田中 新吾

「脳は疲れない」という知見を知って、「時間の使い方」を見直した。

今年に入ってから手にとった本は私に大きな衝撃を与えるものがなぜか連続している。

先月読んだ脳研究の第一人者池谷祐二氏とコピーライターの糸井重里氏の対談本「海馬 ー脳は疲れないー 」もその一つだ。

これは2005年に出版されベストセラーになった本である。

「脳は奇妙なクセを持つ」で池谷氏のことを私は知っていたが、本書を手にとったのは今年に入ってからだった。

「ずいぶん前に書かれた本だけどどうなんだろう?」

そう思いながらも読んでみると、疫病の影響で働き方が変わり、それと同時に生活様式についても再考する機会がふえた今だからこそ読む価値が大きいのでは、と感じた。

そして、本書の中で語られている知見の中でもっともインパクトがあったものが、サブタイトルにもなっている「脳は疲れない」である。

本書を読むまで私は「脳は疲れる」とすっかり思い込んでいたということもあり、これほど衝撃的なものはなかった。

思い込みが壊れる瞬間というのはやはり何にも変え難い快楽だ。(*1)

脳研究の第一人者が語る「脳は疲れない」とはどういうことなのか?

また「脳は疲れない」という知見を知って、私の「時間の使い方」はどのように変わったのか?

このあたりについて書いていきたいと思う。

脳を動かせ、脳は疲れない

まず、私の思い込みを壊すにいたった箇所を引用でご紹介したい。

糸井 考えが煮詰まった時に、人は「脳が疲れる」とかよくいうけど、あれを池谷さんはどう思いますか。

池谷 脳はいつでも元気いっぱいなんです。ぜんぜん疲れないんです。

糸井 おおおおおぉっっっっっっ!

池谷 脳がとまってしまったら、体肢(たいし)も五臓六腑もぜんぶ動きがストップします。寝ているあいだも脳は動き続けて、夢をつくったり体温を調節したりしています。一生使い続けても、疲れないですね。疲れるとしたら目なんですよ。

糸井 なるほど。考えごとをして疲れを感じた時は、あれば脳が疲れているわけではない。だとしたら、「三十分休憩して疲れを取って」という考え方をしないほうがいいですね。

目の疲れだとか、おなじ姿勢を取った疲れを補うことのほうが、実践的なわけだ。

池谷 はい。

ベストセラー本であるから、この箇所を読んで私と同じように衝撃を受けた人もきっと多いはずだ。

糸井氏も驚いている通りとにかくこの「脳は疲れない」という知見はすごい。

これを得た状態で20代を過ごしていたらどうなっていたことか?なんてことを思ってしまった。

とにかく、この知見を持っているか否かでものの解釈は大きく変わる。

例えば「集中」に対して。

私は今まで集中時間を続けると脳は疲れるものだと思い込んでいた。

が、「脳は疲れない」によれば、脳はいくら集中時間を続けても疲れない。

むしろ脳はやりはじめるとやる気がでるため、その状態になった脳はいくらでもやれてしまい、やめ時が分からなくなってしまう。

前述の対談にある通り、集中時間を続けることによって疲れるのは「目」や「体」の方。

目や首やお尻に疲れが溜まり、その疲れを脳が感知して「疲れた」と思い込んでいるだけ。

私はこのように解釈するようになった。

それからストレスと脳についても解釈が変わった。

近年の研究で、ストレスを感じると脳の感情を抑制する「大脳皮質前頭前野」という部分の力が弱まるということは知っていた。(*2)

弱まると今まで抑制してきてた感情や不安がコントロール出来なくなるという話だ。

その結果、ネガティブ感情が生まれ、それによって「脳が疲れる」ものだと思っていた。

しかし「脳は疲れない」を知った私の解釈はこうなった。

ストレスによって一時的に大脳皮質前頭前野の機能が弱まり、ネガティブな感情が生まれたり不安になったりすることで「脳が疲れを感じる」ことはよくあること。

でも、感じるだけであって実際に脳が疲れることはない。

ストレスを感じようが感じまいが、脳はとにかく疲れることなく動き続ける。

こんな具合だ。

「脳は疲れない」という知見を知った時、私の頭に一つのある名言が浮かんだ。

ボールを動かせ、ボールは疲れない」というものだ。

サッカーファンであれば多くの方がご存知だろう。

サッカー界のレジェンド、ヨハン・クライフ氏が発した言葉である。

サッカーというゲームの本質を捉えており、これに異論のある人は恐らくいないはず。

この名言を私が思い出したのは「脳は疲れない」との間に一種のアナロジーを感じたためである。

つまり「脳はつかれない」のであれば「脳を動かせ、脳は疲れない」というスローガンを掲げていいのでは、と思ったのだ。

疲れない脳に「疲れた」とできるかぎり感じさせないような「時間の使い方」

しかし肝心なことは、脳は疲れなくても「体の方は疲れる」ということである。

体が疲れれば、それを感じて脳は「疲れた」と思い込む。

そして「脳が疲れた」と感じれば、私たちのパフォーマンスが下がるのはほとんど自動だ。

したがって、パフォーマンスをできるだけ下げずに多くのことを実行していくためには「脳は疲れない」でも目や体の疲れによって「疲れた」と感じることはある、ということを前提とした「時間の使い方」を考えることが重要、というところに私は至った。

脳は疲れないと知るだけで、違う休息の方法が思い浮かぶ」と糸井氏は本書の中で述べているが、これに私なりの解釈をプラスしたような形といえるかもしれない。

そして最近この考え方をベースに、疲れない脳に「疲れた」とできるかぎり感じさせないように「時間の使い方」の見直した。

(注)現在は在宅仕事の占める時間が多いためその仕様になっています。

1.起きているあいだ、同じ姿勢を40分以上取らない

これは以前からも行っていたことだが本書を読んでその有効性をあらためて感じている。

40分としているのは、やる気になるまでのインターバルが私の場合5分くらいは必要であること、時間はまとめなければ成果は出ない、というところから。

経験則だが、これ以上の時間、同じ姿勢を取ると目や首はまだ大丈夫にしても、お尻の方に疲れが溜まりはじめ脳が疲れを感じてしまう。

時間管理はおなじみ、タスク管理ツールのタスクシュートクラウドを用いている。(*3)

オンラインのmtgが長引く場合は、途中からスタンディングに切り替える、座り方を変えるなどで対応。

とにかく40分以上同じ姿勢をとらないように心掛けている。

2.次の行動は前の行動で酷使した部位をできるだけ使わないことをする

例えば、40分ワークチェアに座り続けたのだとすれば、次の行動は歩きながら行う、横になりながら行う、リラックスできる椅子に座りながら行う、などである。

そしてこの際、脳を休めようとはする必要は一切ない。

最近になってからだが、デスクの背面にスタンディングしてPCを置くとちょうどいい高さのデスクになる棚を設けた。

これを設けたことで、座り仕事をした後に立ち仕事に切り替えることができるようになった。

体の疲れていない部位を使いながらも、脳は引き続きどんどん動かす。

最近は「部屋の中を歩きながら本を読む」ことにもハマっている。

目線が下がるのだが、部屋の中なら事故する心配もない。

この他に、オーディオブックやポッドキャストを聴きながら、外を歩く、ストレッチポールに乗る、家事をする、洗車をする、といったアクションも選択肢にある。

いずれにしても前の作業で使った部位を使わないことをするのが目的だ。

PCで目を酷使した後にもスマホをずっと眺めてしまっては目を引き続き酷使することになってしまう。

したがって、スマホを観る時間もタスクにして別の部屋に置くというのがデフォルトになっている。

3.仮眠をとる

昼食後、20分〜30分でいいから仮眠を取る。

これも今まで行っていたものだが大きな効果があることを実感している。

寝るなら机でなくベッド、ソファ、あるいはキャンプで使うようなコットが望ましい。

机で寝て、寝ているあいだにお尻を疲労させてはあまり意味がない。

前職で昼食後によく寝ていた先輩がいて、それをみた私は「仕事サボってるなあ」と陰で思っていた。

が、今となれば仮眠をとることも大事な仕事だと思うように変わった。

仮眠を取ると目や体の疲れが一気に吹っ飛ぶ。

さらに、アイマスクを付けて仮眠をとると目が温まって、より疲れが取れることも分かってきたところだ。

以上が「脳は疲れない」という知見から見直した私の「時間の使い方」である。

池谷氏曰く、脳は一生使い続けても疲れることはない。

であるならば、脳の特性を理解した上で、存分に動いてもらえるようにすればいい。

まとめると、

脳を動かせ。脳は疲れない

でも脳が「疲れた」と感じることはある。

だからこそなるべく「疲れた」と感じさせない「時間の使い方」を心がけること

今回書きたかったことはこんなところだ。

*1:自分の「思い込み」が壊されたときに、「気持ちがいい」と感じる理由について。

*2:ストレスが脳の萎縮や損傷を招く?

*3:「全部タスク」にしたら、今までとはまるで違う人生が訪れた、という話。

Photo by Milad Fakurian on Unsplash

【著者プロフィール】

田中 新吾

座り仕事を40分くらいしたら、歩きながら本を読み、その後は立ち仕事を40分するといった感じで、部屋の中を動きながら過ごすようになりました。

幅を愉しむWebメディアRANGER(http://ranger.blog)の管理人・ブロガー・複業実践者。長年のマーケティングの経験があり、商品やサービスとお客さんの出会いを演出するのが得意です。

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