田中 新吾

「自己紹介は常にアップデートされていくもの」という話。

タナカ シンゴ

数ヶ月前から自分のことを「プロジェクトデザイナー」と称するようになった。

端的に言うと「プロジェクト(やる前から何をしたらどんな結果が得られるかわからない挑戦的な活動のこと)を設計してゴールまで導く人」ということである。

グラフィックデザイナーの対象はグラフィック。

webデザイナーの対象はweb。

プロダクトデザイナーの対象はプロダクト。

であるように、プロジェクトデザイナーの対象は「プロジェクト」となる。

「デザイン」という言葉を聞くと、作り手によって細部まで完璧にコントロールすることと思う人もいるかもしれない。

これもデザインと言って間違いないと思う。

しかし「他者の意志」や「偶然」を取り込む類のデザインというのもあって、この場合は厳格さや緻密さより「柔軟性」や「自由度」の方が重要になる場合が多い。

これを判断していくのもまたデザインであるわけで、プロジェクトあるいは組織のデザインはこちらの要素の比重が大きいという認識でいる。

私は以前から自分のスキルや専門性をどこで活かすか?という視点で世の中を見てきた。

例えば、会計士の資格がある人は、会計事務所に所属する、自分で開業する、どこかの会社の経理の仕事をするという選択肢が生まれる。

日本においては3つ目の選択肢を「会社員=サラリーマンになる」というが、この常識は海外ではほとんどないらしい。

3つの働き方については、自分の専門性をどのようにマネタイズするかの違いがあるだけでどれも等価だ。

したがって、今の私は「プロジェクトデザイナー」という専門性をどこで活かすか?という視点で世の中を見ている。

現時点の自分を俯瞰して突き詰めてみると、ライフにしてもワークにしてもプロジェクトのデザインを行っていて、プロジェクトデザインが人生の重心になっている。

振り返れば、お客さんが喜んでくれるのもプロジェクトデザイナーの私だった。

これらをふまえて「プロジェクトデザイナー」と称することは「働き方」むしろ「生き方」にフィットしており、今の私を適切に表現できていると考えるに至った。

今日の自分は昨日の自分と違う

話は少し変わって「今日の自分と昨日の自分は違う」という話だ。

細胞レベルでは健康でいるかぎり体は毎日見えないところで変化し続けていると言われており、昨日までは備わっていなかった知識や経験が今日の自分にはあるということもよくある。

見た目にしたって髭が生えたり、髪が伸びたり、毎日少しづつ変化していて、間違いなく昨日の自分と今日の自分は違う。

信念や価値観にだって昨日から今日の間に多かれ少なかれの変化がある。

ところが「今日の自分と昨日の自分は違う」という事実については、時間が何となく捻出出来るものではないのと同じように何となく認識できるようにはなっていない。

これだけの人がいればもしかすると何となく認識できる人もいるのだろう。

しかし、少なくとも私に関してはそうはなっていない。

「今日の自分と昨日の自分が違う」ことは意識をしていかなければ、私は自覚することができないのだ。

実は最近になってようやくこの自覚が強くなってきたところがある。

これは恐らく「毎日日記を書く」ようになったことが大きい。

参照:30代半ばになって偶然、自分にあった「日記の書き方」を見つけた、という話。

書くことは原則としてその日に行ったこと(ワークとライフごちゃまぜ)で、スプレッドシートのフォーマットに淡々と書いていっている。

そして、習慣的に日記を書くようになった結果「今日の自分は昨日の自分と違う」ということを強く自覚できるようになった。

言語化された過去の自分は今現在の自分に様々なことを教えてくれる。

だが、そんな過去の自分は今はもう存在はしていない。

今日の自分と昨日の自分が違うことを強く自覚できるようになった結果「自己紹介の内容も日々アップデートされて当然だ」と考えるようにもなった。

例えば「SNSのプロフィール」がよく変わる人を見た場合「一貫性がない」と思う人もいるかもしれない。

でも、実際には「今日の自分と昨日の自分が違う」のだからプロフィールは毎日変わっていいのだ。

むしろ「変わっていかない方が変」と今の私は思う。

「人生一生自己紹介」という座右の銘

人生一生自己紹介」は私が昔お世話になった経営者の方の座右の銘である。

その方から、この言葉を教えていただいたのは今から10年以上も前の話だ。

若干うろ覚えなのだが、確かこんな具合の説明を受けた。

「今日きちんと自分を紹介できて、明日、今日よりもうまく自己紹介ができるようになる事が大切」

「自己紹介なんて面接の時くらいしかないと思うかもしれないが、仕事では毎日だ」

「社長なんて一日中自己紹介している。ある時は自分を、ある時は会社を、ある時は商品を売っていかなきゃいけないから」

実は、この説明を受けた当時の私は社会人経験が浅かったことあり、なんとなーく分かる程度でその説明を聞いてもいまいちピンと来ていなかった。

ところが「今日の自分と昨日の自分は違う」ことを強く自覚するようになった今、人生一生自己紹介という考え方の輪郭がかなりハッキリしてきたのだ。

劇的な変化ではないが自分という存在は毎日変わっている。

昨日の自分と今日の自分が同じなんてことはない。

だからこそ、その日の自分を出来るだけ知ろうとして、どういう自分として相対する人に伝えるのがいいかを吟味することはとても大切なことなのだ。

自己紹介は常にアップデートされていくもの

このように捉えた方が本質的なのだと今の私は思う。

「人生一生自己紹介」とは、人間の日々の微細な変化を捉え、この社会をより良く生きる上できわめて大切な考え方だったのだ。

ネーミングの力も使いながら、プロジェクトをゴールまで導くのが得意

話は冒頭の「プロジェクトデザイナー」の件に戻る。

恐らく、私の他にもプロジェクトデザイナーとして自己紹介している人はいるきっといるだろう。

ではその様な方々と自分を差別化するとすれば何が挙げられるだろうか?

いくつか思い浮かぶが、ひとつは「ネーミング」だと思っている。

プロジェクトをゴールまで導くのに私はネーミングの力をよく使うからである。

プロジェクトが「船」なのだとすると、ネーミングというのはプロジェクトに関わる人たちがそのプロジェクトに主体的に参加したくなるような「船名」となるだろう。

「創立50周年プロジェクト」

「新商品開発プロジェクト」

「中途採用プロジェクト」

「グループ会社設立プロジェクト」

「ホームページリニュアルプロジェクト」

私の経験則になるが通常、プロジェクトのネーミングというのは「やること+プロジェクト」でなんとなく作られるものが多い。

これでもプロジェクトは進み、全体として形を成す(デザインされる)ことはもちろんある。

ただ私は、関わる人たちがより主体的になれるプロジェクトのネーミングを生み出すことはあらゆるプロジェクトに可能だと思っており、そうしたネーミングをすることでプロジェクトをより良い形でゴールまで導くことに日常的に取り組んでいる、といった具合だ。

人は名前のないものについて深く考えることはできない。

しかし逆に、名前を生み出すことで新しい概念についても深く考察することができるようになる。

ネーミングによって生まれるこのような力をプロジェクトデザインに使っているのだ。

以上のようなアップデートした自己紹介を先日デザイナーである知人に話す機会があった。

すると「プロジェクトを上手く進められずに困っている人は多いし、ネーミングがその駆動力になるの分かります」というようなことを言ってもらった。

ここまで新しい自己紹介について書いてきたわけだが「今日の自分と昨日の自分は違う」という前提をもっている以上、今回アップデートされた自己紹介も変わっていくことは当然あり得る。

もしかすると半年後には今のものから大きく変わっている可能性だってあるだろう。

しかし、それでもいいと私は思う。

最も重要なことは日々変わっていく自分に向き合いながら自分のことを吟味して、その時の自分を最もいい形で表そうとすることの方なのだから。

Photo by Andreas Forsberg on Unsplash

【著者プロフィールと一言】

著者:田中 新吾

プロジェクトデザイナー|プロジェクト推進支援のハグルマニ代表(https://hagurumani.jp)|タスクシュート(タスク管理術)の認定トレーナー|WebメディアRANGERの管理人(https://ranger.blog)|「お客様のプロジェクトを推進する歯車になる。」が人生のミッション|座右の銘は積極的歯車

「工場建設プロジェクト」で建設された工場を「運営する」のはプロジェクトではないという認識でいます。なぜなら運営には「期限」がないから。何かを生み出すようなプロジェクトだった場合、生み出された事物を運営するのもやりがいがあって好きです。

●X(旧Twitter)田中新吾

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