田中 新吾

「質問してもらえる力」も、質問力。

タナカ シンゴ

現代には「質問力が重要」という強い風潮がある。

だからこそ、その人の「質問力」が発揮された場面には称賛の声が多く集まる。

人には質問をされると、その質問内容を考えてしまう性質があるため、

人に何かを考えてほしければ「質問」をすればいい。

そして、その「質問」はコミュニケーションの「きっかけ」になる。

「どんな人が活躍されていますか?」

「どんな人から家を買いたいですか?」

ツイート内の「質問」にしても、相手の思考を発生させ、コミュニケーションを生む「きっかけ」になっているのが分かる。

コミュニケーションの中から、人の考えを知り、物事を一緒に進めていかなければいけない仕事が多くを占める時代だからこそ、「質問力が重要」という風潮が出来上がるのも理解はできる。

これについての異論は特にはない。

ただし「質問力の定義」については思うところがある。

何かというと。

質問力とは、一般的に「質問する力」と定義されることが多いが、

質問してもらえる力」もそこには含まれるのではないか、ということだ。

自分から質問をしなくても、会話をはじめることはできる

先日、久々に行きつけの美容院に行ってきた。

長いステイホームで伸びてしまった髪を切ってもらい、ヘッドスパもしてもらって、頭にかかっていたストレスをすべて発散してきた。

頭の細胞も自粛期間を終え、ようやく活動再開だ。

前回お店に来たのは3月中旬でしたから、美容師さんとお会いするのは2ヶ月以上ぶり。

そのせいもあったと思うが、とにかくたくさん「質問」を受けた。

美容師さん「え?めちゃくちゃ痩せました?

私「あ、分かりますか?」

美容師さん「はい、マスクの上からでも分かります!一体どうしたんですか?

私「自粛期間だからとか関係なく、今年のはじめから習慣を変えようと思っていくつか試しに取り組んでたら、痩せたんですよね〜」

美容師さん「すごいですね。実際どのくらい体重は減ったんですか?

私「今年に入って12kg減りました」

美容師さん「12kg!?!?それはすごい。どんなことやってたんですか?

私「そうですね。まずをお酒を飲むのをやめまして…」

美容師さん「おー!!それはすごいです。一滴も飲んでないんですか?

私「はい。でもオンライン飲み会とかはあったんで、時々ノンアルコールビールは飲んだりしていましたが、それでも本当に時々でしたね。」

美容師さん「お酒をそんなにすんなりやめられるとは…すごいですね。」

美容師さん「何か運動もされていたんですか?

私「いやこれが実はほとんどしてなくてですね…」

美容師さん「そうなんですか?それでそんなに痩せるんですね。ますます気になる。」

私「はい、走ったりもしようかと思ったんですがきっと続かないだろうなと思って、家で寝転がりながらできる短い時間のマット運動をしてました。」

私「極力続けられそうな方法を選んだというか…」

美容師さん「なるほどなるほど。それは賢い考え方ですね。」

美容師さん「お酒やめて、マット運動して、その他には何かやったんですか?

私「そういえば、白湯(さゆ)を毎日飲んでます。」

美容師「白湯ってあのお湯の?

私「正確に言うと白湯ってお湯ではないんですよね。」

私「かくかくしかじかほげほげで…」

結局この日、私の方から話題提供をすることはなく、美容師さんからの「質問」に対して答えていくだけで、すべての会話が成立していた。

思うに、コミュニケーションを生むきっかけは基本的に「質問」だが、必ずしも自分から「質問する」ことが求められるかというと、そうとは限らない。

自分から「質問する」ことをしなくても、会話をはじめることは十分に可能。

どうするかというと、思わず相手が「それは何ですか?」と質問したくなるようなアイテムを持っておけばいいのだ。

先ほどの会話を例とすれば。

私の「12kg痩せた」という事実が、思わず相手が「それは何ですか?」と質問したくなるようなアイテムになっていた

ということだ。

自分が話かけなくてもいいように工夫をする

この考え方は以前読んだ、対孤独の研究者「吉藤オリィ」さんの書籍がベースとなっている。

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私と同じように「コミュニケーション・非ネイティブ」は人が多いコミュニティに飛び込んでも人に話かけられず、どうしたらいいのかわからないこともあるだろう。

最初にアドバイスしたいのは「自分が話かけなくてもいい工夫をする」ということ。自分からいくな。全力で待ち構える作戦だ。

(中略)

会話のきっかけというのは、基本的に「質問」だ。

コミュニケーションが苦手な人は、質問がうまくできないことが多い。

であれば、自分から質問するのではなく、思わず相手が「それはなんですか?」と質問したくなるようなアイテムを持ち、待ちかまえておけばいい

そして、オリィさんのこうした考え方から生まれたのが、トレードマークとなっている「黒い白衣」だ。

黒い白衣は、オリィさんが18歳のときにつくったもので、当時はいまよりももう少し奇抜な形状をしており、初対面の人が最初に服装について質問してもらえるように企画したそうだ。

これを見て、相手が「その服、珍しいね」「どこで買ったの?」などと質問してくれる。

すると「これは私がデザインした白衣なんですよ」「じつはそでのところにICカードが入っているんですよ」などとあらかじめ準備しておいた会話をするだけ。

コミュニケーション・非ネイティブだったオリィさんは、この方法でずいぶん友人をつくることに成功したと言う。

自分が話しかけなくてもいいように工夫する

これは「自分から質問するのは苦手だが、誰かとコミュニケーションを取りたいと思っている人」ができる最大限の努力であり、最大限の愛情表現だったのだ。

「質問してもらえる力」も、質問力

「質問力」の中には、「質問する力」だけでなく「質問してもらえる力」も含まれるのではないか。

このように考えるようになったのも、オリィさんの捉え方を知ってから。

「質問してもらえる」ためには、相手が質問しやすい「小ネタ」や「状況」をつくることが欠かせない

つまり、コミュニケーションをとる相手を想定し、どうしたら質問してもらえるか。どうしたらその質問を端にしてコミュニケーションのラリーが発生するかなどを思考しなければいけない。

そして、思わず相手が「それは何ですか?」と質問したくなるようなアイテムを企画し、準備しておく。

これはもう立派な「スキル」と言っていいのではないか。

「質問する」ことで質問を発生させることができれば、「質問をしてもらえる」ことでも質問を発生させることができる。

豊かなコミュニケーションの解釈は様々あるが、思うに「色々なバリエーションで質問を発生させることができる」というものその一つ。

したのようなものは参考になりそうなアイデアだ。

他者との応対にこそ人間の知性が表れる」と孔子は言う。

「質問してもらえる力」を含めた「質問力」はまさに、人間の知性が表れるところなのかもしれない。

Photo by Toa Heftiba on Unsplash

【著者プロフィール】

田中 新吾

プロジェクトデザイナー/企業、自治体のプロジェクトサクセスを支援しています/ブログメディア(http://ranger.blog)の運営者/過去の知識、経験、価値観などが蓄積された考え方や、ある状況に対して考え方を使って辿りついた自分なりの答えを発信/個人のプロジェクトもNEWD(http://ranger.blog/newd/)で支援

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