「働く上でのコツ」を掴んだのは実演販売のアルバイトだった、という話。
ひろゆき氏の「1%の努力」という本の中にこんな話が出てくる。
「仕事をゲーム感覚でやれ」というアドバイスは、他の人にもよく言っているし、多くの本にも書いてあるので強調しないが、僕もそれを地で行っていた。
だから、もう一つ「ピザ屋での配達」についても書いておこう。
ピザ屋の配達は、地元の赤羽でやっていたので、最短で届けることをゲーム感覚にしていた。普通だと1時間の平均で3軒回るところ、僕は平均6軒回ることができた。
信号を通らないルートや抜け道を知っていたのだ。とはいえ、人の2倍働いたからとって、給料が2倍になるわけではない。
だから、1時間のうち30分は友達の家に寄ってゲームをしてから戻るということをしていた。
最小の努力、最短で結果を出すことを、当時から徹底していた。
ピザ屋のバイトで面白かったのは、制服を着ていると、どこに入っても咎められないことだ。入国管理局にピザを配達したときは、届けた後、しばらく建物の中を探検していた。
制服を着ていればうろうろしていても、まわりから見ると、「あの人、迷っているんだな」くらいにしか思われない。
どこにでも入っていける「装備アイテム」を手に入れたような感覚だった。
オートロックのマンションに入り込んだり、ちっちゃめのマンションの一番上のオーナーが住んでいるところを見に行ったり、普通なら入れないところに入ることを楽しんでいた。
求められていることは最低限やりつつ、いかに自分の楽しめるポイントを見つけられるか。
これが働く上でのコツだった。
コンビニ、スーパーの総菜売り場、ラーメン屋の店員、裏ビデオのチラシのポスティング、携帯電話会社の電話応対、塾講師、ピザの宅配など、
学生時代にさまざまなアルバイトを経験してきたひろゆき氏は、
「求められていることは最低限やりつつ、いかに自分の楽しめるポイントを見つけられるか」を、働く上でのコツとして見出している。
ひろゆき氏がこれまでの人生で得てきた「最低限の努力で、効率よく結果を残し、楽しく生きるための知見」の一つだ。
これと同じレベルとは当然思わないが、実は私も学生時代のアルバイトを通じてひろゆき氏と同じようなことを掴んだと思っている。
働く上でのコツを掴んだのはコストコでのアルバイト
私は学生の頃、コンビニ、ポケットティッシュ配り、引越し、イベントスタッフ、パン工場のライン作業、塾講師、そして、試食販売など複数のアルバイトを経験した。
当時「お金」が欲しかったというのもあるが、世の中にはどんな仕事があるのか、自分がどんな仕事にやりがいを感じるのかを知りたかったというのが一番大きい。
アルバイトに対して「どれも仕事の一番面白くない部分を切り出して安く人にやらせている」という印象もゼロではなかったが、それ以上に、未知な部分を無くすことに喜びを感じる好奇心を満たしたかった。
だから、無秩序に流れてくるバターロールをひたすら袋詰めするような「パン工場のライン作業」もやってよかったと心から思える。実際には、朝寝坊で何度も遅刻して、連絡もせずに休んだりで幾度も怒られたりもしたのだが。
で、ひろゆき氏のいう
「求められていることは最低限やりつつ、いかに自分の楽しめるポイントを見つけられるか」という「働く上でのコツ」を、私が掴んだのは、大学2年の夏から卒業するまで続けた「コストコでの試食販売のアルバイト」だった。
*
コストコ倉庫店内には実演販売を行う「CDS(クラブ・デモンストレーション・サービシズ・インク)」という会社が入っている。
大学2年の夏、私は新聞の折込チラシでCDSのアルバイト求人を認知した。
他のアルバイトに比べても金目のいい仕事で自宅から近かったこともあり即面接に申し込んだ。
面接をしてくれたSV(スーパーバイザー)の人から、
「明日から来れる?」
と面接開始10分も経たずに言われ、特段断る材料もなく早速働くことが決まった。
コストコに行ったことがある人ならば、倉庫内でしたのような姿をしたおばさんやおじさんが試食販売をしているところを見たことがあるだろう。
まさにこの仕事を私はしていた。
ちなみに言うと働いていた当時は、リブランディングの前で「黒いキャップ」に「緑のエプロン」がCDSのトレードマークだった。
この仕事は、倉庫内に実演販売カートを出し、休憩の時以外は立ちっぱなしで、お客さんを呼び込み、試してもらい、買ってもらうことをひたすらと繰り返す。
例えば、ソーセージ
例えば、ワイン
例えば、お掃除ロボットのルンバ
例えば、ハンドソープ
例えば、チーズ
例えば、コーヒー
例えば、オレンジジュース
など、実演販売のバリエーションは多岐にわたり、その都度商品情報を正確にインプットし、トークに変換させるというスキルが求められた。
仕事は、立ちっぱなしで、喋りっぱなしの対人プレーで、めちゃくちゃに疲れる。だから、正直言うと最初は「しんどくなったら辞めればいいや」くらいの軽い気持ちで取り組んでいた。
ところが、
一生懸命に紹介して、試してもらえると意外に売れる。
これが私には楽しくて仕方なかった。
はじめて1ヶ月後には内容を体得しており、「より自分が楽しめて、より売れるようにするにはどうしたらいいか」を考えるように不思議と変化していた。
ブログ読者が倉庫に現れた、がしかし
そうして取り組みはじめたのが「Amebaブログ」である。
実演販売した内容や、通して気づいた点などを、アメブロで発信することで、倉庫内への集客、ひいてはCDS、コストコの売り上げに貢献できないかと考えたのだ。
現在の私の文体からは到底考えられない「絵文字を多用したいわゆる日記」だったのだが、記事を書けば「コメント」や「ペタ」をくれる「コストコ好きな読者」が結構ついた。
これには私もかなり驚いた。
そして遥かに驚いたのは、ブログ読者が「倉庫に現れた」ことだった。
ハンドルネームで書いていたたし、気付かれることはないだろうと思っていたが、その人は現れた。
しかも、一人ではなく、時間が経つに連れその数は増えていった。
読者「もしかして、○○さんですか?」
私「え、なんで分かったんですか?」
読者「若い男性で、コストコで試食販売してるひとは珍しくて、それでもしかしたらと思ったんです」
私「そうなんですか、ブログすごいですね・・・」
読者「いつも楽しみに見ているのでこれからも更新してくださいね」
私「ありがとうございます!」
という具合で、
結構疲れる仕事だったが、私にはこの仕事が面白くて仕方なかった。
他店のSVが視察に来た時に冗談だったとは思うが「ウチにこない?」と誘われたり、卒業後はCDSかコストコに入らないか?とSVから誘われたり、思うに、私は完全に波に乗っていた。
*
ところが、大学4年の半ばになって、突如ブログの更新をやめることになった。
今はもう時効だと思うので言うと、私は「ルール違反」をしてしまっていたのだ。
何かと言うと、倉庫店内やデモンストレーションの様子の「写真」を記事に乗せていたことがまずかった。
まさかここまで拡がるとは思っていなかったのだが、
私が書いているブログを他店のスタッフが読むようになり、それがSVにも伝わり、やがて、エリアマネージャーまで見るようになった。
エリアマネージャーは更新していた記事をすべて見たらしい。
ある日私は仕事を終えると個室に呼び出され、
SV「ブログを書くのはいいし、書いてくれるのはすごく嬉しいんだけど、働いているスタッフが写真あげるのは絶対ダメだよ」
私「すいません」
SV「もし続けるなら写真はナシでお願いします」
私「・・・」
結構悩んだ末、テキストや絵文字だけで実演販売の内容を伝える技量は無いと判断し、なくなく更新を止めた。
これがことの顛末である。
自分が楽しいと思えるポイントを見つけられるかどうか
結果、ブログは更新をやめる羽目になってしまったが、この時の経験は遥かに価値があったと個人的には思う。
なぜなら、ひろゆき氏のいうような「働く上でのコツ」を掴むことができたからだ。
求められていることやるのは当たり前。
その上で、自分が楽しいと思えるポイントを見つけられるかどうか。
あるいは無ければ、そのポイントを作ることができるかどうか。
これが「働く上でのコツ」だということを身をもって知った。
逆に言うと、そのポイントを見出すことができなければ、自分にとってそれは「クソ仕事」になってしまうのだろうと心得た。
これは自分にとって大切な教訓となり、今も変わらずもっている。
コミュニティデザイナーの山崎亮さんは、
「豊かさ」を「楽しさ自給率」だと定義している。
「楽しさ自給率の高い人」の例に、「棒切れが1本落ちていたら100通りの楽しみ方が作れる人」などを挙げているが言わんとしていることはストンと腹に落ちた。
逆に「楽しさ自給率が低い人」というのは、
「お金を払って誰かに楽しませてもらう」という「消費の構造」から、いつまで経っても抜け出すことはできないということでもある。
「楽しさを自給する力」というのは、ひろゆき氏が考える「働く上でのコツ」に非常に酷似しており、事にあたる上で大切なのはやはりこういうことなのだと感じる。
結局、「楽しさ」とは自分の外からやってくるものではなく、自分で見つけるものであり、つくるもの。
どんな仕事をしても、どんな地域に住んだとしても、「楽しさを自給する力」を持っているひとはすべからく、豊かになれるのだろう。
ちなみに、大好きな「こづかい万歳」という漫画の中には、「楽しさを自給する力」の高い人物が次々と登場してくる。
以下、衝撃の12話より部分的に引用させていただく。
私にとっては「働く上でのコツ」を再認識することができる「大切な経典」だ。
Photo by Lucas Santos on Unsplash
【著者プロフィール】
田中 新吾
こづかい万歳の谷さんの話は「そんな馬鹿な」「嘘だろ」と思うようなことかもしれないですが、つまりは「人間関係が充実していれさえすれば、お金など要らない」ということなのだと思います。
プロジェクトデザイナー/企業、自治体のプロジェクトサクセスを支援しています/ブログメディア(http://ranger.blog)の運営者/過去の知識、経験、価値観などが蓄積された考え方や、ある状況に対して考え方を使って辿りついた自分なりの答えを発信/個人のプロジェクトもNEWD(http://ranger.blog/newd/)で支援
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詳しいプロフィールはHTML名刺をご覧ください。
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