田中 新吾

「ChatGPTは仕事のどの部分のスピードを上げてくれているのか?」について今思うこと。

タナカ シンゴ

あらためて言うまでもなく今「生成系人工知能(Generative AI)」が大変かまびすしい。

具体的には、ChatGPT, BingAI, Midjourney, Stable Diffusionなどのインターネット上に存在する既存の文章やイメージを大量に機械学習し、これに強化学習を組み合わせるなどして、一定レベルのクオリティの文章や画像を生成するシステムのことだ。

いずれも触ってみればその威力は瞬時に分かる。

インターネット、スマホが現代社会において当たり前となっているように、半年後、1年後には生成系人工知能が当たり前となっている社会の解像度は高い。

「大変革の時を迎えている」というのはこういう時こそ使うべき表現なのだろう。

かくいう私も生成系人工知能に日々触れており、Midjourney、StableDiffusionからはじまり、現在特に触っているのは絶賛話題のLLM「ChatGPT」だ。

しばらくは無料で使えるGPT3.5を使っていたが、今では有料の「GPT4」を使っている。

この有料モデルへの切り替えに至ったのには明確な理由がある。

それは「GPT3.5のChatGPTを使っていく中で、仕事のスピードが間違いなく上がっている」という実感をもったから。

仕事のスピードが今よりも上がるのであれば多産になれる。

あるいは浮いた時間を使ってより重要なことに時間を使うことができる。

ならば課金も悪くないといった意思決定だ。

単純に使っていく先にどんな経験があるのか、知的好奇心による部分も大きい。

今のところ、私がChatGPTを使う目的としては以下に集約されている。

異視点の抽出

基本リサーチ

ドラフト作成

この3つはプレジデントオンラインの記事にも記載されていた内容なのだが、まさに我が意を得たりというところで引用させていただいた。

そして以上の目的で使っている中で仕事のスピードが上がったことを実感している。

ではもう少し深く、一体仕事のどの部分のスピードをChatGPTは上げてくれているのだろうか?

現時点の私が思うに、ChatGPTは大きく分けると二つの部分に効いていて、仕事のスピードを上げてくれている。

一つは仕事を進捗させる部分。

もう一つは仕事に着手する部分である。

ChatGPTのストロングユーザーであればもはや当然のことかもしれないが、私自身の経験として以下に書いていきたい。

なお、具体的な活用術(こういう命令文を入れたらこういう出力が得られたといったようなもの)については触れておらず、そのような話はSNSで探せばいくらでもあるのでそちらを参考にしてもらえればと思う。

二人(私とChatGPT)でやっているという感覚

どんな仕事においても言えることだと思うが「意味があると感じている」「前に進んでいることを感じている」という二つの感覚があるとやる気は持続し、仕事はどんどん進捗していく。

「進捗」と「やる気」の関係は、テレサ・アマビール氏のモチベーション研究でも明らかで納得感は高い。

特に重要なのは後者で「前に進んでいることを感じている」は、自分の成長や進歩を実感することにもつながり、仕事に意味を感じる度合いが増幅していく。

逆に、この感覚が得られない場合はやる気が続かずに途中で放り出してしまったりという具合だ。

「前に進んでいることを感じている」という感覚が、仕事を「進捗」させてくれるわけだが、ワークフローの途中途中に登場する「調べごと」「思考」「文章化」のような細々としたタスク、あるいは「人間関係による摩擦」によって仕事の進みは止まったり遅れたりしていく。

調べたいものが見つからなかったり、考えがまとまらなかったり、うまく言語化できなかったり。

こういうことによって「やる気」は徐々に削がれ「後でやればいいか」といった思いが生まれたりして、思い通りに進んでいかないことはままある。

ChatGPTはこの部分にまず効いている。

ワークフローの途中途中に登場する「調べごと」「思考」「文章化」のような細々としたタスクを、ChatGPT前は基本的に一人ですべてやっていたところに、今はこれを二人(私とChatGPT)でやっている、という感覚があるのだ。

散々言われている通り、ChatGPTは出鱈目なことを言う場合があり、本当に?と疑わざるを得ない生成結果になることだってある。

だから批判的な思考、生成に対しての逐次の検証を欠かすことはできず、自分の求める結果を導くためには適応する力や粘り強さが必要だ。

それでも、一人で処理していた時と比べて「調べごと」も「思考」も「文章化」も間違いなく進めやすくなった実感がある。

その結果、ChatGPT以前よりも「前に進んでいることを感じている」という感覚が得られ、仕事は進捗していき、生産性が上がっているという状況だ。

さらに「人間との対話のようなチャット形式」ということも、私の中に「前に進んでいることを感じている」をいい具合に醸成してくれている。

直近では、とあるネーミング開発・コンセプト開発を行う中でこのことを強く実感した。

「?」が浮かんだらChatGPTに聞けばいいというメンタル状態

そして二つ目の仕事に着手する部分の話である。

私はこれまでの経験の中から、仕事において「時間あたりの生産性」を上げるには、実は、仕事そのもののスピードを上げるよりも「仕事に着手するまでの時間」を短縮する方が効果は高いと長らく考えてきた。

これは「プロセスエコノミー」や「モチベーション革命」の本で知られるIT批評家の尾原和啓さんも著書の中で話している。

時間あたりの生産性を上げるには、行動そのもののスピードを上げるよりも、行動に移るまでの時間を短縮するほうが効果があります。

思いついたら即行動、ができないのは、たいてい不安になって自分の中で対話を始めてしまうからです。

「あれで本当によかったのかな?」「もっと別のやり方があったんじゃないかな?」とつい心の中で対話を始めてしまうと、次の一歩を踏み出すのが難しくなります。

脳科学でわかっているとおり人間の「やる気」というのはやりはじめるから出てくるものであるから、極端な話、着手さえしてしまえば仕事は進んでいく。

しかし緊急度や重要度が高いものは自然と着手するが、仕事というのは緊急度や重要度が高くないものの方が断然多いのが実情。

そして緊急度や重要度が高くないものは「今すぐやらなくてもいい」などとあれこれ理由を付けてなかなか着手しないというのがある。

やがてこれらは積み重なり全体の生産性の低下につながるという始末だ。

このような状況をふまえているからか「仕事に着手するまでの時間」の重要性を感じている人は私の観測範囲でも結構いる。

そのような方々は以下のような対策を講じたりしている。

・タスクリストの作成

・作業環境の整備

・時間管理アプリケーションの活用

私に関しては、以前も記事にしたことがあるタスクシュートクラウドというアプリケーションを今だに頼り、仕事に着手するまでの時間の短縮に努めているといった具合だ。

参照:「全部タスク」にしたら、今までとはまるで違う人生が訪れた、という話。

このアプリのおかげで着手するまでのタイムロスはずいぶんと減った。

しかしながら、例えば「多くの調べごと」が発生するような仕事の場合、どうしても気が進まず着手するまでに時間がかかることはまだあった。

ところが。

ChatGPTを使うようになりここに変化が生じてきている。

「?」が浮かんだらChatGPTに聞けばいい。

今の私にはこのようなメンタル状態が作られており、このおかげで今まで着手に時間がかかっていた仕事にも着手しやすくなっている実感があるのだ。

今までもGoogleに代表される「検索エンジン」に頼ることはあったが、それとはだいぶわけが違う。

検索エンジンの場合は、調べたことに関連する内容を記したサイトがリストになって出てくるので、出てきたリストの中からリンクをクリックしてサイトを開き、情報を読み取る作業を私たちは行う。

そして、それらのサイトに書いてある内容を自ら解釈し知識を総合して理解しなければならない。

一方のChatGPTは、質問すると質問に対して自動的にとりまとめてもっともらしく回答してくれる。

一発の入力でダイレクトに調べごとを得ている感覚はまだ少ないが、ChatGPTとの対話による調整行為を行っていく中で、かなりの部分で知りたいことに近づくことができたりする。

こういう実感とそれによって生まれたメンタル状態があるから、多少面倒な仕事であっても以前よりもよりタイムロスなく、着手できるようになっているのだと私は思う。

この経験は「検索エンジン」では決して得られなかったものだ。

今年をポイントに自分の働き方や仕事、社会が劇的に変わる

以上が「ChatGPTは仕事のどの部分のスピードを上げてくれているのか?」について私が今思うところである。

ざっくりとしていて拙い経験則ではあるが何かの参考になれば嬉しい。

しかし本当に、ChatGPTをはじめとした生成系人口知能の話題が毎日事欠かない。

それはその進化のスピードが私たちの想像を遥かに超えてくるからだろう。

できることの拡張が日々半端じゃない。

そういえば最近、2015年にサカナクションが楽曲を担当したNHKスペシャル「NEXT WORLD 私たちの未来」という番組があったのを思い出した。

この番組のコンセプトは「2045年の未来世界を予測する」というものだったが、ここで描かれていた世界も遠くない未来のように今は思える。

さらに、生成系人口知能の爆誕爆進で、落合陽一さんが提唱している「デジタルネイチャー」という新たな自然の概念が真に現実化されてきているのも感じる。

自然が風や雨を勝手に生み出すように、機械が様々なものを勝手に生み出していく。

そう思うと、機械も自然のような環境と変わらなくない?という考え方だと私はざっくり解釈している。

現時点では仕事のサポートをしてくれている感覚があるが、この進化のスピードを思うと、半年、1年経ったら「あれ、僕がやる仕事本当になくね?」という感覚を得ている可能性だって十分にある。

今年をポイントに「自分の働き方や仕事、社会が劇的に変わる」という覚悟をしっかりと持つべき時なのだろう。

しかし今の状況の捉え方は人によって千差万別だと思うが、私に関してはこういうダイナミックな変化が自分の中の幅をどんな風に拡張してくれるのか、結構愉しみだったりする。

少し前に、落合陽一さんがとある番組の中で「人間は躊躇する能力が高すぎる」と述べていたのが印象的だった。

このかまびすしい状況、開かれてしまったパンドラの箱に対して、自分自身の納得感を得るためにも、距離を取るのではなく、引き続きできるかぎり触れるようにしていきたい。

それが自分が幅を愉しむことにもつながり、これからのスタンスを決めることにもつながると思うから。

当然、入力する内容についてはググる以上に遥かに気を配って。

今書きたかったことはこんなところである。

UnsplashJonathan Kemperが撮影した写真

【著者プロフィールと一言】

著者:田中 新吾

プロジェクトデザイナー|プロジェクト推進支援のハグルマニ代表(https://hagurumani.jp)|タスクシュート(タスク管理術)の認定トレーナー|WebメディアRANGERの管理人(https://ranger.blog)|「お客様のプロジェクトを推進する歯車になる。」が人生のミッション|座右の銘は積極的歯車

生成系人工知能に聞けば、アイデアや答えを教えてくれる世の中において人は何を求めるのか?人と対話をする目的はまず間違いなく変化するのだと思います。

●X(旧Twitter)田中新吾

●note 田中新吾

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