田中 新吾

「世の中には2種類の人間がいる」という話をふと思い出した件について。

タナカ シンゴ

少し前に以下のような投稿をXにした。

これは、とあるmtgに参加をしている中で参加されていた方の発言をきっかけにふと思い出し、そこから投稿に至ったものである。

念の為に添えておくと、

フォアキャスティングとは「現時点であるものを起点として考える思考法」のこと。

これに対するのがバックキャスティングで、

バックキャスティングとは「あるべき理想の姿から逆算して今やるべきことを考える思考法」のことである。

ご存知の方もきっと多い考え方だろう。

少し付け加えておくと、この社長面接は無事にクリアし内定もいただいたのだが結局そこに入社することはなかった。

しかし、就職説明会に人生で初めて行った会社だったこと、面接が6回もあったこと、人事の女性がインパクトがあったことなどから、その当時のことは時々頭に浮かんでくる経験となっている。

今回のmtgもこの経験を思い出す契機となった。

そして、この記憶の甦りに連鎖するようにまた別のことがふと蘇ってきたのだ。

それがタイトルにもしている「世の中には2種類の人間がいる」という話である。

この話は、スタジオジブリプロデューサーの鈴木敏夫さんがしている話として2017年に読んだある本の中で知った。

初めて知った時、本当に大きな納得感を得たのをよく覚えている。

鈴木敏夫さんのお弟子さんにあたる石井朋彦さんの著書「自分を捨てる仕事術」の中にそのエピソードが出てくるため以下で引用しながらご紹介してみたい。

鈴木さんはよく、ジブリ作品のヒロインを例にとり、世の中には2種類の人間がいる、ということを説明していました。

『耳をすませば』の月島雫と『魔女の宅急便』のキキです。

ふたりとも同じ思春期の女の子です。

雫かキキ、どちらが好きかで、その人のタイプ、人生における価値観が決まる、という質問なのですが、答えはこんな感じです。

将来に夢を持って突き進むタイプが「雫型」。

夢や希望よりも、自分に与えられた仕事を一つひとつこなすのが「キキ型」。

石井さんによれば、鈴木敏夫さんはお客さん(特に若い人)に「雫か?それともキキか?」の質問を度々投げかけるそうだ。

そして、雫を選んだ人にはちょっと耳の痛い話が返って来るという。

「ぼくはね、キキが好きなんですよ。雫はね、小説家になろうって決意するでしょ。

好きな男の子がバイオリン職人を目指しているのを見て影響されちゃってさ。

でも、雫に本当にそういう才能があるかわからないでしょ? 

雫が書いた小説を爺さん(西老人というキャラクター)が読んでさ、『君は原石だ』って言うじゃない? 

でもあれって無責任だよね、もしかしたら雫はこれから、自分に才能がないと知ってものすごく苦しむかもしれないのに」

「それに引き換えキキにとって『魔女』っていうのは、親から受け継いだ血でしょ? キキは、生まれつき自分が持っている能力を生かすにはどうすればよいか……と考えて、『魔女の宅急便』の開業を決意する。

そのなかで、挫折を経験して飛べなくなり、出会いと学びを通して再び飛べるようになる。

自分の持ち物を理解して、どう働くかを考え、一歩一歩、その目標に向かって努力する。

ぼくはキキの生き方のほうが好きだなぁ」

さて、いかがだろうか。

著者である石井さんは鈴木さんのこの話に影響を受け、元々は「雫タイプ」だったところから「キキタイプ」、つまり、あまり先のことを考えず、とりあえず自分に与えられた仕事を、毎日少しづつでも前進させることに集中するように変わっていったという。

そして、それによって毎日が充実し、変な悩みを抱くことがなくなったそうだ。

石井さんの別の著書「思い出の修理工場」を読むと、石井さんが鈴木さんに影響を山ほど受けていることがよく伝わってくる。

もし良ければ手に取ってみて欲しい。

冒頭の投稿のとおり、昔からフォアキャスティング思考だったことが影響してだと思うが、初めてこの鈴木さんの考え方に触れた時、遥かに大きな共感を覚えた。

そして、自分もおそらく「キキタイプなのだろう」と思うに至った。

未来について予測を立てたり、未来を考察できる人を見ると羨ましく思う時もゼロではないが、はっきり言って私にそういう所業は経験的に難しい。

これまで試してみた中で、それをすることによって上手く行った試しが記憶の限りないのというのもある。

だからこそ、私に向いている所業としては、やったことをふまえて次の一手を考え、将来の夢や希望を持って進むよりも、自分に今与えられた仕事一つ一つに心をこめてこなす以外にない。

このような考え方は、一見保守的に見えるかもしれない。

だが、実際には非常に現実的で実行可能なアプローチだと私は感じている。

一つひとつの課題や仕事に対して真摯に向き合うことで、確実に成果を積み重ねていくことができるからだ。

私自身、これまでの経験から学んだことがある。

それは、どんなに小さなステップでも、一歩一歩進んでいくことで、気づけば大きな成果を生むことができるということ。

鈴木さんのおっしゃる「自分はキキタイプ」という考え方を持つようになってから、自分の仕事に対するアプローチは確固たるものとなった。

その結果として、未来に対する不安や焦りが減り、今ここに集中することで心の平穏を保つことがかなりの場面で増えたと感じている。

最後に、誤解しないでいただきたいのは、私がたまたま「キキタイプ」であっただけで、「雫タイプ」を否定しているわけではないということ。

思うに、自分のタイプを知り、その特性を活かすことこそが肝要。

そして思うに、どちらのタイプであっても、自分の道を信じて進んでいけば、必ずや素晴らしい成果を得ることができるはず。

引き続き私は「キキタイプ」として目の前のことを丁寧に積み上げていきたい。

画像出典:https://www.ghibli.jp/works/majo/#frame

UnsplashJonas Weckschmiedが撮影した写真

【著者プロフィールと一言】

著者:田中 新吾

プロジェクト推進支援のハグルマニ代表(https://hagurumani.jp)|プロジェクトデザイナー|タスクシュート認定トレーナー|WebメディアRANGER(https://ranger.blog)管理人|ネーミングの仕事も大好物|白湯の魅力や面白さをお伝えする活動もしています(@projectsau

●X(旧Twitter)田中新吾

●note 田中新吾

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