田中 新吾

習慣的に「オンラインゲーム」をやるようになったら、「何かに没頭しやすくなる条件」が分かってきた話。

タナカ シンゴ

遅ればせながらだが「フォートナイト」というオンラインゲームを習慣的にやるようになった。

最初の頃はビギナーズラック的に「ビクトリーロイヤル(=バトルロイヤルで1位になること。以下、ビクロイと呼ぶ)」を取ることもできたのだが、シーズンが変わってからは遠のいてる。

私の技術がなかなか上がっていかない中、周りの進歩を著しく思う。

最近、友人に誘われて友人の子供とチームを組んで戦地に出ることがあった。

チーム戦はソロ戦とは違いエキサイティングみが何倍にも増す。

戦いでは、私よりも友人の子供の方が圧倒的に技術が高く、教えてもらうことばかりだった。

この世界では大人も子供も地位や肩書きや性別もまったく関係ない。

そんな風にしてメタバース活用の最先端に今触れている。

正直な話、はじめた当初は「試しにやってみるか〜」という程度でここまで自分が面白いと感じるとは思ってもいなかった。

そして、1ヶ月程やってみて良かったと思うことが私の中に幾つか浮上してきている。

中でも「何かに没頭すること」についてあらためて考えるようになり、何かに没頭しやすくなる条件が分かってきたことは、今の私にとって遥かに大きな価値があった。

既プレイヤーの方には言うまでもないと思うが、フォートナイトはとにかく「没頭」できる。

「集中しよう」なんて思うこともなく、やりはじめたらいつの間にか没頭しているのだ。

そして、その瞬間は、時間も、嫌なことも、すっかりと忘れてしまう。

中学生の頃の私は、学校で嫌なことがあっても、スマブラをやれば癒されると思っていた。

大学生の頃の私は、イライラすることがあっても、鉄拳をやれば癒されると思っていた。

そんな昔のことを30代半ばになった今、再び思い返している。

しかし一体なぜ、フォートナイトをやるとこんなにも没頭できるのだろうか?

ふとこんな疑問が湧いてきたところ、最近手に取った一冊の本が、この疑問に対して納得のいく答えを私に提示してくれた。

何かに没頭しやすくなる条件とは?

それが「なぜ、この人と話をすると楽になるのか(通称:なぜ楽)」の著者であり、ニッポン放送の人気アナウンサー・吉田尚記氏が書いた「没頭力「なんかつまらない」を解決する技術」という本である。

私は以前「なぜ楽」で吉田氏のことを知ったのだが「没頭」についての著書があるとは今まで知ることがなかった。

参照:仕事の飲み会における「くだらない会話」にも大きな価値があることが、ようやく分かった。

本の中には、人生のラスボス的な「なんかつまらない」や「うっすらとした不安」に対抗するために「没頭力」を手に入れよう、といった提案が示されていた。

「没頭」と聞くと「フロー体験」のことを思い浮かべる人は多いかもしれない。

フロー体験とは「ミハイ・チクセントミハイ」という人が提唱したもので「心的エネルギーが100%取り組んでいる活動に注がれ、よどみなく流れる水の中にいるような精神状態」のことと言われている。

この状態にある時、人は行動をコントロールできている感覚を得ることができ、世界に全面的に一体化していると感じ、幸福でいられる、というものだ。

かくいう私も読み進めながら「没頭ってフロー体験のことでは?」という疑問を持った。

ただ、途中「没頭」は完全に「フロー体験」のことで、フロー体験よりも日常的に使う言葉で分かりやすいから使っている、という吉田氏の説明があり納得できた。

そして、私にとっての大きな発見は「没頭するために重要な3要素」という箇所だった。

ミハイ・チクセントミハイがフロー体験(=没頭)をするためには「8つの要素」が重要だと述べているのは、ご存知の方も多いだろう。

①ゴールとルールがはっきりしていてフィードバックが早いこと

②目の前のことに100%集中していること

③無意識に体を動かしていること

④自分というものをなくしていること

⑤時間の感覚がなくなっていること

⑥その場の状況を自分でコントロールできていること

⑦その行動自体が目的になっていること

⑧自分の持っているスキルと行為のバランスが取れていること

これに対して、吉田氏は「少しづつフェーズがずれている」と指摘しているのだ。

いったいどういうことか?

曰く、①と⑥と⑧は「没頭するための外的要因」であることに対して、それ以外の条件は「没頭している時の状態や結果」のこと。

つまり「没頭する仕組み」について考えるときに重要なのは①と⑥と⑧になる、というのだ。

私は「言われてみれば確かに」と思った。

そして吉田氏は、①と⑥と⑧の条件を、ご自身の経験からよりフィットする形で「没頭しやすくなる条件」として言葉にしている。

それが、

「自分なりのルールを決める」

「結果が得られるまでのスパンを短くする」

「自分のスキルよりも4%難しいことに挑戦する」

というものである。

私はこの箇所を発見した時、なぜこれほど自分がフォートナイトに没頭するのかについて深く納得がいった。

ということで、一つずつ補足説明をしていきたい。

まず「自分なりのルールを決める」についてから。

自分なりのルールというのは、

「テキストを何ページ終わらせる」

「こういう絵を描く」

「この時間内にこの作業を終わらせる」

といったものが挙げられる。

「そんなこと?」と思う人もいるかもしれないが、「没頭するためには、自分なりのルールを決める」ことは物凄く大切なテクニックだと吉田氏はいう。

例えば、サッカーは自分たちが決めたゴールという枠の中にボールをいれるゲームだ。

この枠のたった10センチ外にボールが飛んだだけで観客は悲しみ、10センチ内側に入った瞬間に皆で大喜びをする。

結局のところ、選手にしても観客にしても自分たちが「ゴールやルールである」と決めたことに対して泣いたり笑ったりしている。

これは言い換えれば、私たちはゴールやルールがなければ楽しめない。

だからこそ、自分なりのルールを決めるのが大事ということである。

当初から、私のフォ活(フォートナイト活動の略)も、大したものではないが自分なりのルールを設けていたためにこれには納得がいった。

<自分なりのルール>

・ソロ戦は1日2戦まで、その中でビクロイを狙う

・友達からチーム戦に誘われた場合も3戦〜5戦まで、その中でビクロイを狙う

次に「結果が得られるまでのスパンを短くする」についてだ。

これは言い方を換えると「自分のやったことに対する結論が成功か失敗かすぐに分かること」も、没頭するための重要な条件ということである。

例えば、ロッククライミング。

手を伸ばした瞬間にそれが成功か失敗かが分かり、一つ岩が掴めたらOK、また次が掴めたらOKというようにフィードバックがすぐに返ってくる。

そして、一挙手一投足が生命の危機に直結しているため深く没頭することができる。

例えば、勉強。

100問解いてから答え合わせをするよりも、1問づつ答え合わせをした方が没頭にとってはよく、クイズと試験の差もここにある。

答えた瞬間に正解か不正解かが分かるクイズというのは極めて没頭しやすい。

このように結果が得られるまでのスパンを短くすることも没頭するためのコツだと吉田氏は述べている。

これも思えば、フォートナイトには其処此処に仕込まれている。

※以下のコマンドはニンテンドーswitchの場合

左スティック・・・移動

左スティック押し込み・・・ダッシュ

右スティック・・・視点移動

右スティック押し込み・・・しゃがむ

B・・・ジャンプ、船から降りてスカイダイブする

Y・・・武器のリロード、アイテムを拾う、宝箱などを開ける(長押し)

X・・・ツルハシに切り替え、ツルハシ状態で押すと持ってた武器への切り替え

L1・・・アイテム切り替え(前の武器へ)

R1・・・アイテム切り替え(次の武器へ)

ZL・・・照準モードで狙いを定める

ZR・・・攻撃/決定

ご覧の通り「結果が得られるまでのスパンを短くする」のオンパレードである。

吉田氏に言わせてみれば「没頭しない方がおかしい」ということなのだろう。

そしてこれは、⑥のもう一つの没頭の要素「その場の状況をコントロールできていること」にもつながる。

フォートナイトに限らず言えることだが、ゲームというのは操作した瞬間に成功か失敗かの結論が出るので、自分がコントロールしている感覚を強く得られて、没頭することができる事物の代表例だと本書の中で紹介もあった。

そして、最後に「自分のスキルよりも4%難しいことに挑戦する」について。

エクストリームスポーツの世界では「自分のスキルよりも4%難しいことに挑戦する」ときが一番フローに入りやすく、その状態のことをフローチャンネルと呼ぶのだそう。

吉田氏はこの「4%」について「これならできそう、できるはず」というように、ちょっと自分のスキルを過信して臨めるようなレベルのものだと言語化している。

「これならできそう、できるはず」そう思ってやる。そうすると没頭できる。

最初から「スキル」を追い求めるとすぐにキツくなるが、没頭を追い求めて行く分には没頭自体が気持ちがいいことなのでキツイと感じにくい。

そうやって少しづつ4%難しいことをやっていった結果、人はいつの間にか80mの滝をカヤック一つで下ることができるようになったり、何10mというクレバスをスノーボードで飛び越えたりすることができるようになっていくのだという。

これもまさにフォートナイトで実感していることだった。

技術と経験が不足している私にとっては毎回が簡単な試合ではない。

それでも、武器や障害物をうまく使ったり、ポジショニングを工夫したりしながら敵を倒し、そして運も味方につけ、生き残ることが時々できたりする。

フォートナイトはさらに、自分のレベルに応じて100人のプレイヤーが自動でマッチングされる仕組みになっているため、自分のレベルが上がったとしても、自分のレベルに胡坐をかくことなく、いい勝負ができるようなゲームデザインとなっている。

したがって、どんなにやっても「これならできそう、できるはず」の状態を常に維持できるのだ。

「何かに没頭しやすくなる条件」は、ゲーム以外のことに当てはめてさらに納得がいった。

例えば、私は「執筆している時」というのは深く没頭できる。

これを先ほどの条件に当てはめてみる。

自分なりのルールを決める

→ 決められた時間の中でしか執筆しないという自分なりのルール決めており、こういう記事が書きたい、というようなゴールもちゃんと最初に描いている。

「結果が得られるまでのスパンを短くする」

頭の中にあることをタイピングしていき、目の前でそれが即座に形になっていく。

自分のスキルよりも4%難しいことに挑戦する」 

→ それなりの期間、書くことをしてきてはいるが、今でも決して書くことは楽な作業ではなく「これならできそう、できるはず」と思って、常に挑戦しているような状況。

といった感じになり、まさに「何かに没頭しやすくなる条件」を満たしていたのだ。

他にも「仕事」「ランニング」「料理」など、今までに没頭してこれたものを振り返ると、ほとんど吉田氏が示す条件で説明がついたため、個人的にこれほど納得のいく条件はなかった。

「没頭」は、幸せを構成する一つの重要な要素

本書を通して私は初めて知ったのだが、ポジティブ心理学の権威「マーティン・セリグマン」によれば、幸せというのは「快楽」「意味」「没頭」の3つから得ることができるものだという。

幸せの要素としての「快楽」は分かりやすい。

ご馳走を食べるとか、遊んでいて楽しいとか「自分が心地よい」と感じることである。

「意味」というのは、誰かの役に立っている、社会の役に立っているとか、注目を集めているとかして、自分の人生に意味を感じる時に幸せを感じる、というもの。

そして「没頭」は、何かに夢中になって、時間も嫌なことも忘れてしまうような状態で、その瞬間は楽しいとか幸せとか何も考えてもいないのに、それも幸せを構成する一つの要素というのだ。

この話は以前私が書いた「「面倒くさい」を乗り越えるために、本当に重要なことは「幸せでいる」ことだった。」に繋がるところも多い。

そんなセリグマンが提唱する幸せの構成要素を知ってから吉田氏は、今の自分が毎日楽しいと思えるのは「何かに没頭する時間が多いからだ」という確信に至ったと述べている。

だからこそ「なんかつまらない」や「うっすらとした不安」に対抗するために「何かに没頭できる力」を身に付けよう、というのが吉田氏の主張なのだ。

別のところでも「本の内容について没頭することでストレスが68%も解消される」というイギリスの大学の研究報告を発見した。(*1)

オードリーの若林さんは著書の中で「ネガティブを潰すのはポジティブじゃない。没頭だ」と主張する。

ぼくは、最近没頭ノートを使いこなし悩みの深みにハマらなくなった。

毎日のように聴いていたカート・コバーンの歌声が響かないことが嬉しくもあり。

寂しくもある。

さよならネガティブモンスター。お前とは遊び過ぎた。飽きた。

でも、たまには遊んでやるよ。すぐ帰るけどな。

ネガティブを潰すのはポジティブではない。没頭だ。

ゲームへの没頭によるストレスの軽減効果は科学的にも証明されており(*2)、あの「ダルビッシュ氏」でさえ、心身の不調を「フォートナイト」に救われたと言っている。(*3)

何かに没頭すること」は、私が今まで思っていた以上に遥かに大きな価値のあるものだったのだ。

セリグマンの定義によれば、「快楽」「意味」「没頭」を実感していない時間は、幸せを感じていない時間ということになる。

そのような時間というのは、吉田氏の言う通り「なんかつまらない」や「うっすらとした不安」に駆られるように人間はできているのだろう。

思うにセリグマン のいう幸せの構成要素の中の「意味」というのは、自分の行動の結果得られる可能性があるものだ。

これに対して「快楽」と「没頭」に関しては、行動そのものから得られるものである。

であるならば、

自分が心地いいと思う「快楽」の開発と、自分が「没頭」することのできる事物の開発に力を注ぎ、行動をとること自体が幸せやご機嫌に繋がるように時間を使えるようにすることは、人生全体の幸せやご機嫌に対しての投資対効果が高い、と言えるのではないだろうか。

私は少なくとも今そう思うのだ。

そして、自分が没頭することのできる事物を開発したいと思う時、前述の「没頭しやすくなる条件」はガイドとして役に立つ。

ということで、「何かに没頭しやすくなる条件」をより知るための研究サンプルとして、ゲーム依存症にならない程度に引き続きフォートナイトに取り組み、やるからにはしっかりビクロイを狙っていきたい。

今回書きたいことはこのくらいだ。

*1 本の内容について没頭することでストレスが68%も解消される

*2 科学が証明する「ゲームのストレス軽減効果」

*3 ダルビッシュが語る、心身の不調を『フォートナイト』に救われた話

Photo by Erik Mclean on Unsplash

【著者プロフィール】

田中 新吾

現在のスキンはスパイダーマンの宿敵「グリーンゴブリン」です。戦場でお見かけしたらその時はよろしくお願いします。

プロジェクトデザイナー/企業、自治体のプロジェクトサクセスを支援しています/ブログメディア(http://ranger.blog)の運営者/過去の知識、経験、価値観などが蓄積された考え方や、ある状況に対して考え方を使って辿りついた自分なりの答えを発信/個人のプロジェクトもNEWD(http://ranger.blog/newd/)で支援

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