「相手を変えてしまう自分をもう少し控える、特に悪い方向に相手を変えてしまうことを控える」とたいていの関係は良好になる、という話。
少し前に「Todoリストは捨てていい」という本の中から「相手の「ニード」を「ニーズ」に変える」という考え方について、思うところを書きました。
相手の「ニード」を「ニーズ」に変える、という考え方に鮮烈な印象を覚えた話。
今回もそんな本書の中から一つ、個人的に強く印象に残った部分を一つご紹介してみたいと思います。
早速、該当の箇所を引用します。
「相手を変えようとしない」というよりも「相手を変えてしまう自分をもう少し控える」のが消耗しない人間関係のコツです。
とくに「悪い方向に相手を変えてしまう」のをやめるだけで、たいていの関係は良好になります。
さて、いかがでしょうか?
この箇所を読んだ時、自分自身のこれまでの経験とリンクして私は大きく膝を打ってしまったのです。
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まず、この主張について好感をもつことができたのは「私たちはそもそも相手を変えてしまう」という前提に立っていたからだと思います。
筆者である佐々木さんは以下のように述べていました。
「人を変えようとせずに、自分が変わることを考えましょう」というふうによく言われますが、そう言っている人たちだって、そのように告げることで私を変えようとしているようにも聞こえなくありません。
「人を変えようとせずに、というのはまずもって無理なことだよな」と長らく考えてきたこともあり、この箇所に触れた時は思わず心の中で「まったくその通りだと思います!」とつい言ってしまったほどに共感を覚えました。
私たちは他者と交わろうとする時、なるべく相手には好意を持って欲しがりますし、なるべく相手から悪意を持たれないように工夫をすると思います。
でも実は、このような努力をするまでもなく、私たちは人と話すだけで相手に影響を与えないではいられません。
この「私たちはそもそも相手を変えてしまう」という現実をふまえた上で、「相手を変えてしまう自分をもう少し控える」ことが本書では推奨されています。
特に、悪い方向に相手を変えてしまうことを控えるだけで、たいていの人間関係は良好になり、消耗しなくなるというのです。
悪い方向に変えてしまうことを控えるとは一体どういうことなのか?
具体例として、仕事において「予防線を貼らない」というものが挙げられていました。
「予防線を貼る」とは以下のようなものです。
「あなたはこのような予算でやれと言うので、やってみるけど、それでいい仕事はできないかもしれませんよ」
これは悪いことが起きた場合を想定して、クライアントに対してあらかじめ(メールあるいは口頭で)伝えることで「予防」をしているわけですね。
皆さんも一度や二度の身に覚えはあるのではないでしょうか?
かくいう私にはあります。
そして、筆者の佐々木さんは、このような「予防線を貼る」系の言動はどんなに伝え方を工夫しても、そこに内包される相手への不信の念や相手が感じる不快感を拭い去ることはできず、必ず相手を「そのようにしていく」と言います。
要するに、相手に対して信用のならない人だと伝えれば、相手は必ずこちらの信頼を裏切る振る舞いをするということです。
そして、このような人間関係になってしまえば、後はやり取りが発生する度に、その都度消耗していく羽目になると。
先ほど私には「予防線を貼る」ことについて身に覚えがあると言いましたが、そこから生まれる人間関係の消耗についても思い当たる経験がしっかりとあります。
具体的な社名までは出せませんが、昔マーケティング会社に勤めていた頃のクライアントだったN社というかなり大きな会社の担当者とのやり取りです。
私にとっては大変苦い思い出なのですが、あのプロジェクトは無茶苦茶に消耗しました。
このきっかけは間違いなく「お互いに予防線を貼った」ことだったと思います。
このような経験があったからこそ、相手を悪い方向に変えてしまうことを控えるだけで、人間関係において消耗しなくて済むという主張に、大きな納得感を覚えたのでしょう。
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また、「相手を変えてしまう自分をもう少し控える、特に悪い方向に相手を変えてしまうことを控える」に対して、大きな納得感を覚えたのは「これもそうかも?」という具合に、他にも思い当たる経験があったことも影響していそうです。
例えば、昔に人から、相手に感謝を伝えたい時は「すみません」ではなく「ありがとう」と言うこと、と教わったことがありました。
以下は、以前書いた記事からの引用です。
私:「悪くもないことに対して「すみません」て言われるとどうも違和感を感じるというか、いい気分ではないんですよね。」
T先輩:「そうだなー。いい気分にはならないよな。」
私:「はい。」
T先輩:「俺個人のことを言えば、そう思うので、相手に感謝を伝えたい時は「すみません」ではなく「ありがとう」か「ありがとうございます」をできるだけ使うようにしているかな。」
私:「なるほど・・・。」
T先輩:「だからお前もそう思うなら、感謝を伝える時は「すみません」ではなく、「ありがとう」や「ありがとうございます」と言うように意識していったら?」
私:「はい、そうしていきたいと思います!」
T先輩:「なるべくなら、悪くもないのに「すみません」は言わない方がいい、ってことだな。」
私:「了解です。ありがとうございます。」
参照:社会人になったばかりの頃、悪くもないのに「すみません」と言わないこと、と教わった。
これも「相手を悪い方向に変えてしまう自分を控える」に該当するのではないかと思います。
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それから、「それは間違っている」と思った時に、ストレートに言わない方がいい、という考え方を私は持っているのですが、これも「相手を悪い方向に変えてしまう自分を控える」と言っていいのではないかと。
以下も、以前書いた記事からの引用です。
ただでさえ違うタイプには拒否反応を示すようにできているところに「それは間違っている」という具合に、相手の拒否反応メーターの針を思いっきり振り切るようなことを加えたとすれば、相手からは嫌われてしまったり、離れられてしまうのは必然なのではないだろうか。
私に関しては少なくともそう思っている。
参照:「それは間違っている」と思った時、ストレートに言わない方がいい理由とその時の対処法について。
ここまでの話をまとめていくと、仕事において「面倒くさいなあと思う人」がいた場合に、自分の言動がそうさせている可能性が大いにあるということなのだと思います。
以上、私の経験的にも、
相手を変えてしまう自分をもう少し控える、特に悪い方向に変えてしまうことを控える。
は間違いなく人間関係における消耗を除いてくれると思います。
人間関係で消耗して悩んでいる方は、一度是非自分のこれまでの言動を考えてみていただけると良いのかもしれません。
気になった方は「Todoリストは捨てていい」も是非手にとってみてください。
今回書いておきたかったことは以上です。
UnsplashのVitaly Garievが撮影した写真
【著者プロフィール】
著者:田中 新吾
「Todoリストは捨てていい」という本が私にとりわけ刺さっているのは「人間関係」について書かれた部分が多くあるからだと思ってます。人間関係での消耗がなくなれば、どんな仕事はかなり捗ると思っている派です。
お客様(企業や自治体やNPO)が求めるプロジェクトの歯車になるのが仕事。プロジェクト推進支援専門のハグルマニ(https://hagurumani.jp)代表。PJメンバー共通の景色となるネーミングやコンセプトの構築もします。タスクシュート認定トレーナーとして自分らしい時間的豊かさを追求する方々の支援にも注力中。
●X(旧Twitter)田中新吾
●note 田中新吾
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