田中 新吾

「ワークライフインテグレーション」は脳からしても理にかなっている?

昨年中頃に知人のRさんからこんな質問を受けたことがあった。

Rさん「田中さんは仕事とプライベートをどのようなものとして考えていますか?

この質問をきっかけにRさんと下のようなやりとりをした。

私「仕事とプライベートをどのようなものとして考えているか・・・・ですか。現時点での考えになりますが大丈夫ですか?」

Rさん「もちろんです。」

私「そうですね・・・。先に結論から言うと、仕事はプライベートを愉しむためのもので、プライベートは仕事を愉しむもの、だと考えてます。」

Rさん「もう少し詳しく教えてもらえますか??」

私「はい。仕事とプライベートを分けて考える方もいると思うのですが、僕の場合は分けて考えるようなことはしてません。というか、なんかできないんです・・・」

私「例えば、仕事を通して学んだ努力の仕方はプライベートで何かをやる際にも使っているし、いい人間関係の築き方も多くを仕事の中から学び、それをプライベートにも活用しています。」

私「逆もあって、プライベートの時間帯でこれでもかと言わんばかりに自分の体をしっかり休めることで翌日の仕事が捗ったり、プライベートで体験したことがアイデアの源泉になっていい企画が生まれることも本当に多いです。」

私「だから、仕事はプライベートを愉しむためのもので、プライベートは仕事を愉しむためのものなんですよね。それで、両者の活動を通じて、向かう先は豊かな人生を送ることという感じです。ちょっと恥ずかしいんですが・・・・」

Rさん「いやいや、具体的なところまで教えてくださりとてもありがたいです。」

私「ワークライフバランスっていう言葉あるじゃないですか?」

Rさん「はい。」

私「あれが実はあんまりしっくりきてなくて今までも口にしたことってほとんどないんですよね。仕事とプライベートが繋がっていない感じがして、自分の考え方とはどうもズレるんですよね・・・」

Rさん「言われてみれば・・・」

私「仕事もプライベートも一緒くたにして考える方が個人的にはなんか自分を動かしやすいんです。今の所はなんですが・・・。少しお役にたてましたでしょうか?」

Rさん「とても参考になりました。ありがとうございます!」

当時のメモを見返すとこんな具合のやりとりをしていた。

この時応えた通り、私はどうも仕事とプライベートを別々にして考えることに違和感を覚えるようで、一緒くたにして考えた方が自分を動かしやすいと長らく考えてきた。

こう言うと「オン/オフがないってこと?」と思う人もいるかもしれないが、オン/オフがないわけではない。

私にとってのオン/オフは「起きている間はオン。寝ている間はオフ」であって、起きている間のオン/オフの切り替えの感覚はないといった感じだ。

世の中には起きている間に仕事とプライベートをしっかり切り替えることができる人や得意な人もいる。

しかし私に関しては決して得意だと思えず、上手く切り替えることができないのだ。

ワークライフインテグレーション

そんな私は今年の2月に「ワークライフインテグレーション」という言葉を知った。

この本を読むまで知りもしなかった概念なのだが、知ればそれは非常に納得のいくもので、私にとってはかなり大きな収穫となった。

というのも、仕事とプライベートを分けて考えることができない私の意を、まさに得る考え方だったからである。

調べてみると、この概念は今からだいぶ前の2008年に提唱されていたことが分かった。

21世紀の新しい働き方「ワーク&ライフ インテグレーション」を目指して

当時の経済同友会による提言書ではワークライフインテグレーションは以下のように定義されている。

「ワーク&ライフ インテグレーション」とは、会社における働き方と個人の生活を、柔軟に、かつ高い次元で統合し、相互を流動的に運営することによって相乗効果を発揮し、生産性や成長拡大を実現するとともに、生活の質を上げ、充実感と幸福感を得ることを目指すものである。

「ワークライフインテグレーション」にしても「ワークライフバランス」にしても、どちらも「仕事とプライベートの両立を目的とする考え方」という側面では同一と言えるのだろう。

しかし、その根底にある仕事とプライベートの捉え方は明確に異なる。

ワークライフインテグレーションは仕事とプライベートを統合して考えるのに対し、ワークライフバランスは仕事とプライベートを切り離して取り扱う。

「仕事に時間を費やしてプライベートの時間がない」「家庭の事情で仕事を辞めざるを得ない」など、どちらかを犠牲にすることがないようバランスをとるという考え方がワークライフバランスといった具合だろう。

これに対して、仕事とプライベートの間に壁を作らず、相乗効果で人生を充実させていくものがワークライフインテグレーション。

これはまさに私が意識してきた内容そのものだった。

最近Twitterにも投稿したもので、仕事で培ったプロジェクトデザインの考え方をプライベートの活動にも適応しているという話は、私がワークライフインテグレーション的に人生を捉えている例になる。

人間の脳は仕事とプライベートをはっきり分けて考えることができない

そして、どうやら「ワークライフインテグレーション」は脳からしても理にかなっているようなのだ。

世の中のありとあらゆる成功ルールを検証した本の著者として知られるエリック・バーカー氏は、人間は意識では仕事とプライベートをはっきり区別しているつもりだが、実は人間の脳はそうはなっていないと述べている。

理由としては、

人間はその歴史の大半を小さな生活集団で暮らしてきた。

そこでは誰もが顔見知りで、ともに働き、ほぼ全てのものが血縁によって結ばれていた。

ゆえに、私たちの脳にとっては、仕事とプライベートを区別することはまだ新しいことで、違和感があり、恣意的なものと言える。

といった具合だ。

だからこそ「ネットワーキング」という言葉はどこか軽軽しく響き、「家族」という言葉はどこか心地よく響く、という説明には直感的に納得がいった。

バーカー氏は、アイスランドは「世界の中でも幸福度が高い国の一つ」だという。

実際、2022年現在人口は約36万人の小国で、幸福度ランキングは4位だ。

参照:世界の幸福度ランキング

そして、その理由を突き詰めていくと「人同士が密接に繋がっているところ」にあることが分かったそうだ。

ここで驚くのは、アイスランドでは「どこに行っても友達に出くわす」といった話。

「本当かよ?」と思うのだが、アイスランドではあまりに日常的なことで「友達にばったり会ってしまって」という遅刻の理由がすんなり受け入れられるというのだから嘘ではなさそうだ。(実際は経験してみないと分からないことではある)

そして、このアイスランドの人間関係は、脳が仕事とプライベートをはっきり分けて考えることができないように、実生活でも仕事とプライベートをはっきり分けていないからではないか?ということだった。

<参考文献>

「仕事とプライベートをどう捉えるか?」は私たち人間にとっていつの時代も重要なテーマ

話は冒頭のRさんの件に戻る。

実は先日Rさんと連絡を取り合う機会があったことから当時の話を思い出すことになった。

これは別の話なので他の記事で書きたいのだが「記憶を詳細に思い出す」のは本当に気持ちがいいものだ。

「ワークライフインテグレーション」が、Rさんとのやりとり以降に知った概念であったため私はRさんにその情報をお伝えした。

すると、「以前の話とも繋がってとても納得できる考え方です」といった内容が返ってきた。

ワークライフバランスにワークライフインテグレーション、そして最近「ワークライフアラインメント」という言葉も見かけた。

アラインメントであるから「仕事とプライベートの調和を求める」という意味らしいが、個人的にはワークライフバランスとの違いがまだよく分からず、まだ腑には落ちていない。

25~45歳といえば、キャリアの成長が最も加速すると同時に、私生活の責任が急激に重くなり始める時期でもある。

結婚して子どもを育てたり、高齢の親の介護をしたりしながら、ネットワーキングのイベントや能力開発のカンファレンスに参加し、さらに地域コミュニティや非営利団体、子どもの学校の委員会まで参加する場合、ワークライフバランスを実現することは不可能に等しい。

この世代の労働者は、ワークライフバランスよりもワークライフアライメントすなわち、仕事と私生活の調和を求めている。

仕事に投じる時間だけを考えるのではなく、仕事を通じて仕事以外の人生に投じる時間がより充実したものになるのか、それとも仕事によって仕事以外の人生の足を引っ張られるのかに関心を払うのだ。

参照:仕事に不満を抱える従業員のエンゲージメントを高める方法

ワークライフアラインメントの考え方は引き続き情報を集めていきたい所存だ。

一つ言えるのは、こういう言葉が新たに生まれてくることを思うと「仕事とプライベートをどう捉えるか?」は私たち人間にとっていつの時代も重要なテーマである、ということではないだろうか。

繰り返すが、現時点の私にフィットするのは仕事とプライベートを分けない「ワークライフインテグレーション」だ。

そして、それが脳にとっても理にかなっているのであれば当面の間はこれでいいんじゃないかと思っている。

Photo by Csaba Balazs on Unsplash

【著者プロフィール】

田中 新吾

仕事もプライベートも向かう先は同じ「私の幸せな人生」なのだと思います。

中小企業、中小自治体、個人のプロジェクトサクセスを支援しています。人生のミッションは「プロジェクトという挑戦」を応援すること。座右の銘はLife is Projects。自称ネーミングマニア。

詳しいプロフィールはHTML名刺をご覧ください。

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