために何らかの添加物を入れている。
商品によっては、人工甘味料を入れている。
これが、私の舌に何とも言えない気持ち悪さを与えてくる。
海外のノンアルコールビールには、そのような添加物を入れない自然な商品がある。
その商品は気持ち悪さは感じないが気が抜けたような物足りない味になる。
次に第三のビールと言われるものについて。
こちらもまた同様で、ビール酵母で発酵させたものではない、アルコール(リキュール等)や添加物が加えられている。
この添加物についても時に苦く、時に変な感じの甘さがあり、嫌な感じがする。
私にはそう感じられる。
このように感じるようになったのは、初めからではなくてここ数年のことだ。
値段の安さは有難いが、私にとっての第三のビールとは、やはり、ビールのイミテーションというよりも、ビールとは別の飲み物、どちらかというと酎ハイの一種という認識になっている。
自然を超えられない
ここ数年のこの感覚はどうやって生まれたのだろうか?
振り返って見ると、5~6年前から人工添加物や農薬について学び、自然栽培(無農薬、無肥料の伝統的な栽培方法)の米や野菜を摂るようになったことからだろうか。
最初はわからなかったが、自然栽培の野菜を食べ続けた後に、慣行栽培(農薬、肥料を使う栽培方法)の野菜を食べると、苦さや薬っぽさを感じるようになった。
自然栽培の野菜ならば、粉々になるまで何べん咀嚼しても美味しさを感じるのだが、慣行栽培の野菜は、咀嚼すると苦さを感じるので、それをしないように無意識に飲み込んでいたことが後からわかった。
自然栽培の野菜は忘れていた本来の野菜の味を思い出させてくれるようなものであり、滋味で何とも言えない美味しいものだ。
糖分の入った清涼飲料水、子供の頃は大好きだったが、これも身体に良くないということで、飲まなくなった。
そうして飲まない期間が長くあって、ある時にたまたま、清涼飲料水を飲む機会があった。
その時は、あまりにも甘すぎて二口目の口をつけることができなかった。
添加物の果糖ブドウ糖液糖。
何とも生活習慣というものは大きいものだ。
この辺りから、舌の感覚を研ぎ澄ませて食べるようになったからなのか、忘れていた感覚が蘇ったのか、ビールの味にも敏感になった。
何でもOKよ、という寛容で優しい、いい人を演じるのをやめて、あるいは、年と共に我慢ができなくなって、本来の頑固じじいを表し出したのかもしれない。
生前の父親の言動が思い出された。
父は舌が肥えていたわけではないが、わがままなところがある人だった。
母親に気遣うことなく、何でも正直に物を言う。
簡単に美味しいと言わない人だった。
その父が、「美味しい」と喜んで全てを一気に食べてしまおうとしたことが、何回かあった。
「美味しいもの」とは、新鮮なものであり、自然なものであった。
また、こんな話も思い出した。
私の生まれは酒飲みの多い秋田県で、若い頃は、お盆や正月には親戚が集まって、酒盛りが開かれたものだ。
その場に出されるのは、だいたいが皆さんが飲み慣れているアルコール添加された2級酒(今でいう本醸造の酒)だったのだが、私は少しだけ奮発して、純米吟醸酒を差し入れたことがあった。
口に合うか不安な中で、一口飲んだ叔父は、「おや!きつい!」と一言放ち、私の不安は的中したかと思ったのだが、その後わずか30分でこの一升瓶は空いてしまった。
確かに純米吟醸酒はアルコール度が高く、口に合わない部分があったのだろうけれど、それ以上に身体が美味しかったのだと感じた。
やはり、自然な発酵によるアルコールが身体に美味しいのだ。
アルコール添加酒で高級で美味しいものもあると聞くが、私は添加したアルコールに刺すようなシャープさを感じてしまい、身体が純米酒を求めるようになっている。
なぜ、自然のものが美味しいのだろうか?
人間も自然の一部だからだろうか?
旬のものは美味しく、栄養がある、それ以外にエネルギーが高いなどと言われたりもする。
人間がまだ認識できていない成分がたくさん含まれていて、且つ、バランスがいいのではないだろうか?
例えば、本当は1000種類の成分があるにもかかわらず、人工的に再現する時にその中の5種類を外から持ってきて加える、と言ったような具合。
人間はその中でわかっている一部だけの薄っすい表面だけをなめて、終えて、わかったことにしているのではないだろうか?
ビールの起源は、紀元前4000年以上前。
メソポタミアで人類が農耕生活をはじめた頃、放置してあった麦の粥に酵母が入り込み、自然に発酵したことが発見のキッカケ。
ビールは「液体のパン」とも呼ばれ、栄養価とも高い飲み物とされた。
とにかく、この自然発酵という自然の営みに感謝しかない。
人間は自然を超えられない。
自然を利用してその恩恵に預かるまでだ。
当たり前のことだが、例えばリンゴはリンゴの種からしか作ることができない。
人工的には作れない。
私は、人間による科学の進化を否定したいわけではない。
だが、ここまでの歴史、自分が見てきた経験からも、残念ながらこれは明らかなことだ。
人間が自然の食べ物のイミテーションを作って、それを消費者が「コスパだ、コスパだ」と騒いでいることは、便利になってよいことでもあるが、一方では、緊急時の非常食を毎日食べているだけのように感じられる。
資源がない日本は、この手のイミテーション作りが得意だといういい面もあるが、逆に、社会の日常の食べ物がすべて非常食に、そして、イミテーションに染まっていき、本来の豊かさが知らず知らずのうちに失われていくような危機感を感じないわけでもない。
美味しいが細かく変わる
ここからやっと私の好きなビールの変遷の話。
(全国の地ビールの話はほとんど出てこないのでご容赦ください。)
ビールには、麦芽とホップだけでできているものと、それにコーンスターチ(とうもろこし)を加えているものがある。
<主な麦芽とホップだけのビール>
キリン 一番搾り
サントリー ザ・プレミアム・モルツ
サッポロ エビス
<主なコンスターチを加えたビール>
キリン ラガー
アサヒ スーパードライ
サッポロ 黒ラベル
私は、コーンスターチの入ったビールは美味しいと感じなくなったので、麦芽とホップだけのビールしか飲まなくなった。
これは、3年くらい前からだ。
長らく禁酒していた方から、久々にビールを飲んだら、全く美味しくなくて、その原因がコーンスターチだと思っている、と聞いたこともある。
コーンスターチを入れているビールがこんなに多い国は日本以外にないのではないかと思う。
これもイミテーションと言えるのではないか?
もし、コーンスターチが美味しいビールを作るいい方法ならば、もっと世界に広がっていてもいいはずだ。
コーンスターチは、日本酒のアルコール添加と同様、安くあげるために入れられている。
ちなみに、昨今のブーム、地ビールは大体が麦芽とホップだけのビールになっている。
そんな経緯から、最初の家飲みはもっぱらキリンの一番絞りだった。
コーンスターチが入っていないビールの中で、お値段が安いから、というのがその理由で美味しくないと感じなかったから。
その後、ザ・プレミアム・モルツが美味しいと思って時々飲んでみていたのですが、昨今の地ビールブームなどもあって、いろいろ飲んでみた結果、昨年の私のブームは、「India Pale Ale(インディア・ペールエール)」という種類のビールに一旦落ち着いた。
よなよなの里 インドの青鬼 をよく飲んでいた。
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キリン グランキリンIPA も好きだ。
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自分は、味のコク(旨味)や苦みなどが好きなのだろうと思う。
一方で、スッキリして切れのいいだけのビールは物足りず、また、果実の香りがするような夏場に出てくるトロピカル系ビールもあまり好まない。
そんなこんなしているうちに、今までで最も美味しいと思えるビールに出会うことになった。
徳島県にある「上勝ビール」だ。
2019年に現地徳島で始めて飲んでみて美味しかったのだが、その後それより美味しいビールが出てくるだろうと思っていたが、出てこない。
最初が現地で飲んだので、旅のバイアスがかかっているのでは?と自分を疑って、通販で取り寄せたがやはり美味かった。
コク、苦みもそう、でもそれ以外にうまく表現できないのだが、とにかく酵母が生きているような感じがして美味しい。
未だに私のNO.1に君臨し続けている。
上勝ビールは高額だからその分、当たり前なのかもしれない。
高額だから毎日飲めるものでもない。
さて、今年に入ってからはIPAが少し重く感じてきて、今美味しいと思うのは、『エビスビール』になった。
『一番絞り』は、最近またリニューアルして美味しくなった、とあったが、私にはそう思わなかった。
以前より、よりまろやかになって、少しあった苦みが失われたように感じる。
もうひとつ、鳴りもの入りで新発売したキリンの『SPRING VALLEY BREWERY(スプリングバレー)』。
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これもまろやかでコクがあって非常に飲みやすく美味しいが、やはり苦みや他の何かが物足りない。
同じ値段のグランキリンIPAの方が美味しいと思う。
キリンの『新・一番搾り』『スプリングバレー』は両方とも味わいが似ているように感じる。
ねらっているターゲット層が私のような層とは異なるのだと思う。
ビールを苦いと言って飲まなくなった若者や女性がターゲットなのだろう。
今でもサントリーの『ザ・プレミアム・モルツ』も時々飲みたくなるのだが、コクや甘さが立っていて、やはり苦みに欠ける。
『エビスビール』はこれらに比較すると、コク、旨味、苦みなどのバランスがよく美味いと感じられるのだ。
「~苦みの好き嫌いはどうやってできたのか?~」
”苦み遺伝子”のある人は、苦みを敏感に感じることができる。
この遺伝子は、苦み=毒(植物などの)を認識し、食べないようにするために備わった。
これが第一弾の進化。
アフリカで誕生した人類は、各地に移動する中で、一部の人間が空腹で苦いものも食べざるを得なかった。
その結果、苦いものでも毒ではなく、体が元気になるものがあることを発見した。
苦いもの=毒ではない、更には苦いもの=美味しいという認識が追加されるに至った。
これが第二弾の進化。
”苦み遺伝子”のない人は命を落とすリスクが高かったから、”苦み遺伝子”は敏感の程度はあるものの人に備わり、
その後空腹過ぎてどうしようもなくで苦みのある食べ物を食べるチャレンジをした人が、苦みを美味しいものと認識していった。
究極は、空腹であれば何でも美味しいということに尽きるということなのかもしれない。
私は、空腹でありかつ挑戦的だった祖先の血を受け継いでいるということになる。
参考:人類の果てなき欲望!?人はなぜ“おいしさ”なしに生きられないのか?
ところで、ずいぶん前にキリンやエビスの工場見学をした時のビールも美味しかった。
銘柄どうという以外に、作りたてというのはまた、別であることは間違いない。
これは全く別の比較になる。
美味しいビールの究極は、出来立てのビールを自宅のビールサーバーに定期的に送ってもらえるシステムになるのだろうか・・・
上には上がある。
どこまでやるかはわからない。
今はそこまではやるつもりがない。
最近、街に増えている醸造所で、出来立てをいただくのもありだと思う。
ここまでは、近場でこれだというものは見つかってない。
店で飲めるようになったら近場の好きな出来立てビールを探し当てたいものだ。
他のものについても
もう一つ別のものでの比較も上げておきたい。
『無糖レモン炭酸水』
最近、無糖の飲料水がいろいろ出てきて、嬉しい限りだ。
比較してみたのは以下の3つ。
サントリー 天然水 スパークリングレモン
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キリン キリンレモン無糖
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ポッカサッポロ キレートレモン 無糖スパークリング
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結果は、『サントリー 天然水 スパークリングレモン』に軍配が上がった。
以前、自然栽培のレモンを絞った炭酸水やサワーを飲んでいたことがあった。
これも何にも増して美味かった。
『サントリー 天然水 スパークリングレモン』は有機レモンの絞り汁を入れているから、それに一番似ている。
ところが、商品レビューに「香料が入って、美味しくなくなった」(2019年のリニューアル時)というものがいくつかあった。
メーカー問い合わせをした人のレビューによると保存料や添加物が増えた、とのこと。
身体は自然を求めているのだが、商品はどんどん本物から離れていき、自分は人工物に飼いならされていく。
残念なことだ。
『ポッカサッポロ キレートレモン』はレモン果汁が一番多く含まれていて、レモンの味が一番強いのだが、その味以外にお酢のような味が混じっている。
これは何なのだろうか?
『キリンレモン無糖』は、何か苦い人工的な味がする。
こちらもレモン汁が入っているから、レモン汁以外の人工物の含有割合の違いなのだろうと思う。
自然のものが多く含まれている商品を多くの人が好んで選んで、その商品が長く残っていくことを願っているのだが・・・。
人工物、薬天国の日本、この点については欧米の風土が羨ましい。
そんな風土だから、特に日本においては、自然のものだけを食べるケースがどんどん減ってしまう。
そうすると、自然なものを美味しいと感じる人は少なくなっていくのではないだろうか?
質はともかく、”豊かに食べている”風のイミテーション生活。
自然のものだけを食べる人と添加物を中心に食べる人では、その先の未来に何が起こるだろうか?
寿命はどうだろうか?
いろんな思いは去来する。
これらの思いは置いておいて、一番大切なことは、生きているならば、美味しさを感じることをちゃんと選択することだと思う。
しかし、本物に出会わないといつも食べているものが美味しくないイミテーションであることに気がつかない。
これが陥りやすいこと。
ということは、本物(いいもの)を食べる選択を自らしないと始まらないということだ。
思えば、自分のこの感覚は、わがままな父親譲りのものかもしれない。
これからも味の好みはビールのように変わっていくだろうと思う。
その時その時のこの自分の感覚を大切にしたい。
忙しさに紛れず、感覚をごまかさず、正直に。
自分が感じることを逃さず、美味しいと思えるものを可能な範囲で味わっていきたい、と思う。
イミテーションに比べて、本物のビールの値段が高いことに対しては、飲む量を減らす、休肝日を作ることで対応したい。
仕事の後に、登山の後に、サウナの後に、この夏、まだまだ好みのビールを愉しめそうだ。
Photo by Blake Wisz on Unsplash
【著者プロフィール】
RYO SASAKI
味について四の五のと書きましたが、美味しさを感じるには、空腹にすること、汗をかいて、のどを渇かすこと。
そのためにいい仕事をすること。
これが最も大切なことなのかもしれません。
それでもそれに妥協せずに・・・と思っております。
工学部を卒業後、広告関連企業(2社)に29年在籍。 法人顧客を対象にした事業にて、新規事業の立ち上げから事業の撤退を多数経験する。
現在は自営業の他、NPO法人の運営サポートなどを行っている。
ブログ「日々是湧日」
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これからもRANGERをどうぞご贔屓に。