軽薄短小は社会悪?!本物と出会って軽薄短小な自分は変わる。
何回も買って試しているが、上手く行かないものがある。
それはロードバイクに取り付けるライト。
ネットの評判を見てリーズナブルなものを購入してみたのだが、最初のものは1ヶ月程度で光らなくなった。
次のものは電池が切れて取り替えようとした時に、電池パックを開くことができなくなった。
電池式は良くないと思ったのでその次のものは充電式を選んでみたが、大雨の日を境にして充電ができなくなって、しばらくして復活したものの、遂には復活することはなくなってしまった。
これらのことを忘れてしまっていたのだが、振り返るとここ数年で5つほどネット購入してすべてが使えなくなってきたことに気がついた。
ずいぶんグズグズしていたものだ、と自分を冷ややかに見ながら、空気入れついでに近所のロードバイク店に相談してみることにした。
もう10年以上愛用しているロードバイクはこの店で購入したもので、メンテナンスに時々訪れている。
思えば、なぜここまでライトについて相談しなかったんだろうか?
今回は、この数年の気持ち悪い状況が5年越しに解消して、そこで同時に思ったことの話になる。
商品説明で目から鱗
事情を話すと、店員さんは詳しい説明をし始めてくれた。
ちなみにこのお店の店員さんは、バリバリのロードバイカーでロードレースに参加するために日々鍛えているといった人たちばかりだ。
開口一番に言われたことは、ライトの価格としては、充電式で4,000円アッパー、電池式で2,500円アッパーでないと使えるライトとは認定していない、ということだった。
充電式の方が高額なのは、電池式よりも充電式の方が高い電圧をかける必要などもあって、構造が難しいかららしい。
ちなみに長時間の戦いを強いられるロードレースの選手は、安全確実を選択するから荷物になるが電池式を選択する人も多いそうだ。
そもそも自転車のライトは振動や雨風などの酷な環境にさらされるもので、その中で更に軽量化が求められているものである。
そんな商品の値段を安くするとなると、部品のどこかを抜いたりして簡略化するか、耐久性の弱い素材に変更するなどしかない。
だから安価なものな壊れやすくなる。
言われてみれば納得の話だが、1人ネットと向き合うだけではこのことはとても思い浮かばなかった。
その店にはキャットアイというメーカー1社の商品しか置いてない。
会話の中に当たり前に何度も「キャットアイ」という言葉が出てきて、無知な私は「それ何ですか?」と聞き返したのだが、こちらは東大阪の製品シェアが抜群に高い業界では知らない人はいないほどの有名メーカーだった。
部品なども含めてすべてが国内生産をしている数少ないメーカーなのだそうだ。
電池カバー部とライト部分が別々にすることで防水性が高く仕上がっているという最新の製品を見せてくれた。
こちらを結果的に購入することになった(最低ライン、2500円より下回る価格のものになった)のだが、、購入後にズボンのポケットに入れたまま洗濯をしてしまったが、その後も問題なく使えているところをみると防水性の高さは確かのようだ。
そして当然ながら素晴らしく広がって光って気持ちいい。
ちなみに、最近、このメーカーのサイトではネットで売る製品と対面で売る製品を分けているらしい。
ネットの廉価版との製品の区別をするためにそうしているのだという。
良さは人の説明でしか伝わらないということがわかっているからこその販売戦略なのだろう。
安物買いの銭失い
ライトに限らず、ネット通販は非常に便利だ。
ポチっとしてしまうと翌日に物が届く。
私は、ライトに関してもあまり深く考えもせずに、ポチ、ポチ、っと店員さんの基準の下の安価なものを選び続けたということになる。
お店に行かなかったのは手間暇がかかるから。
そして、店舗がないネット販売の方が構造的に価格を安くできるという知識をもったから。
さらに言えば、専門店にはアッパーグレードのものしか置いてないはずで、自分は本格的なロードバイカーではなくて街乗り中心だから本格的なものは要らないと考えたから。
あまり深く考えないし、できるだけ動かないで購入する。
ネットの評点にバラツキはあるが大体信じられるから、間違わないだろう、などと何ともお気楽。
万が一間違ったならば買い直せばいい。
ロードバイクの街乗りという自分自身の行動もどこか大切なものだと思っていない。
すべての行動が軽薄短小になっていた。
私は人生において常に合理的な選択をしていると思っていたのだが、その行く先が便利なネットでもってのこんな購買行動になっていたとは・・・。
自分にはケチな面があると思っていたが、ケチならばもっと慎重になるはずだ。
とにかくいいものが簡単に手に入るはずだと思っていて、それを一刻を惜しんで手に入れないと気が済まない感じがある。
このような性格が安物買いの銭失いに走らせている。
私の購買行動は、ライトまでを使い捨て傘のように消耗品扱いにしてしまい、それはGDPを上げることには貢献するのだろうが、ゴミを増やしてしまっている。
私のようにして購入する人がいることでその商品は長く販売されることになり、この先の困る人を間接的に増やしてしまっている。
これは自分のお金が減るといった自分の合理性の問題ではなくて、社会悪を増やしてしまうという問題と言えるのではないか、と今になってやっと反省するのだ。
ネットの落とし穴、競争社会の落とし穴
店員さんは、他にもいろいろな話をしてくれた。
店員さんはライトに限らず新製品を使ってみてユーザーとしての評価を日々しているらしい。
だから批判的にも見てよくわかっているのだ。
ちなみに、光に関する単位は、ルクス、ルーメン、カンデラなどいろいろな単位がある。
カンデラは光の広がりの単位で、見せてもらったバイク用のライトはカンデラが大きいから、コンビニ袋に入れて照らすと非常燈の代わりになるという。
その時ふと思ったのは、このような店員さんの話は、他の方法で知ることができるのだろうか?というもの。
専門誌では?ネットでは?テレビでは?・・・
ないとは言えないがなかなか難しいだろう。
例えば2,500円以下の商品を良くないと発言することは、それを提供する関係者を批判することになってしまう。
使い方にもよるから商品が必ず短期間で故障するとは言えないし、言ったら反論も出るだろう。
だから、このような情報は多くの目に触れる広告などにはリスクがあって出せないことになる。
結局、今回のライトに関する情報などは、自分当てに問い合わせてくれた顔の見えるお客さん、あるいは信頼できる人限定で伝えることにしかならない。
記録に残っては問題が出るので、話した途端に消えていく状況でないと出てこないだろう。
そんな風に思った。
これは商品に限らずあらゆることに当てはまるものだ。
ネットでは並べて価格やスペックが比較できて非常に便利でもあるが、落とし穴がある。
商品の悪いところの情報には、ネットやメディアでは大いに制限が入って載らない。
人に蓄積されているものなのだ。
そんなことを考えながら世の中をもう一回おさらいしてみる。
競争社会は生産性が高くなるし、いいものに淘汰されていくという良さがあるのは間違いないが、その反面、競争に勝つための過剰なコストカット(安かろう悪かろう)、人の無知を利用していいところだけを伝えて騙すという良くない面も同時に持ち合わせている。
競争社会ではコスパのいい簡易品が量産され、販売の回転数を上げ、使い捨て文化を醸成し、持続的社会を阻む方向に進んでいる面が否めない。
遅ればせながら本物につながって世の中に貢献する
自分は、昭和の後半を生きてきた人間だからなのか、この競争社会はドンドン新しいいいものが生み出されるという意識にどっぷり染まって、そこに便利なネットが現れて軽薄短小になったように思う。
自分はここで変わるべきことに気づいた。
本物を知る、本物につながる
ということだ。
そのために人にこそ真実があり、本物の情報は人がもっているから、人とつながる必要がある、という原点に戻るようなことを大切にしたい。
出てくる新製品が必ずしもいい物ばかりではないという前提の塗り替え、だから本物を知って値段が高くても本物を購入して長く使うということ。
それによって本物の使用感を享受しながら、買い替えも少なくする。
結果、ストレスを減らして、ゴミも減って、長い目でみたコスパが最高になる。
このように本物の選択をする人が増えると、例えば今回の私が壊したライトのように長持ちしない商品の淘汰は早まり、、社会は良い方向に変化していくだろう。
小さな動きだが、積み重ねが社会のストレスの減少に貢献して、持続的で住みやすい社会に向かうはずだ。
身勝手な合理性を振りかざしつつも、軽薄短小が染み付いた私は、やっと今頃になって改心してもっともらしいことを言い出してしまった。
どの口が言っているのか?と自分でも情けなく思うのだが、更に調子に乗ってライト以外で、「長く使える」という意味で本物と認識している愛用メーカーを3つほど上げてみる。
環境に配慮したつくり、耐久性が高く靴底をメンテナンスすると長く使える。
全工程に人の手が入って機械に頼らない切れのいい爪切りを製作している。
切れが悪くなったら郵送すると永久に刃を研いでもらえる。
バランスイージーの木製部分は10年間無料保証、自分で組立可。
部品全16種類の購入可能。
どれも多くの人に知って欲しい本物だ。
最後にもう一度ロードバイクの話に戻る。
以前もっと軽いロードバイクに買い替えようと相談したところ、この店の店員さんから意外な言葉が返ってきた。
「軽いから速く走れるわけではなくて、ある程度の重さは必要ですよ。
今の方が街乗りに適している面もあります。
2台持ちにする手もあるし、無理して買い替えなくてもいいのでは?」
確かに今のロードバイクはメンテナンスしてまだまだ十分使える。
買い替えを勧めてこないところがこのお店のすごいところだ。
競争社会に浸かった自分にとってその時は、新鮮で幸せに包まれた空間だった。
いわば相手の立場になるということの本物。
本物とここでつながった。
信頼できる人と出会い、本物の商品、本物の情報、本物の技術、本物の知恵に出会う。
本物らしく見えるものは実は本物ではなかったりもする。
本物は意外と埋もれているから、出会った時に「本物だ」と見極めるには学ばないとならないし、考えないとならない。
オーバーかもしれないが、人生は本物に出会うための旅なのかもしれない。
本物を求めて人とつながってほんの少しだけ世の中に貢献していこうとやっと思えるようになってきた。
Photo by Viktor Bystrov on Unsplash
【著者プロフィール】
RYO SASAKI
本物という言葉は曖昧ではありますが、私の思う本物ということでそのまま使い続けてしまいました。
遅ればせながら、私の思う本物をこれからも求めていきたいと思います。
工学部を卒業後、広告関連企業(2社)に29年在籍。 法人顧客を対象にした事業にて、新規事業の立ち上げから事業の撤退を多数経験する。
現在は自営業の他、NPO法人の運営サポートなどを行っている。
ブログ「日々是湧日」
会員登録していただいた方に、毎週金曜日にメールマガジン(無料)をお届けしております。
ちょっとした気づきや最近の出来事など、メールマガジン限定のコンテンツもありますのでぜひご登録ください。
登録はコチラから。
幅を愉しむwebメディア「RANGER」に対するご意見やご感想、お仕事のご相談など、お問い合わせからお気軽にご連絡ください。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
これからもRANGERをどうぞご贔屓に。