田中 新吾

「見えなくする化」で、今やっていることに深く集中する。

タナカ シンゴ

以前、知人から「目の前のタスクに集中するために行っている工夫を教えて欲しい」とお願いをされたことがある。

2017年にマーケティング会社を離れて以来、テレワーク中心で仕事をしており、その間に自分なりの工夫をいくつか見つけて実践してきた。

その中から特に効果を実感しているものをお願いに答える形で幾つか紹介した。

例えば、以下のようなものである。

・スマホは別の部屋に置く

・ヘッドフォンをして外界の音を遮断する

・目の前のタスクと関係のないブラウザタブは閉じる

・ディスコード、スラック、ラインワークスなどのチャットツールは切る(チャットツールを使うタスクの時のみ起動させる)

・SNSはログアウトしておく(SNSを使う時のみ起動させる)

・デスクの上に置いてあった資料や本は片付けて視界に入らないようにする

・(自宅作業の際は)ワイドモニターいっぱいに作業画面を広げて他のファイルや画面が見えないようにする

これらは今もなお意識的に取り組んでいる事柄で、こうでもしないと私は目の前のタスクに深く集中することができない。

そして、これらの取り組み・工夫は、今現在「見えなくする化」という概念によって私の中で抽象化されている。

「見えなくする化」とは一体どんな概念なのか?

初めて聞くという人も多いと思うため、以降で詳しく書いていきたいと思う。

トンネルの中を走っている最中は外の情報が一切耳目に入ってこない

私が「見えなくする化」という概念を知ったのは昨年の秋、タスクシュート認定トレーナーになるための講座を受講している時だった。

タスクシュートをよりよく実践するためメソッドの中には「こういうことを意識するとよい」というものが幾つもあり「見えなくする化」はそのうちの一つである。

ここで突然だが、トンネルの中を車で走っている時のことを思い浮かべてみていただきたい。

ーイメージ中ー

イメージされた通りだが、トンネルの中を走っている最中はトンネルの外の情報が一切耳目に入ってこない。

ゆえにトンネルを走り切ることにだけに意識が向き、集中して走ることができる。

タスクシュートで一日のプランを作ることは、まさにこのトンネルを作ることとイメージが似ているのだ。

割り込みタスクが全くないわけではないが、基本的に作成したプランがトンネルのように機能し、余計なタスクが視界に入らないようにしてくれる。

これにより今日一日やることにだけ注意を向けて集中することができるのだ。

タスクシュートを使い続けている人であれば「タスクシュートはトンネルと見立てられる」と聞けば割とすぐに納得されるのではないだろうか?

私が現在愛用しているタスクシュートクラウドの気が効いているなあと思うところは、完了済みのタスクは盤面の上で非表示にすることができる、セクション毎にタスクを表示することができる、タスクにぶら下がるコメントも表示非表示のオンオフが簡単にできる、などを挙げたい。

このように各所に見えなくする化の機能が実装されているのだ。

そして、「見えなくする化」という概念を学んだ時、冒頭で述べた私が集中を高めるために実践してきた方法も、実は「見えなくする化」に他ならないと理解した。

抽象化が行われた瞬間だった。

参考:「タスクシュート認定トレーナー」になったので、今後の活動方針を定めました。

見えなくする化の応用例その1

「見えなくする化」という概念を得た私は、その頃から応用できるところが他にもないだろうか?と考えては試すようになった。

試している中で個人的にしっくりきているものが2つある。

それぞれご紹介してみたい。

一つ目はランニングだ。

今の私には「平日夜に2.5kmの距離を走る」というルーチンがある。

会食が入った場合や大雨の場合は実行できないこともあるのだが、基本的には実行することができているものだ。

「走ること」は私がよく生きる上ではどうやら欠かせないようで、走る距離、時間、時間帯などこれまで何度も試行を重ねてきた。

そんな中で「見えなくする化」という考え方に出会ってからは、夜という時間帯が非常にしっくりくるようになった。

イメージされている通り、夜道は周囲が暗いため視覚情報が入ってきにくい。

前述のトンネルに近い状態だ。

その他の情報に意識がとられないため、1歩づつ足を出して、走っているこの時間にしっかり意識を向けることができる。

走り終えた後の気分を極上に思えるのは、その時間、深く集中し、走っていることと一体化できている証拠なのだろう。

個人的に思うに、明るいうちのランニングでこの状態を作るのは難しい。

見えなくする化の応用例その2

二つ目はストレッチである。

ランニングと同じく「入浴後にストレッチをする」というルーチンも私の日常生活に設定されている。

ランニングは平日だけのルーチンだったのに対して、ストレッチは休みの日も加えたそれこそ毎日のルーチンだ。

ストレッチ用のマットとストレッチポールを用いて10分ほどじっくり行うものなのだが、今年になってからこの時間の質に大きな変化があった。

私は日常的にコンタクトレンズを装着しており、コンタクトがなければ全てがぼやけて見える。

目に大きな障害を抱えている一人の人間だ。

そのため夜になると目に負担をかけないように眼鏡に変えるのだが、昨年まではストレッチをする際もコンタクトをつけたまま行っていた。

しかし、今年に入ってふとコンタクトもメガネも外してからストレッチをやってみよう!という思いに至る。

実際に試しにやってみると、想像していた以上にストレッチをしていることに意識が注がれ、じっくり集中して行うことができたのだ。

この経験、感覚を得ることができたのは、私の視力が極めて悪く、視覚情報がまったく入ってこなかったからに違いない。

何となく試しにやってみたものだが、見えなくすることによって今やっているストレッチに深く集中することができる、見えなくする化の力をここでも強く実感しているのだ。

ということで、今年はストレッチを科学したい。

見える化と見えなくする化

私は随分と長いこと「見える化」することに大きな価値を見出してきた。

例えば、以前記事にした構造化も見える化の一つと言っていいだろう。

参考:昔学んだ「人と話すときはできるかぎり構造化した情報を持ち込むと良い」は、今もとても役に立っている。

しかし、今回の話で明らかなように「見えなくする化」にも遥かに大きな価値がある。

スマートフォンを別室に置く、ヘッドフォンで外界の音を遮断する、必要のない情報源を遠ざけるなど、私が実践している工夫のすべては「見えなくする」ことにより、本質的なタスクへの没入を可能にする。

このアプローチは日常生活の中でも応用が可能であり、ランニングやストレッチといった活動を通じても、集中力と没入感を高めることができることを掴んできた。

そして、これらの活動から得られる満足感や達成感が、日々の生活の質を間違いなく向上させている。

思うに「見えなくする化」を取り入れることで、私たちはより一点集中の力を養い、生活のあらゆる面でより高い成果を出すことが可能になっていく。

ここにはかなり強い確信があるため、引き続き「見えなくする化」の実践と応用場所の探求に励んでいきたい所存でいる。

UnsplashWarrenが撮影した写真

【著者プロフィールと一言】

著者:田中 新吾

プロジェクトデザイナー|プロジェクト推進支援のハグルマニ代表(https://hagurumani.jp)|タスクシュート(タスク管理術)の認定トレーナー|WebメディアRANGERの管理人(https://ranger.blog)|「お客様のプロジェクトを推進する歯車になる。」が人生のミッション|座右の銘は積極的歯車

見えなくする化を知った時、まさか視力の悪さに対して肯定的になるとは思ってもいませんでした。

●X(旧Twitter)田中新吾

●note 田中新吾

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