田中 新吾

整理をすると『ここにアプローチすれば困り事や課題が解決できると分かっている状態』が作れるので、心に余裕ができるという話。

整理をすることが自分にもたらしてくれる良いこと(=ベネフィット的なもの)ってなんだ??

この回答と言っていいと思うものがここにきて自分の中でムクムクと作られてきたので、記録のため書いておきたい。

卑近な話だが、私にはつい最近まで妻によく注意されることがあった。

何かというと「爪切りの置き方」についてだ。

私はドラマやDisney+を横目で観ながら爪を切るという習慣があったため、TVモニターの側にある妻の生活道具入れやその付近によく置いていた。

「あなたの爪を切った爪切りを私のところに置かないで!」

こういう注意を想像した人もいるかもしれないがこれとは異なる。

問題は「爪切りをアバウトに置く」ことが常習化していたところだった。

私には爪を切った後、妻の生活道具入れのあたりにポイっとおく癖があった。

するとどうなるか?

ご想像の通り、次に切りたいと思った時にすぐ見つける事ができず、その度に時間をかけて探さなければいけなくなる。

つい最近もあった。

「爪切りどこいった?」

「また探してるの?自分でその辺に置いていたじゃない」

「確かに置いたような気がするんだけど、、見つからないんだよ」

「もーいつもなんなのよ、私は知らないんだから」

「・・・・」

こんなやりとりを度々繰り返してきたのだ。

そして、A型に似つかわしくないズボラなところがある私は、この問題を解決しようとせず長らく放置してきた。

ところが。

先日のやりとりの最後に妻からもらった指摘が転換点となったのだ。

それは随分前からこんまりさんを支持している妻らしい発言だった。

いい加減さ、ちゃんと置く場所・戻す場所をはっきり決めたら!?

こう言われた私は、自分でも不思議に思うほどスムーズにその指摘を受け入れた。

おそらく「爪切りを探す時間がいつも無駄だなあ」と、さすがに課題を感じていたからだろう。

というわけで、即、爪切りの置く場所・戻す場所を決めた。

するとどうなったか?

・爪切りが見つからなくてイライラすることがなくなったので精神エネルギーを無駄遣いしなくて済むようになった

・爪切りを探していた時間を別のことに充てられる時間ができた

・妻との人間関係で無駄な摩擦が起きないのでお互いの精神エネルギーを無駄遣いしなくて済むようになった

という具合に、爪切りがすぐに見つからないことで発生していた無駄なコストがなくなり、大袈裟に聞こえるかもしれないが生活の快適さがアップしたのだ。

たかが爪切りされど爪切りである。

なぜもっと早くに着手しなかったのだろうか?と自分を省みるばかりだ。

そして、私が認識した中で最も大きく価値を感じていることが、

『ここにアプローチすれば困り事や課題が解決できると分かっている状態』が作れると心に余裕ができる、というものである。

片付けが好きな方や得意な方からすれば、こういう経験はもうとっくに自明のことかもしれない。

だが私にとってこの気づきは大きなインパクトがあった。

協力者を社内にも社外にもとにかく増やした

話は少し変わるが、爪切りの件から思い出したことがある。

私が前職に勤めていた時のことだ。

企業のマーケティング活動を支援する会社にいた私は、商品開発、値決め、パッケージング、PR、ブランド、販促、セールス、アフターサービスといったあらゆる活動の実行や改善を仕事としていた。

マーケティング課題は当然お客様毎に違った。

今思えば、異なる課題に対して一人で解決にあたろうなんぞ土台無理な話で「協力者を得る」というムーブがなければ私は早々と絶命していたことだろう。

「協力者を得る」ことを私にとって重要な活動として埋め込んでくれたのは、お世話になった上司のGさんだった。

Gさんは新入社員の私にこう言った。

「協力者を社内にも社外にもとにかく増やしておくといいよ」

直感的にその重要さを感じた私は、Gさんに言われるがまま「協力者を得る」ために動いた。

社内にいる自分よりも経験値のある人を巻き込むにはどうしたらいいか?

社外にいるが特別なスキルで協力をしてくれる人を作るにはどうしたらいいか?

こういう問いから思考を行い、成果を出しながら協力者を増やしていくことができたのは間違いなくGさんの伴走があったからだ。

思うに、仕事をしていても私が極度に不安になるようなことがなかったのは、協力者が増えていったことで「ここにアプローチすれば困り事や課題が解決できると分かっている状態」を作ることができていたからだろう。

私がしたこの経験は、東京大学先端科学技術研究センター准教授の熊谷晋一郎先生の「自立の考え方」とも通ずるところがある。

「自立」とは、依存しなくなることだと思われがちですが、そうではありません。「依存先を増やしていくこと」こそが、自立なのです。

これは障害の有無にかかわらず、すべての人に通じる普遍的なことだと思います。

参照:自立とは「依存先を増やすこと」

熊谷先生は、依存先が多様に確保されているとき人はさも「何にも依存していない」かのように感じられると述べている。

そして、この状態こそが「自立」なのでありそれは決して何にも依存していないことではないという話だ。

この自立の考え方は、一般のイメージとは真逆で、「しっかりしている人よりも甘えられる人の方が自立する」ということになる。

しかし、私に関しては経験則からこの考え方には納得がいった。

依存できる先を増やし、でもそれぞれの依存度は大きくはしない。

これが自立している状態、というのが今の私の解釈だ。

整理は忙しさから開放してくれる

爪切りの件は先日読んだ一冊の本ともリンクした。

1963年と今から半世紀以上も前に出版された「整理学 忙しさからの開放 」という本だ。

爪切りの一件から「整理」という行為について考えを深めたいと思うようになり、色々な文献をあたっていたところ手にとった中の一つである。

著書は社会学者の加藤秀俊氏(1930年生まれ)。

この本は「探し物の苦労をどうやって回避するか」を主題としたもので、読んでみて今の私にこれほど相応しいものはなかった。

加藤氏によれば、整理とは散らばっているものを目障りにならないように綺麗に片付けることではない。

これはむしろ「整頓」だという。

そして、物事がよく整理されているというのは、見た目はともかくとして、必要なものが必要なときに取り出せるようになっている状態ということだった。

整頓は整理ではない。

逆にいえば、見た目には乱雑な整理もありうるということである。

見た目には散らかっているようでも、右手のほうにはやりかけの仕事Aに関する書類、まん中のはBに関する資料、左手のはC関係の報告書・・・、

といったふうな分類がおこなわれているのが整理ということである。

ちらかっているか、サッパリと整頓がおこなわれているかというのは、おおむね見た目の問題であって、整理の本質とはなんの関係もない。

くりかえしていうが、ちらかった整理もあるし、整頓されていて全然整理されていないものだってあるのである。

私はこの箇所を見つけた時、ハッとした。

今まで会ってきた人の中に、一見乱雑にみえるが必要なものを必要なときに取り出すことができる「整理のよい人」がいたことを思い出したからである。

例えば、学生のときに働いていた塾の塾長なんかはまさにこのタイプだった。

逆に、本や書類を整然と並べているのに必要なときに何も出てこないという人もいた。

これは昔ファミリーマートでアルバイトをしていた時のHさんを思い出す。

つまり、この世の中には、整理がよくて整頓の悪いひと、整頓がよくて整理が悪いひと、整頓がよくて整理もよいひとが存在する、ということである。

整理も整頓もその違いや意味を詳細にとらえていなかった私にとってはこれは遥かに大きな発見だった。

そして、前述の爪切りの置く場所・戻す場所を決めたことはまさに「整理」をしたと言っていいだろう。

話は冒頭の整理をすることが自分にもたらしてくれる良いことってなんだ??についてだ。

思うに、整理をすることが自分にもたらしてくれる良いことというのは、爪切りの一件や前職で協力者をがんばって増やした経験で得たものと同じく、

「ここにアプローチすれば困り事や課題が解決できると分かっている状態」が作れるので、心に余裕ができる。

というものだ。

人は心に余裕がない場合に「忙しさ」と感じてしまうもの。

逆に言えば、心に余裕がある場合は「忙しさ」を感じることはない。

加藤氏は「整理は忙しさから開放してくれる」と述べている。

「整理をする=心に余裕が生まれる」と捉えるようになった今、このロジックには大いに納得がいく。

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【著者プロフィール】

田中 新吾

整理と整頓の違いが明確になった今、人生ではじめて片付けをするのが面白くなってきています。

幅を愉しむWebメディアRANGER(http://ranger.blog)の管理人・ブロガー・複業実践者。長年のマーケティングの経験があり、商品やサービスとお客さんの出会いを演出するのが得意です。

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