アウトプットネタは、脳内でもう十分すぎるぐらい「放牧」されている。
少し前にこんな投稿をXにした。
この投稿をする少し前まで複数の方々と交流する時間があり、その交流の中からアウトプットしたいネタがフツフツと湧いてきたことを受けてのものだ。
これまで私は、人と交流をすると「相手の考えに触発されて、スノードームがシェイクされた時のように、沈殿していたものが浮いてかき混ざり、新しいアイデアや気づきが生まれる」という考えを時折表明してきた。
これが自分にとっては大変しっくりきているからである。
梅棹先生の以下の発言にも通づるところがあるのでは?と勝手に思ってきた。
相手に触発されて、おもいもかけないことをしゃべってしまう
その新鮮な感動が、対談や座談会に出席することの魅力なのである
しかしこのたび、冒頭のような投稿をしたことで、自分が考えていたことに、思わぬ形で新たな視点が唐突に加わった。
そして、この加わった新たな視点が非常に面白く、自分にとって有益だった。
というわけで、今回はこの件について少しだけ触れていきたい。
*
新たな視点を加えてくださったのはしごたのの大橋悦夫さんである。
タスクシュート(タスクと時間を同時に管理するメソッド)の考案者で、昨年私がタスクシュート認定トレーナーになって以降、絡みが増えた。
そんな大橋さんが私の投稿に添えてくれたコメントこそが、今回加わった新たな視点の正体である。
アウトプットネタは脳内でもう十分すぎるぐらい放牧されている。
人と話すことによって放牧されているネタが誘い出されてくる感じ。
このコメントに私は強く膝を打った。
大橋さんが下さったコメントは、自分が意識していなかった側面を浮き彫りにしたのだ。
それは、アイデアやインスピレーションは十分すぎるくらい私たちの中に存在し、外部との交流によってそれが引き出されるという事実である。
つまり、人との交流はアイデアを生み出すトリガーとして機能するが、元々は私たち自身の内部にその種が十分にあるということ。
「放牧」というメタファーは博報堂ケトルの嶋さんの本からのアナロジーだと大橋さんは教えてくれたが、「放牧」という言葉も私の腹にストンと落ちた。
したがって、
「書くことがない」
「アウトプットすることがない」
このような悩みを聞くことが時々あるが、ないわけがない、のだ。
ネタはもう脳内に十分にある。
その人にとって本当にないのはアウトプットネタではなく、自分の中からネタを引き出すために人と交流をしたり、引き出したネタを形にするために手を動かす時間を確保することのように思う。
*
ちなみに、いただいたコメントは、創造性に対する私の見方も変えた。
以前は、新しいアイデアを探求することは外部からの刺激に依存していると考えがちだった。
しかし、今は「内部の豊かな資源(放牧されているネタ)」を認識し、それを引き出す方法を見つけることの方に重点を置くようになったのである。
つまり、創造的なインプットとアウトプットの間には、私たち自身の内部プロセスが重要な役割を果たしているというわけだ。
私はタスクシュートの実践を通して「時間がない」という信念から「時間はある」という信念に段々とシフトしていった。
アウトプットネタは自分の中に既に十分にある、豊かである、と考えることはこれにも非常に類似しているとも思った。
今回の大橋さんのコメントを端にしたこの一連の経験は、私にとって大変深い学びとなっている。
人との交流がもたらす刺激は、自分自身の内部に眠っているアイデアや感情を呼び覚ます。
しかし、そのプロセスの中心には、常に自分自身がいる。
これからも、内部と外部の世界とのバランスを取りながら、新しいアイデアやインスピレーションを探求し続けていきたい。
大橋悦夫さんのコメントは、自分が見過ごしていた視点を提供してくれただけでなく、自己認識の新たな道を開いてくれた。
このような交流を通じて得られる気づきは、個人の成長において計り知れない価値がある。
UnsplashのBen Collinsが撮影した写真
【著者プロフィールと一言】
著者:田中 新吾
プロジェクトデザイナー|プロジェクト推進支援のハグルマニ代表(https://hagurumani.jp)|タスクシュート(タスクと時間を同時に管理するメソッド)の認定トレーナー|WebメディアRANGERの管理人(https://ranger.blog)|「お客様のプロジェクトを推進する歯車になる。」が人生のミッション|座右の銘は積極的歯車。
しかし「放牧」ってめちゃくちゃいい表現ですよね。
●X(旧Twitter)田中新吾
●note 田中新吾
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