田中 新吾

「豊かさの本性は時間の密度にあり、意識の使い方が時間の密度を高める」という言及に触れて考えたこと。

タナカ シンゴ

最近、私は「豊かさの本性は時間の密度にあり、意識の使い方が時間の密度を高める」という大変興味深い言及に触れた。

どこで触れたのかと言うと『なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?』で知られる山口揚平さんの新著「3つの世界 キャピタリズム、ヴァーチャリズム、シェアリズムで賢く生き抜くための生存戦略」という本の中だ。

以下で該当箇所を少しだけ引用してみたい。

想像してみてほしい。

10歳の頃の記憶はそのすべての日々が瑞々しく鮮やかに思い浮かぶが、40歳の頃の記憶など、3つも思いつけばいいほうだ。

海馬に蓄えられている記憶の量からしてその程度のものなのだ。

要するに、人生は年齢ではなく、その密度の積分である。

坂本龍馬や三島由紀夫が崇拝されるのも、短く太い人生を生きたからだ。

フランスの哲学者ポール・ジャネは、「生涯のある時期における時間の心理的長さは年齢に反比例する」と言った。

人生とは時間の長さだけでなく、その密度が大事であり、それこそが豊かさの本性であると彼は喝破したのである。

さて、いかがだろうか?

人生とは時間の長さだけでなくその密度が大事。

そしてそれこそが豊かさの本性。

この箇所は私にとって本当に強く印象に残った。

そして「ではどのようにすれば時間の密度を高めることができるのか?」といった読者の問いに答えるように、山口さんは以下のように続けている。

意識の焦点を他人に当てて相手の心を敏感に感じ取ること、意識をはるか上空に揚げて世界を俯瞰し、概念やイメージとして捉える思考力、意識を環境に向けて風や波や自然の営みを感じ取ること、その微細で大胆な意識の使い方が時間の密度を高めることにつながる。

ここも引き続きしっかり急所に入った。

ちなみに、この本には、社会が急速に、かつ複雑に分化している現象を「三つの世界(資本主義社会-キャピタリズム、仮想現実社会-ヴァーチャリズム、共和主義社会-シェアリズム)」として捉え、それぞれの世界がどのように構築され、どのように機能しているか。

そして、三つの世界が現代社会においてどのように交わり、私たちの生活や価値観に影響を与えているか、みたいなことが書かれていた。

こうした全体感の中に出てくる「時間の密度」の話はさることながら、全体を通してめちゃくちゃ面白かったため、個人的には今年中にもう1回は読もうと決めている。

もしも興味が沸きましたら是非手に取ってみていただきたい。

で、この「豊かさの本性は時間の密度にあり、意識の使い方が時間の密度を高める」という考え方を知った時に、ふと思い出されたのが「物理的には同じ時間でも、私たちの心的な時間は、認識される出来事が多いと長くなり、少ないと短くなる」といった話だ。

人間は認識できる出来事の数が多いと時間を長く感じる

「物理的には同じ時間でも、私たちの心的な時間は、認識される出来事が多いと長くなり、少ないと短くなる」については、2024年3月3日に渋谷で行われた「タスクシュート交流会」のLT(ライトニングトーク)で私がお話しさせていただいた件でもある。

最初にこちらの動画を見てみてもらいたい。

二つの映像があったと思うがどちらの映像の方を「長く感じた」だろうか?

おそらく、長く感じたのは二番目の「ドリブルを沢山している方」ではなかっただろうか?

でも実はこれどちらも映像の時間は同じく4秒間。

なのに何故か二番目の方が長く感じるという不思議な現象に包まれるののだ。

このような現象について「時間学」の研究者である一川誠(いちかわまこと)先生は以下のように述べている。

人間の心的時間は「出来事の数」によって変わる。

一体どういうことか?

例えば、先ほどの映像でいけば、

一つ目の映像はドリブルが1回だから「出来事」は1回。

二つ目の映像はドリブルが何回もあるから「出来事」は複数回。

そして、知覚できる出来事が多いから二つ目の映像の方を長く感じるということ。

私がこの知見を知ったのは2018年に遡るが当時の感覚は今でもよく覚えている。

それまでの人生でなんとなく疑問に思っていたことが見事に氷解した瞬間だった。

2022年に盛り上がったサッカーカタールW杯において、日本代表戦の数分のアディッショナルタイムが長く感じたのもその短い時間に様々な出来事が起こり、それを認識することができていたから。

2024年3月2日にはjMatsuzakiさんと佐々木正悟さんの共著「先送0」の出版記念パーティーが渋谷で開催され、私はこのパーティーに参加したのだが、この日がとっても長く感じたのは1日のうちに色々な出来事がありそのどれもを私が認識していたから。

きっと皆さんにおかれましても思い当たることが一つや二つはあるはずだ。

参照:土日の体感時間を“1週間”に延ばせる!? 目からウロコの「時間の長さコントロール法」

「タスクシュートは時間的豊かさを誰でも等しく得ることができる大変優れたメソッド・ツールである」という私の確信がより一層強まった

ここまでご紹介してきた二つの話について、今現時点で私が思っていることは「どちらも同じことを言っている」ということである。

それぞれに用いられている表現や考え方を重ねていくとより理解が進むような気がしている。

・物理的には同じ時間でも、私たちの心的な時間は、認識される出来事が多いと長くなり、少ないと短くなる

・意識を使うことで出来事は私たちに認識され、認識される出来事が多くなればなるほど時間の密度は高くなり、その結果として豊かさを感じることができる

ここでいう「豊かさ」とは言うまでもなく「時間的豊かさ」のことだ。

そして、今回ご紹介した山口揚平さんの本を読んだことで、元々持っていた「物理的には同じ時間でも、私たちの心的な時間は、認識される出来事が多いと長くなり、少ないと短くなる」などに支えられた「タスクシュートは時間的豊かさを誰でも等しく得ることができる大変優れたメソッド・ツールである」という私の確信はより一層強まった。

タスクシュートを使うことで誰でも間違いなく「時間は豊かだ」「時間はある」という感覚を得ることができると。

以上を踏まえた現時点の理解を最後に箇条書きメモでまとめておこうと思う。

・タスクシュートにおける「ログ」は私が「認識することができる出来事(現実)」

・「認識することができる出来事(ログ)」が1日のうちに積み重なっていけばいくほど、1日の内の時間の密度は高まり、その結果として「1日は長い」「時間は十分にある」「時間は豊かだ」というような感覚を得ることができる

・「時間は十分にある」「時間は豊かだ」という感覚は「タスク単位」でも得ることができる

・ 前述したサッカーのアディッショナルタイムのようにタスク内に認識できる出来事を増やせばいい。認識できる出来事を増やすためのポイントは意識を目の前のタスクに集中させること。そうするとタスク密度が高まる

・(具体例)私の最新版の「モーニングルーティン」という名のタスクの中には、体温を測る→体重を測る→白湯を沸かす→土器を水につける→歯磨きをする→タングスクレーパーで舌苔を取る→温タオルを作る→温タオルを目に当てる→白湯を飲む→ウォーキングをする、といった複数のタスクが連なっており(レシピ)、朝起きてからすぐに時間的豊かさを感じることができるタスクとなっている

今回書いておきたかったことは以上である。

何かの参考になれば嬉しい。

UnsplashDonald Wuが撮影した写真

【著者プロフィールと一言】

著者:田中 新吾

プロジェクト推進支援のハグルマニ代表(https://hagurumani.jp)|プロジェクトデザイナー|タスクシュート認定トレーナー|WebメディアRANGER(https://ranger.blog)管理人|ネーミングの仕事も大好物|白湯の魅力や面白さをお伝えする活動もしています(@projectsau

●X(旧Twitter)田中新吾

●note 田中新吾

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